ARTICLE

「18歳成年」を狙う消費者トラブル 傾向と対応策を専門家に聞く【後編】

  • 法学部
  • 全ての方向け
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

法学部 兼任講師 吉松 惠子

2023年1月9日更新

 民法改正で令和4(2022)年4月から成年年齢が18歳に引き下げられた。社会への積極的な参加を促すことが期待される一方、懸念されるのが消費者トラブルに巻きまれるリスクだ。

 成年後は法定代理人(親権者)の同意なく契約ができるようになるため、悪質商法の被害に遭う可能性がある。後編では、国民生活センターの総括主任相談員で國學院大學法学部の吉松惠子兼任講師に、トラブルに巻き込まれた時の対応策について聞いた。

 

改正特定商取引法で、EC事業者に解約方法などの表示義務付け

 最近増えているのがサブスク(サブスクリプション)のトラブルだ。健康食品の定期購入などが代表的で、1回限りの注文のつもりが複数回の購入が条件の定期購入だったり、「●カ月無料体験」などの表示が出ていても自動で有料プランに移行していたりする例もある。

 こうしたインターネット通販のトラブルから消費者を守るために令和4(2022)年6月、改正特定商取引法が施行された。EC事業者は、ネットショッピングなどの注文確定直前の最終確認画面で、消費者が返品や解約する場合の連絡方法や条件などをわかりやすく表示しなければならない。このほか商品の量、支払い回数などの表示も義務付けた。事実と異なる表示をした場合などは、事業者は罰則を科される。また、同法に違反する表示によって誤認して申込んだ消費者は、契約を取り消すことができる。

出典:消費者庁ホームページ 「令和3年特定商取引法・預託法の改正について」

 吉松先生は「画面の表示内容を頻繁に変える事業者もいます。消費者ができる対策としては、購入を申込む際に最終確認画面をスクリーンショットで保存しておくこと。トラブルになった時の証拠になります」と話す。

 他にも悪質商法の手口はさまざまだ。「荷受け代行」といって送られてきた荷物を転送するだけのアルバイトに見せかけた詐欺や、SNSやマッチングアプリなどで知り合った外国人と親しくやりとりをするうちに様々な名目で送金を迫られる「国際ロマンス詐欺」もある。「詐欺の手口は日々変わります。手口を知ることも大切ですが、それよりも『お金を払ってほしい』と言われた段階で怪しいと気付き、相手との接触を断つことが重要です」(吉松先生)

 

トラブルに巻きまれた時は、消費生活センターへ

 トラブルに巻きまれた場合はどう対応すればよいだろうか。消費者被害に関しては、全国の地方自治体が設置している消費生活センター等で専門知識を持つ相談員が無料で相談に乗る。全国共通の3桁の電話番号「消費者ホットライン188(いやや)」に電話すれば、最寄りの消費生活相談窓口につながる。また、海外事業者とのトラブルに関する相談は、国民生活センター越境消費者センター(https://www.ccj.kokusen.go.jp/)がメールで受け付けている。

 相談する際には証拠となる契約書やメール、SNSでのやり取り記録を準備しておくことが望ましい。「センターは弁護士のように当事者の代理人になることはできません。センターの役割は消費者と事業者間の情報や交渉力の格差を是正し、解決に向けたサポートをすることです。まずは、消費者からトラブルの状況を詳しく聴き取ったうえで、具体的な解決策を説明し、事業者との自主交渉の方法を助言することになります」(吉松先生)。トラブル解決の第一歩は、当事者による自主交渉からスタートすると覚えておきたい。

 ただ、いくらセンターで相談に乗ってもらったとしても、肝心の事業者が「くもがくれ」して連絡が取れず、泣き寝入りになるケースも少なくない。不審に感じる場合は、支払いを求められても応じず、「消費者ホットライン188」に電話をかけよう。「儲からなかったら返金する」、「効果がなかった場合は全額返金保証」などの言葉があっても惑わされないでほしい。いったん支払ったお金を取り戻すのは極めて困難であることを肝に銘じたい。

 保護者の立場からみれば、子どもが巻き込まれる消費者トラブルはSNSやマッチングアプリなどインターネット上の「閉じた世界」で発生するため、子どもの異変に気付きにくいという点が問題となる。大学生の大半がスマートフォンを持つ今、親は、誰と、どんなやり取りをしているか把握が難しい。子どもが悩んでいる様子はないか気を配ることも求められる。

 「例えば子どもがマルチ商法に熱中してしまうと帰宅が深夜になり、最終的には家に帰ってこなくなるケースもあります。純粋なお子さんほどのめり込みやすい。夢中になると親の忠告には耳を貸さない状態になっている場合も考えられます。そんな時には、『あなたが一生懸命にがんばっていることをお母さんも知りたい。よかったら話を聞かせてほしい』など、子どもの気持ちに寄り添ったアプローチをお勧めします」(吉松先生)。

 国民生活センターは暮らしに役立つ幅広い分野の情報をまとめた「くらしの豆知識」を毎年出版している。令和5(2023)年版は若者が巻きまれやすい消費者トラブルや回避ポイントなどを特集している。家庭内で情報共有することもトラブル防止の一助となりそうだ。

 

前ページへ

若者の消費者トラブルの実情について吉松先生が解説。

 

 

 

このページに対するお問い合せ先: 広報課

MENU