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#SNSトラブルと法律(上)
コロナ禍で加速? 相次ぐ被害防ぐには

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上尾あおぞら法律事務所 代表弁護士 川村 正衡

2021年8月23日更新

ツイッターやインスタグラムなどのSNSを介し、大学生が犯罪に巻き込まれるトラブルが増えている。特殊詐欺事件の加害者になったり、誹謗中傷の被害者になったりなど深刻なトラブルもある。学生生活だけではなく、就職活動やその後の人生に影響が出る場合もある。トラブルに巻き込まれないためには、具体的なトラブルを知り、自衛策や対応策をとることだ。国学院大学の院友(卒業生)で上尾あおぞら法律事務所(埼玉県上尾市)の川村正衡弁護士(平26卒・122期法)に、トラブルの実例と防止方法を聞いた。前・後編に分けて紹介する。

軽い気持ちの投稿が炎上 保護者が気付きにくい面も

大学生がSNSを介してどんなトラブルに巻き込まれているのか、なぜトラブルに発展するのかその背景を見ていきたい。

具体的なトラブルとして①金銭②誹謗中傷③個人情報の特定と被害――が挙げられる。①の金銭は仮想通貨などの投資詐欺の被害にあったり、「闇バイト」で特殊詐欺の犯罪に手を染めてしまったりするトラブルだ。②は芸能人など著名人を誹謗中傷し、加害者になるケース。もしくは意図していないのになりすましや、デマ投稿により、全く関係のない事件の加害者として扱われるなど誹謗中傷の被害者となる事案。③は日常の様子を投稿して、画像に映り込んだ風景や文章から住所や行動を特定されてストーカーや空き巣の被害にあうなどのケースだ。

川村弁護士は「『周囲の友人・知人しか見ていないだろう』という軽い気持ちでSNSを利用している人が多いが、実際は不特定多数の人の目に触れていると考えて」と警鐘を鳴らす。ネットという閉鎖的な空間で行われているため、学生がトラブルに巻き込まれていることに保護者も気付きにくいという。

なぜトラブルに巻き込まれるのか。川村弁護士は「大学生になって、アルバイトなどで交友関係が広がり、入る情報が急激に増えることが影響しているのでは」とみる。コロナ禍で、対面でのコミュニケーションをとることが難しくなり、SNSで交友関係を築く機会が増えていることも関係しているようだ。

金銭関係トラブル “高報酬”“絶対儲かる”に注意

写真SNSを介した金銭トラブルは多い。コロナ禍で相次いだのが、個人事業主への経済対策である持続化給付金の不正受給だ。詐欺グループに名義貸しをしたり、虚偽の申請をしたりした10~20代の若者が詐欺容疑で書類送検される事件が起きている。

また「オレオレ詐欺」や「金融商品詐欺」などを「特殊詐欺」というが、特殊詐欺と認識せずに犯罪に手を染めてしまうこともある。「オレオレ詐欺」などで、お金をだまし取る相手から現金を直接受け取ったり、宅配便などで送られてきた現金の入った荷物を受け取ったりする「受け子」という役目だ。特殊詐欺事件で逮捕される若者の多くが、この「受け子」である。

報道などによると、「ものを運ぶだけのおいしいバイトがある」などと誘われ、軽い気持ちで犯罪に加担してしまうケースが多い。川村弁護士は「末端の『受け子』は逮捕される確率が高い。アルバイト感覚でも法的には共犯になる」と強調する。

さらに最近目立つのが、マルチ商法まがいの勧誘被害だ。しばらく会っていなかった友人や先輩からSNSで「最近どう?」などと食事に誘われ、「株や仮想通貨の情報商材を買えば絶対に儲かる」などとUSBに入った情報商材を1本50万円程度で売りつけられるというケース。勧誘側は売りつけるたびに元締めの会社から仲介料が入る仕組みで、ねずみ講に近い。「そもそも投資で絶対に儲かるというものはない。『絶対』という言葉は不誠実だと知ってほしい」(川村弁護士)

後編は誹謗中傷や個人情報の特定、被害のトラブル・対策を紹介する。


川村 正衡(かわむら まさひら) 平成26年に國學院大學卒業後、立教大学大学院法務研究科を修了。28年に司法試験に合格。弁護士法人てんとうむし法律事務所(埼玉県川口市)、むさしの総合法律事務所(さいたま市)を経て令和2年7月に独立。生まれ育った上尾市で上尾あおぞら法律事務所を開業。
【上尾あおぞら法律事務所】
〒362-0075 埼玉県上尾市柏座2-6-26 下里第二ビル3階

 

 

 

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