日本においては、2019年ラグビーワールドカップ、2020年は東京オリンピック・パラリンピックと、スポーツのビッグイベントが続きます。さまざまな競技がある中、日本におけるその競技の伝統や起源を探って行くことで、グローバルなスポーツの中の「日本」を紹介いたします。(※画面の右上のLanguageでEnglishを選択すると、英文がご覧いただけます This article has an English version page.)
~綱引き~
◆世界中に存在する「綱引き文化」をひも解きます。
一本の綱を引き合う「綱引き」は、特別な技術がなくても参加でき、誰もが楽しめる競技です。1920年のアントワープ大会までは、オリンピックの競技種目であったこともあります。また、韓国・フィリピン・ベトナム・カンボジアは、ユネスコの無形文化遺産に共同申請し、2015年に登録が認可されています。いにしえより世界中に同様な競技があり、日本においても、世界においても、占いや、神事と結びついて広く親しまれています。
◆綱引きで1年間を占う?
往古から行われていると思われる綱引きですが、記録に見える綱引きは比較的新しく、5~6世紀の中国の書物「荊楚歳時記」が最古だと考えられます。そこでは揚子江中流域の正月立春の行事に綱引きの記述があります。
日本では、茅(かや)や藁(わら)で作った綱を引き合い、一年を占う神事が今も各地で行われています。綱引きは、東北地方では1月15日頃の「小正月」という行事に行われることが多く、関東の茨城、千葉、北九州などではお盆の行事で、また南九州から奄美大島では8月の十五夜に、沖縄では6月か8月の吉日に行われる例が多いようです。
全国各地の農村や漁村で、農産物・海産物の1年の収穫を占う行事としても行われています。例えば、里方の地域と海方の地域で綱引きを行い、里方が勝てばその1年は豊作、海方が勝てばその1年は豊漁というように、綱引きの行事にはその1年間を占うという要素が含まれています。また、8月の十五夜の時期に行われる綱引きには多く豊作祈願の意味が込められています。その他いろいろな意味が込められながら綱引きは全国で盛んに行われています。
◆悪霊を払う綱引き
ちなみにお盆の行事の中の「盆綱」と呼ばれる藁綱の行事では、そのお盆の時期に、綱を蛇に見立てて綱引きを行っている例もあります。お盆の時期には、ご先祖様の霊が帰ってくるとともに、招いていないような悪い霊も一緒について帰ってきていると考えられます。そうした悪い霊を払うために笹を川に流すような風習も見られますが、盆綱もその1つです。蛇に見立てた藁綱を村中引きずり回すことによって、目に見えない雑霊や悪霊を集めて払っているのです。こうしたお祓いの要素が、競技に発展している例もあるようです。
運動会の人気種目ともいえる綱引きですが、その由来をたずねてみるとこのように実は占いや魔除けの意味をもって行われてきた長い歴史もあったのです。
※画面の右上のLanguageでEnglishを選択すると、英文がご覧いただけます This article has an English version page.