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ボランティアの経験を活かして
学校を楽しくする先生になりたい

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人間開発学部4年 久保田 結菜 さん

2023年3月17日更新

 小さいころから学校が大好きで、小学生の頃、運動会で応援団長を務めるなどみんなで手を取り合ってひとつのものを作り上げることに一生懸命だったという久保田結菜さん。

 その思い出が原点となり、小学校の先生を目指してきた。大学在学中は「いろいろな経験を積んでみたい」という気持ちから、大学が提供するボランティア留学や学内ワークスタディなどに積極的に参加した。

 そして令和5(2023)年4月から、念願の小学校教師に。数々の経験は、久保田さんにどんな影響を与えたのだろうか? 

 

ボランティアで知ったアメリカ/日本の教育現場

 お日様みたいに明るい笑顔が印象的な久保田結菜さん。高校の時から「小学校の先生になりたい!」と目標を定めていた。入学後は、教育に関係するさまざまなボランティア活動に邁進してきた。

 「まず大学1年の2月に『米国初等教育TA研修』(小学校や幼稚園、保育園の先生を目指す学生が授業のフォローを行うTA〈ティーチングアシスタント〉としてアメリカの教育現場を視察し、教育事情について理解を深めることを目的に職場体験を行う研修。以下、TA)を利用して、ユタ州の小学校で1か月間授業アシスタントをしました。大学2年の8月には、教育実践総合センターの『教育ボランティア』制度を利用して、国内の小学校で3か月間ボランティアをしました。今でも同じ小学校に制度を変えて携わっていて、卒業する3月半ばまで続ける予定です」

「小学校の先生を目指すならこの経験はしておいたほうがいいかな? と思ったボランティアに次々参加していました」と笑顔で語る久保田さん。

 アメリカでのTA経験では、文化の違いや学校の雰囲気の違い、子どもとの関わり方などたくさんの学びを得た。

 「私は特別支援の子もいるクラスの授業アシスタントをしました。先生から『この子、本読みがとても上手になったのよ。ちょっとみてあげてくれる?』というような指示があり、それに従って子どもと接します。先生は気を遣ってゆっくり話してくれるんですが、子どもは関係なく早口で話してきます。研修が終わる1か月後にはだいぶ耳が慣れてきましたが、最初は表情を読み取って『こう言っているのかな』と想像して対応していましたね」

 特別支援の子どもたちは複雑な家庭環境に置かれている場合もある。久保田さんはとにかくその子一人ひとりの個性を尊重し、一人でいたい雰囲気を発信している子はそっとしておき、できなかったことができるようになった子には「すごい! できたね!」と声をかけるなどして子どもたちと親しんでいった。TAとして授業を行ったときは日本の福笑いを教材にして子どもたちにトライしてもらったりした。人の輪の中に飛び込んでいくのが得意な久保田さんは、すぐに子どもたちの人気者に。最後の授業で、子どもたちや先生から手渡されたメッセージカードは今も大切な宝物だ。

最後の授業で子どもたちや先生からもらったメッセージカード(左)。 久保田さんが行った授業のテキスト。福笑いや輪投げの説明が書いてある(右)。

 アメリカでの経験を経て、次は日本の小学校で3か月間教育ボランティアとして授業のサポートを行った。ここはじつは久保田さんの母校でもあった。このときに自分の課題として取り組んだのは、子どもたちとの距離をいかに縮めるかということ。

 「週に1回しか学校に行かないので、なにか注意しなければいけないことがあっても、私が言うのと普段から信頼関係が構築されている先生が言うのとでは子どもの反応が違うんですね。そこで先生たちがどんな風に子どもと接しているのかを必死に見て学びました。

 そこで気がついたのは『まず、話す』ということ。子どもって自分が好きなことを話したい気持ちが強いので『最近どんなゲームやってるの? やり方教えてよ』などと話しかけ、信頼関係を作っていくように心がけました」

「子どもの『話したい』という気持ちをどうやって引き出すか、いろいろ考えました」

 現場に行ったからこそ実感したこともある。

 「子どもって本当に一人ひとり違うんだと、強く思いました。たとえば図工の授業で、発想や創造が苦手な子もいいます。でも、急かしたり、焦らせたりせず、どうやったら決められた時間内で子どもの力を引き出せるだろう? とあれこれ考えました」

 

人間関係から学ぶことも多かった「共育フェスティバル」運営

 小学校の授業ボランティアのほかに、大学が提供しているワークスタディ活動にも力を注いだ。学生の立場から大学広報の役割を担う「学生アドバイザー」も行ったし、その他に力を入れたのは「学生企画委員会」だ。これは人間開発学部の学生会員を代表する学生企画委員が組織する会で、地域の親子と大学をつなげる「共育フェスティバル」の運営などを行う。「共育フェスティバル」は学生や教員と地域の方々が学び合う、とくに子ども連れの方々に楽しんでもらうイベントだ。

 久保田さんは3年生のときに、学生企画委員会代表となり「共育フェスティバル」を取り仕切ることになった。

 「前年はコロナの影響で中止。翌年もコロナ対策が必要で、来場者の流れや立ち入り禁止場所の掲示など、決めることが多くなかなか大変でした」

 委員会の代表は初等教育学科の久保田さんのほか、子ども支援学科と健康体育学科に一人ずついて、Zoomを使って毎晩のように深夜まで話し合いを重ねた。

 「深夜のZoom meetingで『うん、そうしよう。じゃあ資料をまとめて先生に明日提出するね』と決まって、先生に見せたらNGが出て、また会議をして作り直し……(笑)。そんなことを繰り返していました」

 「共育フェスティバル」のメニューは人間開発学部の3つの学科やサークルが考えて担当する。その各サークルとのやりとりも代表の役割で、とくにコロナの感染状況もあってギリギリまで決まらないことがあり、調整も相当ハードだった。

 「みんなギリギリのスケジュールでやりくりしているので、どうしてもピリピリしてしまいます。ちょっとした行き違いで『えっ、どうして!?』みたいなやりとりも発生して、頭を抱えたこともありました。でも、教授が『小学校の先生になったら、もっといろいろな人と関わっていくわけだから、これも人間関係の練習だと思ってがんばってみたら』とアドバイスしてくださって、気を取り直してがんばりました。そうすることで、少し成長できたかな? と思っています」

 

「学校に行きたい!」と子どもが楽しみにできる環境を作りたい

 教員採用試験に合格し、3月には赴任先の小学校が決定する。いよいよ、高校生の頃からの夢が叶う日が近づいている。

 「小学校の先生になりたい理由は、自分自身の小学校生活が本当に楽しかったからです。運動会で応援団の団長になって、応援賞をいただいたこともありました。それも私がみんなとひとつになって、何かをやり遂げることが大好きだったり、声が大きかったり(笑)する様子を見て、先生が『応援団やってみたら?』とすすめてくださったことがきっかけでした。この体験を通して自信もついたし、協力してものごとを成し遂げる楽しさにも気付かされました」

 そして、ボランティア経験を通しての反省点もある。

 「私はこれまで、どちらかというとリーダー的な役割をすることが多くて、なにかするときは段取りなどを自分の中できっちり考えてから『こうやっていくからよろしくね』と周囲に行動を促すようなところがあるんです。

 今振り返ると、そんなに全部自分で決めないで、周りのみんなともっと協力して、一緒に考えていけばよかったと反省しています。

 今、小学校では子どもの自主性を育てる教育がメインなので、いつもの自分だと『こうやったほうがいいんじゃない』なんてアドバイスしてしまいそうな気がしているんですね。子どもが自ら考えて動くようにどうやってサポートしていったらいいか、考えています。これは、ボランティアをしたから気がついたことですね」

「4月からどんな子どもたちと会えるか楽しみです」。不安よりワクワクのほうが大きそうな久保田さんだ。

 久保田さんはどんな先生になりたいと考えているのだろう?

 「かつての私がそうだったように、子どもたちに『学校に行きたい!』って思ってもらえるような環境を作りたいですね。そのためには、私自身がいつも笑顔で子どもと接するようにしたいです!」

 最後に、学生生活を振り返ってもらった。

 「國學院大學は、ものすごくたくさんの友だちと出会えた大事な場所です。一緒にアメリカに行った友だちや、教員免許を受けるときの授業で一緒だった友だち、ゼミやZOOMで仲良くなった友だち……。キャンパスもこじんまりしていて教授との距離も近いし、友だちとも仲良くなりやすく、学科では知らない子がいないぐらいみんなと親しくなれました。本当に居心地のいい場所でした」   

 そう言って、またピカピカな笑顔をみせてくれた久保田さん。この笑顔が小学校で明るく輝く4月は、もうすぐそこにある。

取材・文:有川美紀子 撮影:押尾健太郎 編集:篠宮奈々子(DECO) 企画制作:國學院大學

 

 

 

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