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学問と実践の両輪で新しい大学院教育を

令和2年4月、「公務員養成コース」を新設   大学院法学研究科

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法学部教授(大学院法学研究科幹事) 高橋信行、渋谷区教育委員会生涯学習・スポーツ振興部長 木下毅彦

2019年12月23日更新

 國學院大學大学院は令和2年4月、公務員を志望する学生の夢を後押しする「公務員養成コース」を法学研究科に新設します。目指すのは、公務員試験の合格とともに、任用後も学術的基礎に基づいた活躍ができる人材の養成。地方自治体の現役公務員ら実務家教員が担当し、自治体が抱える政策問題を教材に解決策を検討する科目「公共政策演習」を導入し、「実務に生かせる深い学び」を提供します。平成31年3月卒の本学卒業生で公務員任用者は国家・地方合わせて119人に上り、各地で活躍中です。コース開設の中心的役割を担う法学研究科幹事の高橋信行教授(行政法実践研究)と、講師として教壇に立つ東京都渋谷区教育委員会生涯学習・スポーツ振興部の木下毅彦部長に、地域を支えるカギとなる公務員の養成にかける思いを聞きました。

木下毅彦部長(左)と高橋信行教授

理論や判例も学ぶ

司会 公務員養成コースを新設する狙いは

高橋教授(以下、高橋) 大学院博士前期課程(修士課程)では、学問をより深く究めることに主眼をおいたカリキュラムの下、行政書士などの実務家や研究者を目指す学生が学んできました。しかし、そうした旧来のカリキュラムでは、公務員試験を見据えた学生の要望に応えきれていない感が否めません。一方で、公務員を志望する学生の中には学部4年時に一度の挑戦で試験に合格する人もいますが、失敗して留年しながら再挑戦する人も少なくありません。また、卒業して再挑戦する人もいます。こうした人たちは、いわゆる公務員予備校へ通いながら、孤軍奮闘しています。そこで、大学院としては、学部4年間を終えた公務員志望者を引き続き支援し、合格を目指してもらうとともに、任用後も実務に生かせる深い学びができるよう、公務員養成に特化したコースを設けることにしたのです。

司会 コースの特色は

高橋 大学院ならではのトレーニングとして用意している目玉の科目が「公共政策演習」です。地方自治体の現役公務員や公務員OB・OGに講師となってもらい、自治体が抱える政策問題、最近のトピックスであれば例えば待機児童問題などを材料に解決策を検討するほか、講師と議論も行います。

 演習では単なる受験テクニックに偏ることなく、試験問題の背景にある理論や判例についても学ぶことで、より理解を深めることができ、公務員として働き始めた後に必要となる問題解決能力も鍛えられると考えています。面接試験の対策にもなるでしょう。この演習を担当する現役公務員の講師第一号として来年度お呼びするのが、木下部長です。

 

求められる即戦力

司会 渋谷区は、今年のハロウィンで路上飲酒を禁止するなどの内容を盛り込んだ条例を施行し、話題となりました。一方で、待機児童問題や高齢者の支援など他の地方自治体と同様にさまざまな地域課題を抱えています。大学院の学生にとっては、受験や実務に役立つ知識や能力を身につけられる格好の〝教材〟になるのでは

木下部長(以下、木下) 障害のある人もない人も互いを尊重して存在を受け入れ合うインクルーシブ社会やダイバーシティ(多様性)の実現が広く叫ばれていますが、渋谷区では同性カップルにパートナーシップ証明書を発行する条例を全国に先駆け、平成27年度に施行しました。これは、性的少数者(LGBT)を行政として十分にケアするとともに、住民がお互いに許容し合う社会をつくっていくことを目的とした政策です。

 例えばゴミの問題や民泊の課題なども、お互いを許容し合う社会をつくっていかなければなかなか解決することはできません。地域に寄り添い、抱える諸課題を解決していくためには、「地域の力」をまず高めることが必要なのです。

司会 公務員の養成指導は、渋谷区にとって人材育成という意義もあるのでは

木下 情報(IT)化が進んだことにより、世の中の流れはずいぶんと早くなりました。かつては任用後10年程度の経験を積むと少し昇進するといった〝修行〟のような期間がありましたが、今はそれでは時代についていくことができません。昇任スピードも早まっていて、任用後の早い時期から責務も能力も求められるようになっています。

 世の中の動きが早いということは、突然に沸き上がってくる課題も多いということが言えます。採用する側からすると、どうしても即戦力を期待してしまいます。ですから、大学や大学院での教育には、より実戦的なカリキュラムを取り入れていただきたいのです。

 私自身の学生時代を振り返っても、行政法を実感として理解することが難しかったと記憶しています。それは、行政が実際にどういうことをしているかを知らないからです。実際の生活の中で行政法に基づき、どのようなことが行われているかを教えていただけたら、学生の理解はより深まるのではないかと思います。

司会 大学院の公務員養成に求められる課題は、即戦力や実践力の育成ということになりますか

高橋 本学では、学部教育にも公務員養成のプログラムがあります。ただ、こちらは受験対策がメーンです。一方、大学院は少人数教育で、試験問題の背景にある理論や判例について学び、公務員として働き始めた後に必要となる知識や能力を磨くことが本来の趣旨です。

 本学大学院では「先取り履修」を導入していて、公務員養成コースにも適用されます。学部3年時に大学院を受験して合格すると、4年時から大学院の科目を事前に履修できます。そうすると、学部と大学院の合計5年間で修士号の取得と公務員試験の合格を目指すことが可能です。

大学院生による条例案も

司会 現役公務員として大学院での指導に注力することは

木下 法律については学部教育である程度習ってきていると思いますから、法律の使い方を伝えたいと考えています。具体的な事案に法律をどのように当てはめ、課題を解決するという点が重要ですが、これにはコツがあるようでないようで…。慣れも必要です。私がこれまで経験してきた事案を基に、どのような観点から取り組むことで比較的スピーディーに解決できたかということを伝えることができれば、学生にとって何らかのヒントになるのではないかと思っています。

司会 学校法人國學院大學と渋谷区は平成29年7月に包括連携協定「シブヤ・ソーシャル・アクション・パートナー(S-SAP)協定」を締結しています。渋谷区が地元の高等教育機関へ積極的に関わっていく意義とは

木下 地域課題は、役所だけではなかなか解決できません。「地域の力」と先ほど申し上げましたが、地域課題の解決には地元の高等教育機関の協力も必要になってきます。両者が協力し合うためには、日頃から交流して、互いにつながっていることが大切です。

 これまでも、國學院大學の学部生からは定期的に渋谷区への施策提言をコンテスト形式でいただいていますが、今回の協力関係では1つの最終形として、大学院の学生に渋谷区の条例案をつくってもらえるようになればよいと考えています。合わせて、条例の正当性や必要性の根拠となる立法事実のフィールドワークも手伝っていただける風土をつくっていきたいです。

 他にも國學院大學大学院にはリカレント教育(学び直し)をさらに取り入れていただきたいというのが、渋谷区としての希望です。任用されてから数年が経過した現役職員が、大学院へ通って腕を磨くような仕組みです。地元だからこそのメリットではないでしょうか。

今年で4回目を迎えた渋谷区長への政策提言(令和元年10月に開催)
※右から3人目が長谷部健区長

生き生きとした渋谷区へ

司会 優秀な公務員を養成するための展望は

高橋 公務員を目指すのは法学部の学生ばかりでなく、他学部にもいます。こうした学生は一般教養のレベルは非常に高く、専門知識も豊富ですが、法律の知識が足りないケースも見受けられますから、公務員養成コースで受け入れていきます。そうすることで、コースの規模も大きくできると考えています。そして、カリキュラムが定着していくことで、さらに多くの外部講師を招くことも可能になるでしょう。

 先ほど、「渋谷区の条例案を大学院の学生に策定してほしい」というお話がありましたが、学部で現在行っている渋谷区への政策提言コンテストを大学院の公務員養成コースにも導入してみたいと考えています。

 「大学院は社会から遊離している」「社会に役に立っていない」といった批判の声が今、とても多いです。確かに、社会の需要と大学院からの供給が一致していない部分もあります。「社会の需要に応えた大学院教育を提供している」と認めてもらえるように導きたいです。

木下 自治体と大学、大学院が協働することで相乗効果が生まれます。学問と実践が両輪となって進んでいくことができれば、地域がさらに生き生きとしてくるのではないかと思っています。

研究分野

公法(行政法)

論文

「1962年憲法改正とルネ・カピタン」宇賀=交告編『現代行政法の構造と展開 : 小早川光郎先生古稀記念』 (2016/09/01)

原子力行政と透明性 : フランス原子力情報公開と地域情報委員会(CLI) (2015/08/01)

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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