民法改正で令和4(2022)年4月から成年年齢が18歳に引き下げられた。社会への積極的な参加を促すことが期待される一方、懸念されるのが消費者トラブルに巻き込まれるリスクだ。
成年後は法定代理人(親権者)の同意なく契約ができるようになるため、悪質商法の被害に遭う可能性が高くなる。若者を取り巻く消費者トラブルは美容医療や情報商材、暗号資産など多岐にわたる。国民生活センターの相談情報部総括主任相談員で、國學院大學法学部吉松惠子兼任講師に、若者の消費者トラブルの最新情報と、被害にあった場合の対応策について聞いた。
トラブルのキーワードは「美しくなること」と「お金もうけ」
全国の消費生活センターに寄せられた相談件数を世代別に見ると、平成22(2010)年度から令和2(2020)年度までの11年間、契約当事者の年齢が20~24歳の相談件数は、18、19歳と比べ約1.5倍で推移している。法定代理人(親権者)の同意がない未成年の契約は取り消しができるため、これまでは20歳になったばかりの「大人」がターゲットになっていたことが分かる。だが、これからは18歳、19歳の新成年の若者たちがターゲットになると言われている。
実際、若者たちはどんな被害に遭っているのか。「『美しくなること』と『お金もうけ』。この2つが若者が巻き込まれるトラブルのキーワードです」と吉松先生は説明する。
10~20代に多いのが、エステやプチ整形といった美容サービスのトラブルだ。消費生活センターに寄せられた相談では「脱毛エステの無料体験後に高額なプランを勧められて契約してしまった(20代男性)」、「二重まぶたの施術をしてまぶたの腫れがひかない(20代女性)」などがある。
エステや一定の美容医療契約は特定商取引法が適用されるため、クーリング・オフや中途解約ができる。だが一方で二重まぶたにするための手術や、脂肪吸引は特定商取引法の適用外になる。実際に施術を受けてしまった場合は、支払いを拒むことは困難だ。
「ポイントは、安易に契約に応じたり、当日に施術を受けたりしないこと。施術前にリスクや副作用の確認をすることも大切です」(吉松先生)。クーリング・オフや中途解約できるサービスとしては他にも語学教室や家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービスなど合計7種の役務が対象になる。
暗号資産は法定通貨ではない 「大学生は近付かないで」
「お金もうけ」関連のトラブルはどうか。吉松先生は「お金もうけに関する話はまず疑ってほしい。本当にもうかるのであれば、話を持ってくる人は自分でやっているはずです」と話す。
国民生活センターに寄せられた相談のうち近年、10~20代の若者の被害が増えているのがアフィリエイトなどの情報商材や、暗号資産(仮想通貨)のトラブルだ。令和2(2020)年度には情報商材の相談件数に占める10、20代の割合は46%、暗号資産は25%を占めた。
アフィリエイトとは自分のサイトに広告バナーを貼って収益を得る方法のこと。簡単に稼げるとうたう広告もあるが、「そう簡単に儲かるものではありません。アフィリエイトの業界団体が公表している数字では、アフィリエイターの4割は収入ゼロ、3割は月収1000円未満です」(吉松先生)
暗号資産(仮想通貨)を巡るトラブルも増えている。全国の消費生活センターには「学生ローンで借金をして投資契約をしたのに配当が入らない」「SNSで知り合った人から勧められて暗号資産の投資をしたが出金できない」などの相談が寄せられている。「暗号資産はマッチングアプリで知り合った人から投資の勧誘を受けるケースが非常に多いです。こうしたケースはまずお金は戻ってこないと考えてください」(吉松先生)
吉松先生は「暗号資産は、円やドルなどのように国が価値を保障する法定通貨ではありません。ハイリスクの金融商品です。大学生は近づかないでほしいです」と強調する。暗号資産の交換業者は金融庁の登録が必要だが、金融庁が暗号資産の価値を保障したり推奨したりするものではない。価格も乱高下し、損をするリスクもある。金融庁、消費者庁、警察庁はサイトで注意事項をまとめている。
後編ではトラブルに巻きまれてしまった時の対処法を紹介する。