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観光地域づくり法人(DMO)の最前線で地域を動かす【後編】

地元を愛し、走り続けた10年…挑戦は続く

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一般社団法人秩父地域おもてなし観光公社 井上正幸さん(平3年卒・99期文)

2022年9月5日更新

 発足から10期目を迎えた秩父地域おもてなし観光公社は、地元の観光プロジェクトを推進するために、なくてはならない存在になっている。事務局長を務める井上正幸(平3年卒・99期文)さんは「地元の人たちと協力して、続けられてきたことが何よりも重要なことだ」と地元愛を口にする。観光地域づくり法人(DMO)の認定取得や、新型コロナウイルスの感染拡大による影響などのさまざまな道のりを経て、次に見据えるのは、SDGs(持続可能な開発目標)やDX(デジタルトランス・フォーメーション)などのキーワードを盛り込んだ新しい旅行サービスや、魅力ある特産品の発掘だ。

 

続けることが一番の財産に。

私は続けているだけ

 事業を続けていくには収益を稼ぐことが重要だ。行政は選挙で首長が変われば、方針が変わる。毎年結果を出すように努力して、今年で10期目に入った。コロナ禍で飲食店が自粛に追い込まれた時、その支援のために民間の業者から「クラウドファンディングを立ち上げてくれないか」と頼まれた。観光公社なら必ず動いてくれるという信頼を寄せてもらっていることを実感した。私は続けているだけ。続けることをできることが一番の財産だ。観光による地方振興をテーマに講演するときに、「市役所職員の私ができたことなので、どのまちでもできるはず」と話している。

 

観光地域づくり法人(DMO)を取得した効果

 平成28年に、地方創生のために観光を活用するための手法として、DMOという言葉が流行し始めて、観光庁の観光地域づくり法人(DMO)にチャレンジした。平成26年におもてなし観光公社を立ち上げたころは、周りから「何しているところ?」との声が上がるなど認知度は今一つだったが、第一期のDMOとして、国に認定されたことで、地元のためにやってきた取り組みが正しかったと認めてもらえた気がする。令和3年には、37地域しか選ばれない重点支援DMOにも認定され、地方の辛口の議員からも一定の評価されるようになった。

 

次の10年へ向けて、取り組みたいこと

 コロナ禍を経て、SDGsとDXが新しいテーマとして浮上している。この2つをキーワードに取り入れた新しい企画にチャレンジしている。観光庁のサステナブルな観光コンテンツ強化事業や観光庁「第2のふるさとづくり」事業などだ。次世代観光研究会を立ち上げ、若い世代、とりわけ、女性の声を吸い上げようと、オンラインやリアルでのミーティングを実施している。一方で、旅館など既存の事業者に対する取り組みも力を入れていく必要があり、観光公社の役割はどんどん大きくなっている。

たとえば、埼玉県秩父地方の特産物などを販売する秩父地域地場産業振興センターを観光公社が支援している。物産館を大幅に改装し、「じばさん商店」としてオープンした。特産品と観光コンテンツはニワトリとタマゴの関係で、地場産業振興センターと観光が一緒になったことで、両者を一体的に企画・販売するワンストップの体制を整えた。また、秩父市ケーブルテレビ復活プロジェクトには、YouTubeを活用するように進言し、「秩父おもてなしTV」の開設に携わったりしている。

 

大学キャンパスに地元で働く原風景があった

 三峯神社や宝登山神社、秩父神社の三社の人たちに、自分と同じ國學院大學出身者が大勢いる。三峯神社の会議に出席した時、「國學院大の後輩です」と挨拶すると、「知っていたよ」と言ってもらった。大学では神道概説が必須科目で、教わった先生が秩父神社の宮司だった。そのころから、地元に戻ることが決まっていたのかなと縁を感じる。神道学には、國學院大の根幹があり、各地の神社がその土地の生活文化を支える重要な役割を担っている。文化庁に観光の部署ができたり、観光と文化は接近し、重なり合おうとしている。現在、文化庁の補助金で「お祭りプロジェクト」に取り組んでいる。秩父地域は祭りが年間300あり、その体系化を目指している。卒業して30年以上たち、大学で学んできたことが、今になって生きている。

 

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地域の観光発展には、まず自分が汗をかく

 

 

 

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