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【先輩に聴く】今こそ伝統文化体験のすすめ

探求を重ね、想像力を育め

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落語家(落語芸術協会理事)、本学兼任講師  三遊亭遊吉師匠(昭57年卒・90期文) 

2021年7月21日更新

 文学部兼任講師として教壇にも立つ落語家の三遊亭遊吉師匠は、コロナ禍だからこそ人々に笑顔をもたらし、気持ちを前向きにしてくれる落語の素晴らしさを知ってほしいと願う。一方で落語にとどまらず能や狂言など、脈々と受け継がれてきた日本の伝統文化に広く目を向けることの重要性も説く。広く伝統文化に触れ、探求することにより、その奥深さなどを知ることができるとともに、想像力を育む効果も見込め、学びの幅を広げられるからだという。

―コロナ禍で落語や寄席はどういう状況にありますか

 若手から真打まで落語家が代わる代わる高座に上がり、演目(ネタ)を披露する寄席には独特な笑いの雰囲気があります。しかし、寄席は今、入場制限などで厳しい状況に置かれ、かつての活気は薄れてきています。とはいえ笑いは日常生活に不可欠なものですから、何とかこの文化を守り抜こうとクラウドファンディングを始めるなど、私たち寄席の関係者が懸命に努力しているところです。また、寄席はネタの披露の場であるとともに修行の場でもあります。高座からその日の客席の様子や客層などを見ながら、柔軟に対応して場を和ませるのも修行の一つです。インターネットなどで落語を見てもらうのもよいですが、寄席から落語ファンの足が遠のくことで、こうした機能が失われないかと危惧しています。

 落語は、お年寄りに限らず広い年齢層から支持されています。古典落語ではよく、欲を出して失敗してしまったとか、庶民の滑稽さをネタに観客を笑いの渦に包み込みます。相当古くに作られた演目もなぜか古臭さを感じさせません。これが古典落語の特筆すべき点であり、根強く支持される理由の一つだと言えるでしょう。旬な話題を盛り込むと、あっという間にやたら古臭く感じてしまうから不思議です。

―日本の伝統文化に広く触れることが重要と説いています

 落語の楽しみ方の一つに、パロディーの原作を探るというのがあります。落語では話の一部分が、日本の古典芸能や古典文学などのパロディーになっていることがしばしばあります。古典芸能などの知識が備わっていれば、演目に耳を傾けながら「あーっ、今の部分は、あの古典からパロっているな」といった思いを巡らし、より深い楽しみ方ができるということになります。だから古典芸能など日本の伝統文化に広く触れることが重要だと思うのです。落語ファンそれぞれが、こうした色々な楽しみ方ができるのも落語の魅力の一つですね。

―伝統文化にはどうアプローチしたらいいでしょうか

授業では落語を実演することも

 私が受け持つ授業では落語の歴史などにはじまり、落語から見た江戸文化、講談や浪曲と落語の違いなど、できるだけ分かりやすく多くの切り口で説明するようにしています。こうした授業で得た知識をベースに能、狂言、歌舞伎など古典芸能や伝統文化に一通り触れ、難しい言葉に突き当たったら、その意味や語源の探求などへと掘り下げてみてはどうでしょう。食わず嫌いが一番いけません。伝統文化に広く触れることで、豊かな日本文化の本当の姿が見えてくるうえに、自身の想像力を育むことにもつながっていきます。物事を客観的に見る鍛錬にもなるでしょう。多くの古典芸能、伝統文化に触れ、結果として落語が最も面白いと感じてくれれば私としては一番うれしいことです。日本文化の研究が充実している本学の学生なら、なおさらこの伝統文化体験にトライしてもらいたいと思っています。


さんゆうてい・ゆうきち 本名・能條正美(のうじょう・まさみ) 國學院大學では日本文学を学び、卒業後に三遊亭遊三師匠に弟子入り。遊吉として昭和61年に二ツ目、平成6年に真打に昇進。22年から本学文学部兼任講師。公益社団法人・落語芸術協会理事。

取材協力:國學院大學院友会

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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