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多くの人と関わり続け離島と神社の未来を開く

神社と地域の未来を考える【後編】

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長崎県平戸市度島町集落支援員・度島神社禰宜 森 健司さん(平26卒・122期神文)

2021年4月21日更新

 長崎県平戸市の離島・度島(たくしま)に帰郷して地域振興に取り組む度島神社禰宜の森健司さん(平26卒・122期神文)。神職として父の芳尉(よしやす)宮司とともに奉仕し、古くから伝わる「平戸神楽」の継承者としても尽力しています。しかし、時代の変化で地域の人たちにとって神社への思いも様変わり。令和の時代にあるべき神社の姿について、「神社の存在をマイナスにはせず、『進んで応援したい』と思わせたい」と話します。

平戸神楽を舞う森健司さん(本人提供)

――地域と神社、神楽継承について

 度島には度島神社、飯盛神社、秋葉神社の3社があります。島に住む神職は宮司の父と私の2人だけですが、父の本業は大工でもともと神職の家系ではありません。そんな私が神職の道に進んだのは、神楽と神社の後継者として周囲に見込まれたのがきっかけです。國學院大學の別科で神職資格を取得して東京の亀戸天神社に奉職。神道文化学部で学び直して平成26年に帰郷しました。約10年間も東京に出ていたので、帰郷当時は「島にいなかったのに度島人ぶるな」と話を聞いてもらえないこともありましたが、「結果を出してこっちを向かせよう」と燃えましたね。そんな島民からも、地域に伝わる「平戸神楽」を舞えるようになって一目置かれるようになってきました。度島では、神楽をきちんと舞えて笛が吹け、太鼓がたたけることが「神職力」のバロメーターなのです。

 正直に言って、最近は神社の存在が島民の負担になっているのではないかと少し心配です。豊作などを祈る場だった神社も、「コメはスーパーマーケットで買うもの」と思う人が増えて存在があやふやになっています。会社勤めの人にとって「おくんち(秋の例祭)」のため仕事を休むなんて負担なんですね。ただ、お祈りをする場所があることはとても大切です。神社は人々の暮らしに「目に見えない安心」をもたらします。そのためにも、神社の存在がマイナスではなく、「度島神社なら進んで応援したい」といわれたいですね。

 「平戸神楽」は、神職のみが舞うことを許された特別なものです。複数の神職が平戸地区の約110社と周辺の神社の例祭(おくんち)で奉納しており、私も年間70~100回ほど関わっています。神楽が神職力のバロメーターと思われていることは、平戸で神楽が大切にされている表れですね。社家でもないのに神楽を習得できたことは、私にとって大きなプラスとなっています。

度島神社

――度島の未来について

 家族もそうですし、一緒に仕事をした仲間も私の拠り所といえます。まちづくりコーディネーターの梅元建治さんは「まちづくりとは何ぞや」といった道筋をつけてくれた人です。集落支援員や神職として心がけていることは、「助けてもらう前に、どれだけプレゼントできたか」です。「助けて!」と頼る前にこちらから働きかけ、「手伝ってやらんばね」と思ってもらえるような存在にするのです。昨今は「時間」を大切にする人が増えて地域活動や祭事を敬遠する人も増えたので、こちらの時間をより多く提供(=プレゼント)して信頼を得ることで人々の貴重な「時間」を提供してもらうことが必要だと思います。

度島・浦地区を望む

 島の未来像として、「度島があるじゃない」と思ってもらえるような島でありたいと願っています。つまり、度島の内外に関わらず誰もが取り残されることなく、島全体が拠り所となるような故郷にしていきたいのです。若者には将来の自分のためになるようなことに没頭してほしいですね。そんな人がいれば全力で応援します。

 45歳までに何か目に見える物を残したいと決めているのですが、それまで走り続けて結果を出し、これまで関わってきた人々に自慢することが目下の目標です。それまでに「度島の魅力はこれだ!」と公言できるものを作りたいと考えています。これからもより多くの人と関わり続け、島や神社の未来に繫げます。


もり・たけし 長崎県平戸市度島町出身。平成17年、國學院大學別科2類を修了し東京・亀戸天神社に奉職。同大神道文化学部を卒業(122期)した26年に故郷へ戻り、度島神社などの神職を勤めるとともに平戸市集落支援員(嘱託)、特定非営利活動法人度島地区まちづくり運営協議会事務局員としても活動。

平戸神楽 壱岐を除く旧平戸藩領内に伝わる神楽で、国の重要無形民俗文化財。江戸中期の元禄年間に、神道家の橘三喜が諸国一宮の神楽の要素を取り込んで24番の舞を大成した。舞の番数によって小・中・大・太々神楽の4種があり、24番すべてが奉納されるのは亀岡神社の例祭のみとなっている。森さんが舞う平戸神楽・十三番「二剣」は以下のリンクから視聴できる。

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