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コミュニケーションが紡ぐ、アナログゲーム「TRPG」ってなんだ!?
(みんなのアナログ VOL.9 )

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2020年4月1日更新

  「賽の目」は、TRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)をメインとした「アナログゲーム」のサークル。毎週水曜と土曜に活動し、和気あいあいとしながらも、毎回真剣勝負の白熱したプレイを繰り広げています。デジタル世代である学生のみなさんが、なぜアナログゲームに惹かれるのでしょうか。コンピュータにないアナログの魅力とはー。「賽の目」メンバーの貝瀬光希さん(経3)、久保千尋さん(神文2)にお話を伺いました。
 
 
 
 
会話を重ねながら即興で物語をつくっていく
 
 まずお話を伺ったのが、3年生の貝瀬光希さん。TRPGに興味を持ったのは、小学5年生の頃に読んだファンタジー小説『ロードス島戦記』(角川書店ほか)がきっかけだそうです。この小説が「ダンジョンズドラゴンズ」「ソードワールド」というTRPGをモデルとしていたことから、TRPGを知り、友人たちとプレイするように。
 TPRGとは、紙とペン、サイコロを使って会話しながら遊ぶ対話型のロールプレイングゲーム(RPG)。3~6人で遊ぶのが一般的で、プレイ時間は短くても2時間、平均4時間という長丁場のアナログゲームです。ファンタジー、ホラー、現代伝奇、学園ものとTRPGの舞台となる世界観はさまざまで、ほとんどのジャンルが網羅されています。
 
――コンピュータRPGにはない、TRPGの特徴とは何でしょうか。
 
貝瀬さん(以下貝瀬) コンピュータRPGは一人のプレイヤーが仲間全員を操作して、コンピュータが敵全員を操作しますが、TRPGは敵・味方問わず、一人のプレイヤーが一人のキャラクターを操作するので、より柔軟かつ主体的にゲームを楽しめます。一人の人間が一人のキャラクターになりきって遊べるのも特徴で、いわば即興劇のような側面があります。
 
――コンピュータRPGでは、プレイヤーはあらかじめプログラムされた行動しかとれませんが、TRPGではプレイヤーはどんな行動や発言も可能という自由度の高さがあります。
 
貝瀬 その場で戦略を自由に考えて実行できるのがTRPGの魅力です。『敵が目の前に立ってるぞ』と言われても、コンピュータRPGなら、ゲームのルート設定にならって正面から倒すことしかできませんが、TRPGなら何でも自由にできます。たとえば『城が悪者に乗っ取られたから倒してくれ』と言われたら、この城で昔雇われていた人にお金を握らせて中の様子を教えてもらおう、こんな抜け道があるって教えてくれたので、夜になったらそこから侵入して不意をつこう、といった具合に。こうした作戦を考えられる方がおもしろいですよね。それができるのは敵役も人間がやっているTRPGだからこそです
 
 
キャラクターになりきり、そこに命を吹き込める
 
--TRPGでは、進行役となるゲームマスターが自分のやりたいゲームの「ルールブック」を購入し、プレイヤーを集めてプレイするというのが通常の流れです。
 
貝瀬 プレイヤーはペンとコマとサイコロさえ持ってくれば遊べます。本当にアナログなんです。
 
 プレイする手順として、まずはゲームマスターが各プレイヤーにキャラクターシートを配り、それぞれ自分がプレイするキャラクターの性格や能力といった情報を詳細に書き込みます。そして、ゲームの舞台を描いた地図が置かれたテーブルを囲み、ゲームマスターがルールブックに沿ってゲームを進行していくのです。そのシナリオもゲームマスターが自由に考えることが多いそうです。
 
貝瀬 ゲームを始める前に、自分が担当するキャラクターの性格や強み、弱み、趣味嗜好などを設定し、この状況ならこんなことを言うんじゃないか、と想像しながら、その都度アドリブで話を進めていきます。決まったジャンルはありますが筋書きはなく、たとえばドラゴンを倒しに行くのでもいいし、悪徳領主の屋敷から金を盗むのでもいい。筋書きを考えるところからTRPGは始まっているんです。公式のシナリオ集も販売されているので、それを買ってくればすぐに遊ぶこともできます。
 
--TRPGのプレイ中は、常に頭をフル回転して考え続けることが不可欠。この頭脳派アナログゲームを日常的にプレイすれば、さまざまな力が身につきそうです。
 
貝瀬 まず身につくのはアドリブ力ですね。あとは自分と異なる考えを持つ人の思考を想像する力、戦略を立てる力、そしてコミュニケーション力です。みんなで会話をして作戦を立てながら遊ぶので、嫌でもコミュニケーション能力は上がると思います。初めて会った人でもセッションを一つ終えれば、友だちになれます。
 
--数年前、ニコニコ動画にTRPGをプレーする動画が投稿されたことをきっかけに、TRPGは大きなブームになりました。ただ当時は、「やりたいけどやる場所がない」「人数を集めるのが難しい」という嘆きの声が多かったといいます。
 
貝瀬 TRPGは多くの魅力があるんですが、プレイするのに人を集める必要があったり、プレイ時間が長かったりするのでハードルが高いんです。やりたくてもできないという人たちに、ぜひうちのサークルに遊びにきてほしいですね。

 


サークルの活動風景。TRPGの前に、ボードゲームでウォーミングアップ。

 
 TRPGをプレイするための人数が集まらないときは、ボードゲームで遊ぶことが多いそうです。ボードゲームの中ではルールがシンプルな「スカル」やビジュアルがユニークな「枯山水」が気に入っているのだとか。一旦ゲームが始まると白熱した真剣勝負の様相になりますが、普段は先輩・後輩関係なく和気あいあいとした雰囲気です。
 

スカルと花のディスクを使って、駆け引きするゲーム。
 

プレイヤーが禅僧となり、美しい庭を完成させるゲーム。
 
--今後このサークルがどうなってほしいですか?
 
貝瀬 これからもこのサークルが無事に存続してもらって、自分が社会人になっても休日に遊びに来られる場所として残ってくれたらうれしいです。

 


「笑ってくださ〜い」のリクエストで、照れ笑い。

 
 プレイするだけでなく、懐かしい面々の顔を見て話ができる。それこそが、アナログゲームの魅力なのかもしれません。
 
 
お互いに顔を合わせて会話できることが魅力
 
 もう一人、お話を伺ったのが、2年生の久保千尋さんです。「子どもの頃から家族でボードゲームを楽しむことが多かった」という久保さんが、TRPGに興味を持ったのは高校生の頃。ニコニコ動画でTRPGのプレイ動画を見て興味を持ったことがきっかけでした。
 
--久保さんにとってTRPGのおもしろさはどんなところにあるのでしょうか。
 
久保さん(以下久保) 私はもともと小説を書くのが好きで、小学生の頃から書き続けているんですが、TRPGはキャラクターとストーリーは決まっているけど、それぞれがどういう関わり方をしていくかはプレイヤー自身が決めるので、化学反応的に予想もしていなかったストーリーが即興で生まれるのです。一本の映画を自分たちで制作しながら読んでいるような感覚で、これこそTRPGの魅力だなと思います。
 
--TRPGをプレイすることで創作意欲が掻き立てられ、一つのセッションが終わった後に、その後日談を自分で書くこともあるそうです。
 
久保:プレイ後にまた新しいストーリーが自分の中にできたり、それが別のTRPGのシナリオにつながったり、ということもあります。
 
 このサークルでは、「TRPG以外にもいろんなゲームに触れられるのが楽しい」と言う久保さん。最近一番おもしろかったのが「たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。」というゲーム。一言だけが書かれた手札を6枚配り、その手札の言葉を即興で組み合わせてプロポーズの言葉をつくり、告白するというルールだ。小説を書いている久保さんにとっては、「物語を組み立てたり言葉を交わすところも、アナログゲームのおもしろさ」だそうです。
 

「結ばれる」「伝染病」「同じ苗字」「ぶち壊して」などの語彙カードを組み合わせて、プロポーズしたり、されたりするゲーム。
 
--コンピュータゲームも普段よくプレイするそうですが、アナログゲームにしかない魅力とは何ですか?
 
久保 私はちょっと引っ込み思案なところがあって、顔を合わせないと相手がどういう感情を持っているのかがわからず、不安になってしまうのです。アナログゲームならお互いに顔を合わせて声を出し、その場の空気を感じながらプレイすることができます。その人とちゃんと会話ができてるなって思えるのが魅力です。
 
 
これがキャラクターシート。1〜2時間ぐらいかけて、各自記入するというから驚き。ゲームマスターによっては、前日に配布することもあるとか。
 
--対面や電話ではなく、文字でのやり取りが主流になった今でも、久保さんは対面で会話をすることの大切さを感じているようです。
 
久保 普段は友人とLINEで密にやりとりをしていますが、お互いに『会いたいね』と言い合っています。やっぱり人と関わる上で、お互いの顔を見て話すことは、これからも必要とされることなんじゃないかな。そこにアナログゲームがあると、お互い気軽に楽しんでやれるじゃないですか。相手が知らない人だとしても、そこにルールがあって、お互いに楽しもうという気持ちがあれば、それだけで会話が生まれてくる。相手と円滑にコミュニケーションを図る上でも、アナログゲームっておもしろいなと思います。
 
--アナログゲームはその場をあたたかくしたり、人と人をつなげる力があるのですね。
 
久保 みんなで遊ぶという雰囲気が、人と人を近づけるのかなと思います。これからもみんなでワイワイ楽しくゲームをやって、みんなでごはんを食べたりして、ゆるい雰囲気がずっと続いてほしい。たまにOBの方々が『おみやげ、持って来たよ』とふらっと立ち寄ってくれたりして、卒業後も変わらない友人関係を築くことのできるいい場所だなと思っています。
 

TRPG愛があふれていた久保さん。笑顔がすてき。

 人と密に関わることで、自分の新たな一面が見つかったり、弱みを克服できたり、この先も長く続く人とのつながりが生まれたり。学生たちにとってもアナログゲームというのは、ホッとできる心の拠り所どころとして今もあり続けているようです。
 
 
取材・文:中里篤美 撮影:押尾健太郎 構成:篠宮奈々子(DECO)
 
 
 

 

 

 

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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