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【先輩に聴く】熊本地震から5年 目指す「心の復興」

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熊本城稲荷神社宮司 本田 伊煕さん(平28卒・124期神文)

2021年5月22日更新

 熊本地震から5年が過ぎました。今も傷跡は残りますが、街のシンボル・熊本城は特別公開されるまでに復興が進んでいます。熊本城に隣接する熊本城稲荷神社(熊本市中央区)でも鳥居や社務所などが被災。宮司の本田伊煕(いき)さん(平28卒・124期神文)が奮闘しています。震災の年に父で前宮司の光曠(みつひろ)さんを亡くし、宮司に就任した本田さんは「周囲の支えがあったからやってこられました。父の教えを守り、悩む人々が気持ちよく過ごせる神社としていきたい」と、神社を拠点とした心の復興を目指しています。

――熊本地震から5年経過した思いを

 國學院大學を卒業して東京大神宮(東京都千代田区)に出仕として奉仕し始めた直後の4月14日に最初の地震が起き、当社でも鳥居と社務所、8割ほどの摂末社が倒壊しました。秋になって「父が危ない」という知らせを聞いて熊本に戻ったのですが、大学を出たばかりで実践的なことが分からぬまま宮司を継ぐこととなりました。12月に就任してすぐにお正月、そして2月には初午大祭と当社の2大行事が続いたため苦労しました。

平成28年の熊本地震で大きな被害を受けた熊本城稲荷神社の境内(本田宮司提供)

 境内は、国の特別史跡に含まれるため調査に時間を要し、社務所の完成まで2年半がかかりました。この間、復興のために1200万円を超す指定寄付金をいただいたことに感謝しています。しかし、摂末社の修復が完了していないので復興は道半ばです。

 一番記憶に残っているのは宮司に就任した直後、平成29年2月の初午大祭です。1年前まで学生で、東京大神宮でも上司や先輩たちから言われて動いているだけでしたが、宮司になると自分から動かねばなりません。未熟な私には荷が重く、長く勤める神職・職員や崇敬組織の「福男・福娘の会」に支えられて乗り切りました。

 「福男・福娘の会」の人とは頻繁に顔を合わせています。毎年変わる初午大祭の「福男・福娘」経験者が200人を超え、市内だけでなく天草など遠方の人もいます。地元の先輩で経験豊富ですから、話を聞くと勉強になりますよ。

――コロナ禍の中で奉仕を続けることに葛藤は

 コロナ禍だから神社のお勤めを一切やらないというわけにはいきません。かといって神社からクラスター(集団感染)を出すわけにもいかないので兼ね合いに腐心しています。熊本市の中心部に鎮座する当社には、繁華街の飲食店関係者や観光客が多くお参りに来られます。初午大祭では夜中の12時からお守りや縁起物を頒布しますが、自治体からの自粛要請で8時に店を終えてから参拝できるよう9時に前倒したり、行列や会話を避けるため事前に注文票に記入して出してもらうよう頒布の方法も工夫したりしました。

 「密はダメ」というご時世ですが、3密対策を講じたうえで「福男・福娘の会」の役員会を開いて頻繁に議論し、大祭前には「この形でやっては?」とシュミレーションしてみたりもしました。人が多ければそれだけ多くの意見を伺うことができ、何通りもの可能性を事前に考えておくことができますから。学校の勉強では教えてくれないことですね。

――復興への思いや後輩たちへメッセージを

 大学時代は勉強そっちのけでプライベートの時間を楽しみ、4年生に進級するまで授業以外で先生や職員の人と話すこともありませんでした。しかし、進路について相談した神道研修事務課の人と出会ったことで神社に対する思いや大学に対する思いも強まりました。4年時には恩師のもとにも頻繁に出入りし、授業を受けるだけの関係から一歩進んで、色々と教えてもらうことになりました。卒業できるかどうかの苦境を乗り切れたのは自分の力だけではありません。大学生は「自分で何でもできる」と思いがちですが、「周りの人の助けが一番自分の力になる」と伝えたいです。

 父からは「神社は人が心の苦しみを和らげるために来るところ。汚い神社にしていてはいけない」と教えられたので、「参拝者には気持ちを晴れやかにして帰っていただきたい」と、父の教えを守ってお勤めをする毎日です。

毎年多くの参拝客でにぎわう初午大祭(本田宮司提供)


ほんだ・いき 熊本県熊本市出身、実家は熊本城稲荷神社の社家。平成28年に國學院大學神道文化学科を卒業して東京大神宮に奉職したが、父で前宮司の光曠(みつひろ)さんが同年11月に急逝し、翌月に宮司を継承。

熊本城稲荷神社 天正16(1588)年、加藤清正が肥後(現在の熊本県)へ入国した際に稲荷神を勧請して創建。主祭神は倉稲魂命(うかのみたまのみこと)で、白髭大明神、緋衣(ひごろも)大明神ほかも祀る。「白髭さん」として親しまれ、毎年2月最初の午の日に斎行される初午大祭が知られる。

熊本地震 平成28年4月、熊本県熊本地方を震源に発生し、14日(前震)と16日(本震)の震度7を含め震度4以上の揺れを30回近くも記録した。死者278人、負傷者2809人、全半壊4万3000軒以上、被害総額は最大で4兆6000億円。国の特別史跡・熊本城も石垣が崩れるなど大きな被害を受けた。

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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