本学では、令和2年度までFMヨコハマの番組『Lovely Day♡』にて、人間開発学部が提供するミニコーナー『SUKU SUKU SCHOOL』をお送りしていました。この番組は、人間開発学部の教員が、『子供が すくすく 育つ 』子育てワンポイントアドバイスを毎回紹介するもので、ここでは、今まで放送された内容をまとめたものを定期的に記事として配信しています。
2019年度は小学校の行事に沿った内容で、11/18~12/30の7回を担当したのは人間開発学部の藤田大誠教授です。
テーマは「年中行事」。その模様をお伝えします。
「新嘗祭」
11月23日の「勤労感謝の日」は現在、「勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」ことを目的とする「国民の祝日」となっていますが、戦前には国家によって「新嘗祭」(にいなめさい・にいなめまつり)という「祭日」と位置付けられていたもので、元来、天皇が特に重要なお祭りを行われる日です。新嘗祭は新穀の収穫祭であり、現在も宮中において、天皇陛下が皇祖・天照大御神をはじめとする神々に五穀豊穣への感謝と「国平らかに民安かれ」との祈りを籠めて斎行されているだけでなく、全国の神社でも執り行われている特に重要なお祭りです。
令和元年は今上陛下が御即位された特別な年だったので、11月14・15日に「大嘗祭」(だいじょうさい・おおにえまつり)として行われました。大嘗祭は、天皇陛下が御即位後初めて新穀をお供えする大規模な新嘗祭で、御一代一度の重儀です。天皇陛下が古来の生業を通し、全国の国民による参画を得て共に行われるお祭りで、収穫に対する感謝の念を籠めてお米をはじめとする農作物などを中心とする神饌(お食事)を神々にお供えした後、神々と陛下が共に食されます。これは日本独自の文化で、海外ではなかなか考えられないものです。
11月23日とはもともと、現在も続けられている新嘗祭に由来する日本独自の特色ある極めて重要な日だということを、子供たちにも伝えられると良いと思います。
「五節句」(五節供)
「節句」という表記は江戸時代からのもので、もともとは「節供」であり、お供えをしたり食事や宴会をしたりする節会(せちえ)におけるお供え物のことです。節供はもともと、禊祓(みそぎはらい・みそぎはらえ)の行事でした。穢れや邪気を祓い、神々を迎えてお祝いする日なのです。
とりわけ、1月7日「人日」(じんじつ:七種の節供)、3月3日「上巳」(じょうし:桃の節供、ひな祭り)、5月5日「端午」(たんご:菖蒲の節供、「こどもの日」」、7月7日「七夕」(しちせき:たなばた、星祭)、9月9日「重陽」(ちょうよう:菊の節供)は、「五節句」(五節供)と言われ、節供の代表格になります。ひな祭り、端午の節供などは、子どもの成長を祝う行事として今も行っている人が多いですが、その歴史や一つ一つに籠められた先人の思いを知ると、また違った楽しみ方ができます。
「年中行事」
日本には四季があり、それを楽しみながら生活に取り入れる方法として、日を読む(時の流れを数える)技術である「暦」(暦法、暦書)が大切にされてきました。また、「年中行事」とは、毎年、暦に記されたある時期がくれば同じことを行う習慣、風習です。
例えば、年末の大掃除のルーツとして宮中や神社仏閣の煤払(すすはらい)が挙げられます。大晦日に向けて穢れを祓い、年神を迎え、新しい年を迎える準備をするということから来ているのです。また、大晦日は、「大つごもり」とも言い、お籠り(おこもり)をする日という意味もあります。
では、年明けの「明けましておめでとうございます」は誰に向けてのあいさつなのでしょうか。実は、年神様の来訪を讃え、祝福するために「おめでとうございます」とあいさつをしているのです。神様を迎える準備ができ、無事に年神様にお越しいただいたことで年が明け、気持ちも新たになったことを祝っているのです。また、お年玉は、もともとお供えであるとともに年神様の依り代とした鏡餅を分け与えた風習に由来します。お年玉は「年魂」であり、神様の魂を分け与えていただくという意味があるのです。
正月や節供(節句)といった年中行事、七五三や成人式と言った人生儀礼は、これまで大切にされてきた日本の風習です。教育基本法や教育・保育現場における要領・指針などにも日本の文化や伝統行事に親しむということが盛り込まれています。ぜひお子さんと一緒に楽しみながらルーツや一つ一つに籠められた意味を学び、豊かな意義を持つ年中行事を伝承してほしいと思います。
藤田 大誠
研究分野
近代神道史、国学、日本教育史、体育・スポーツ史
論文
「「超国家主義」と宗教に関する覚書」(2024/03/10)
「松永材の日本主義と英霊公葬運動」(2024/03/06)