令和7年度新たに経済学部長に就任した根岸毅宏教授。令和2年度の経済学部改組に副学部長として携わり、現在の経済学科5コース・経営学科3コースの再編に取り組んだ。5年が経過した現在、新カリキュラムが「いい方向に定着してきた」と評価しながらも、経済学部に2学科があることを利点として捉え、「さらに本学部の特徴をどう生かしていくか考えていきたい」と語る。多様な社会課題に対応できる実践的で創造的な対応力を身につけた人材の輩出を目指したいと意気込みを述べた。
経済学と経営学の基礎と専門を学ぶことができる強み
経済学部は、令和2(2020)年度にそれまでの3学科から現在の経済学科と経営学科の2学科に改組され、カリキュラムも変更した。経済学科は5コース、経営学科に3コースを設けた。他大学では、経済学部と経営学部が独立している場合が多いが、本学部の大きな特徴は学部内にこの2学科があることだ。共通科目などに加えて、両学科の基礎や専門の一部を相乗りすることで、どちらの内容も学ぶことができる。
新カリキュラムでは、ゼミに所属している学生は卒業論文、ゼミに所属していない学生は卒業リポートの提出を必修化した。それ以前は、ゼミに所属している学生は約6割であったが、現在は8割まで上昇している。改組後2学年(令和5、6年度)の卒業生を送り出しているが、令和5年度のアンケートによると学生生活満足度は、ゼミに入り卒業論文を書いた学生で約75%、ゼミに入らず卒業リポートを書いた学生で55%を超えた。新カリキュラムではゼミに入り卒業論文を書くことを、学生自身が評価している。これは、就職面でも良い結果をもたらし、本学が学生に勧める、チャレンジ推奨企業への就職率が令和5年度にゼミ加入者で16.1%と近年で最も高くなっている。
学部改組とカリキュラム変更は、いい方向に向かっているので、さらに本学部の特徴をどう活かしていくか考えていきたい。まずは、再編から5年が経過したので、今年度は両学科のコースやカリキュラム全体の再点検を行いたい。その中で、経済学部の強みを改めて確認したい。特に、学部内に経済と経営の両学科がある利点の活かし方を考えたい。
社会で活躍できる対応力を修得
本学部は、「経済学の基礎力と日本経済に関する知見を兼ね備え、実践的で創造的な対応力を身につけた社会に貢献する専門的教養人」の育成を目指している。具体的には、基礎学力と専門知識を社会の中で活用できる人材を輩出することである。これには、物事を自分ごととして捉え、前向きにかつポジティブに活動するリーダーシップとチームワークが求められる。
そのための取り組みの一環として、1年生全員が履修するグループワーク形式のアクティブラーニング型授業「基礎演習A」(前期)、「基礎演習B」(後期)がある。ひとクラス24人程度で、約22クラスがつくられる。1チーム4人を基本に、毎回の授業でグループワークが行われる。グループワークでは受動的ではなく、前向きにかつポジティブな姿勢で課題やプロジェクトに取り組む。前期は、ノートの取り方、専門書の読み方、レジュメやリポートの作成の仕方、プレゼンテーションの仕方といった大学での学びに必須の「基礎的学修スキル」を修得する。後期は、企業や行政、NPOなど外部の組織から与えられた課題に対して、その解決策をチームで導き出す課題解決型学習を行い、各クラスのプレゼンを突破したクラス代表チームが学年の1位を決める決勝大会に進む。プレゼンのために、授業時間外でもグループでのディスカッションを推奨することで、学びを「前向きに、ポジティブに捉える」学生を育てていきたい。
この授業では、1年次にプレゼン大会を経験した2年生のファシリテーター&アドバイザー(FA)が各クラスに一人ついて、グループをサポートする。FAになった学生に聞くと、ゼミでもアルバイト先でも、スムーズにグループや組織を運営するにはどうしたらいいかを常に考えようになったという。FAになった2年生もファシリテーターとしての力がついていることを実感している。また、経済学部には「政策デザイン」、「ビジネスデザイン」などのアクティブラーニング型授業があり、外部の企業や行政機関などからの課題に受講生がグループで解決策を考え、プレゼンテーションし、フィードバックをもらうことができる。
こうした基礎演習での学びを第一歩として、経済学部では4年間の学びの中で、「前向きに、ポジティブに捉える」姿勢を身につけることで、社会人になっても、自分に身近なこと、地域のこと、自分が所属している組織のこと、そして社会全体について、自分ごととして捉え、組織の中で活躍できるリーダーシップとチームワークを身につけた学生を涵養できると期待している。
私自身令和6年度まで2年間、学生部長の職に就いたことで、大学全体を俯瞰的に考えることが身についた。「國學院大學の中の経済学部」の位置付けを意識し、本学部での学びが学生一人一人にとって納得いく進路に進められるよう、キャリアサポート課をはじめ関係部署と連携しながら、新たな取り組みができればと思っている。
根岸 毅宏
研究分野
財政学
論文
アメリカの所得格差の拡大と所得再分配の動向(2022/04/01)
アメリカのTANF現金扶助受給者を就労者へと移行する雇用プログラム(2018/09/15)