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Z世代「新しい何か」生み出し社会で活躍を

「Z世代」とインターネット〈下〉

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ネット教育アナリスト 尾花紀子

2020年7月1日更新

 物心がついたときからネット環境が整い、会員制交流サイト(SNS)で世界とつながる日常がある「ジェネレーションZ(Z世代)」の現役学生と、オンラインを通じた意思や情報のより良い伝達について学ぶ特集「『Z世代』とインターネット」。最終回では、ネット教育アナリスト、尾花紀子さんに、Z世代の特性をはじめ、彼ら、彼女らに向き合う教員や保護者に向けたアドバイス、そして社会へはばたこうとしている学生へのエールを語っていただきました。

共有・共感好むZ世代

 「Z世代」とは、1990年代半ば~2010年頃に生まれた、ちょうど今の10代と大学生にあたります。Z世代は生まれたときには現在のデジタル環境のベースが整っており、成熟したテクノロジーの恩恵を受けながら育ちました。そのため、オンラインとオフラインを区別する感覚はなく、どちらも日常として捉えています。

 コミュニケーションはオープンで、例えば写真や動画をインターネットにアップする動機は「思い出の記録」よりも「自己表現」に近いようです。「共有」や「共感」を好み、「納得」すれば行動に移す傾向があります。差別や不平等を嫌い、平等に「個性」を認めてもらいたいという欲求があるようです。

 この平等の価値観は、プラス面とマイナス面を生じさせます。

 例えば「ゲームという得意ジャンルを極める」ことにより「プロゲーマーとして活躍する」道があることを知っており、「ゲームばかりしている=オタク」という差別や画一的な捉え方をナンセンスだと感じます。誰にでも(自分にも)個性があるのだから、認めるべきだと主張します。そういう意味では、多様性を受け入れる素養はあります。

 ただ、インターネットの特性として、使えば使うほど「似たような志向、感覚の情報」が集まりやすくなり、それ以外の情報を目にする機会が減っていきます。すると、多様性を受け入れる素養はあっても、自分の感覚に合い共感・納得できるモノやコトに流される傾向も生じ、同調圧力が働いてしまうことも少なくありません。また、共感・納得したものが正義となると、はみ出るものを排除したくなる困った心理に陥ることもあります。平等ではない(と自分が感じる)ことにも、同様の傾向が見られます

「平等」「個性」の尊重を

 Z世代と向き合う大人たちは、平等かつ個々の特性を尊重した対応を心掛けましょう。情報収集力に長け、“曖昧なことはネットで確認”を常とするZ世代は、共感できる理由があれば、すんなり行動に移しますから、「納得がいかないなら、○○について調べてごらん」と語りかけてみてください。納得できる情報にたどりつけば、そのまま身につくことも多いでしょう。

 同様の傾向は小中高校生にも見られます。教職を目指す学生本人にも意識して実践してほしいことです。

 ノウハウ生かし挑戦を

  学生が近い将来、自分の個性を生かして社会で活躍するためには、自分たちZ世代の「当たり前」が、それ以前の世代には「??」なのだということを意識し、感覚の異なる相手にも理解してもらえるよう「言葉で伝える=共有する」ことが大切です。

 デジタル機器の恩恵を当たり前のように受けてきたZ世代の皆さんは、プライベート利用に関しては〝プロフェッショナル〟です。しかし、オフィシャル利用に関しては素人同然。これからは、皆さんの持つノウハウと、大人や社会人としての先人たちの知識や経験を上手にパズルすることに挑戦しましょう。そして、そこから「新しい何か」がどんどん生み出されることを期待しています。=おわり


尾花紀子(おばな・のりこ) 昭和59年、日本アイ・ビー・エム入社。人材育成、プロバイダー事業、教育ソフト監修などを手掛け、平成17年フリーに。同時に「ネット教育アナリスト」として活動を開始。インターネット教育の専門家として、行政機関などの委員を務める傍ら、教育・PTA団体や学校からの講演依頼も多い。現在、内閣府 「青少年のインターネット利用環境実態調査 企画分析会議」 委員、総務省 「青少年の安心・安全なインターネット利用環境整備に関するタスクフォース」 委員、安心ネットづくり促進協議会 「普及啓発広報委員会」 副委員長など。共著に『子どもといっしょに安心インターネット』(全3巻、岩波書店)。

 

 

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