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異なる興味で世界を1つにつなぐ鉄道ファンたち

國學院大學鉄道研究会(前編)

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國學院大學鐵道研究會 

2020年6月24日更新

 國學院大學鉄道研究会(鉄研)は、今年10月で設立5周年の若いサークルだ。鉄道や旅行が好きな学生が会員として所属。いわゆる「乗り鉄」「撮り鉄」「録り鉄」といった異なる関心や知識の持ち主が集まり、個人研究の発表や本学行事でのイベント開催など活動を展開している。中でも鉄道車両を貸し切る年に1度の「大旅行」は、ビッグイベントに位置づけられる。興味や得意分野など会員それぞれが持つ世界を1つにつなげて臨むのが大旅行。そこには、1人では見ることができない、多くの発見がつまった世界が広がる。令和元年度の大旅行に同行した。

えちごトキめき鉄道の団体貸し切り列車。鉄研オリジナルのヘッドマーク「若木」を掲げる(新潟県上越市で)

手作りヘッドマークにこだわる

 鉄研が大旅行で鉄道車両を貸し切るようになったのは第2回(平成29年度)から。鉄道会社との交渉は全て会員自身が行う。第4回となる令和元年度は、初の貸し切り利用となった第2回の「えちごトキめき鉄道(トキ鉄)」(新潟県上越市)が当時、運行ダイヤなどの交渉に親身になって応じてくれたことが縁となり、再びお願いすることになった。

 新潟県などが出資する第三セクターのトキ鉄は、北陸新幹線の延伸開業に伴いJRから経営分離された並行在来線を引き継ぎ、旧北陸線市振―直江津間を「日本海ひすいライン」、旧信越線直江津―妙高高原間を「妙高はねうまライン」として運行。車窓から日本海や妙高山の絶景を望む観光路線でもある。開業は平成27年で、今年は鉄研と同じ設立5周年という節目の年にあたる。

 今回の大旅行には、現役会員全18人のうち16人らが参加した。費用は貸し切り列車の運行費だけで約15万円で、一定額を鉄研の予算から支出し、残りを参加費として徴収。直江津を出発駅に両ラインの見どころを約5時間半かけて巡った。

 貸し切ったのは前後に運転席があるディーゼル(気動)車の1両編成。車両の先頭と最後尾には会員が協力して手作りしたオリジナルデザインのヘッドマークを掲げ、急行「若木(わかぎ)」として運行された。用意したヘッドマークは今回新調した8枚を含む14枚に上る。デザインには、渋谷キャンパスの最寄り駅である渋谷駅に乗り入れている各鉄道路線を象徴する色を配する工夫を施したという。「渋谷」にこだわった力作を旅先へ持ち込んだ。

団体乗車券を模したオリジナル切符の準備にも余念がない

 また、鉄道乗車券に詳しい会員が中心となり制作したオリジナルの切符も持参。鉄研が作るオリジナル切符は、若木祭などの際にも配布され、来場者に人気のある鉄研の〝お家芸〟だ。今回も採用デザインを決める段階で、会員同士による知識の応酬が交わされ、ヘッドマークと並ぶ力作となった。

停車時間を交渉し秘境駅へ

 自分たちだけの貸し切り運行では、いつもの鉄道旅とは一味違う景色が広がった。

 会員が楽しみにしていたのが、ひすいラインの梶屋敷―糸魚川間にある「デッドセクション」。鉄道の電化路線には電気が直流の区間と交流の区間があり、デッドセクションとは交流と直流の境で給電されない地点を指す。デッドセクションに差しかかると、普段は一般乗客が入れない運転席横のスペースが開放された。三方向をガラスに囲まれた空間からレール脇に見える「直流」「交流」と書かれた看板に、会員は歓声を上げていた。

秘境駅で知られる筒石駅の階段を上る会員たち

 ひすいラインには別の見どころもある。私鉄最長とされる頸城(くびき)トンネル(11.353キロ)内にある筒石駅で、鉄道ファンらの間で「秘境駅」と呼ばれている。学生たちはユニークな駅を見学するため、トキ鉄との事前交渉により5分の停車時間を確保。ホームから改札口まで片道約300段の階段を上り下りしたり、トンネル内の壁に貼りつくように設けられたホームを歩いたりしながら、〝異世界〟を堪能した。

「駅舎は博物館」

 妙高高原駅では、車内の電光掲示板に行き先などさまざまな列車情報を表示させる「幕回し」が特別に行われた。この様子をスマートフォンで撮影していた工藤淑高さん(神文3)は「『試運転』の表示が出てきたときは驚いた。車体外側の表示板で見られる機会はあるが、車内で試運転の表示を見ることは通常はかなわない。まさか、車内から見られる日が来るとは…」と興奮気味に話した。

特別に行われた「幕回し」。運転士への質問も途切れることがない

 妙高高原駅ではまた、思わぬ発見もあった。設備を見て回っていた本多秀弥さん(法4)は駅舎の柱を触りながら、「よく見ると、使われなくなった2本のレールが再利用されていた」。階段側面の銘板に「昭和34年」という竣工年の表記を見つけた際には、「時代を超えて残る設備を見つけると、駅の歴史を感じ、まるで博物館を訪れたような気持ちになる」と好奇心をかき立てられていた。=後編に続く。

※現役会員の所属人数と学科、学年は令和元年度時点


【國學院大學鉄道研究会】正式表記は「國學院大學鐵道研究會(國鐵)」。平成27年設立。現役会員は18人。

 普段は週に1度集まって個人研究の報告をし合うほか、関東近郊の鉄道旅へ月に1度程度出かける。個人研究では、年に1度発行する会報誌「カンテラ」で成果を発表。昨年10月に発行した第3号には、旧日本陸軍鉄道連隊が演習のために敷設した路線の跡地訪問記や、各地のお得切符を利用した体験談、サイコロを振って出た目によって路線や行き先を変える〝先の見えない鉄道旅〟の実践録などユニーク、かつ読み応えのある記事が満載されている。鉄道旅は大旅行のほか、昨年は夏に避暑を兼ねて長野県内で合宿、冬には茨城県大洗町で旬のアンコウ鍋を味わう忘年会を行うなど季節感を生かした鉄道旅も展開する。

 このほか、若木祭やホームカミングデーで、オリジナル作成の硬券を配布したり、鉄道模型を展示したりするなど来場者に好評を博している。

 

 

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