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政治 X こども トークセッション
キーパーソン:読売新聞東京本社編集局 英字新聞部長 林 路郎
モデレーター:シブヤ経済新聞編集長 西 樹

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読売新聞東京本社編集局 英字新聞部長 林 路郎

2016年4月25日更新

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ー吉永先生の話をお聞きになって、いかがでしたか。

藤嶋:自分の人生とか経験を踏まえて考えると、小学生の頃とかはやはり失敗を過大に考えてしまう。もう駄目だと。向き合うのがすごく大変で、すごく深刻に捉えてしまう。なので、むしろ気が紛れるようないろいろなことがあった方がいいんじゃないかと思っています。失敗を引きずり過ぎないで、気分転換できるものが特に子どもにはあった方がいいんじゃないかと。僕が小さい頃は、学校で嫌なことがあっても家に帰って好きな夕食だったりするともう忘れている。でも今だと、結構引きずっているのでは。ニュースを見ていると僕の時以上に深刻に受けとめているのかなと感じていて…気楽にいこうぜ、遊びな遊びなという、それは本当に大事なメッセージだなと感じました。

ー吉永先生は、藤嶋先生の話をどのようにお聞きになりましたか。

吉永:私は自分の経験を元にしてしか話ができないのですが、こういう政治というネタがあって、それを面白く料理する藤嶋先生の話を聞きながら本当に興味深いなと思いました。学級は非常に閉じた空間なので教師が独裁者になりやすい。学級王国などとよく言われますが、時にはお隣の国のような、ああいう独裁者タイプの先生もいます。先生が言ったことと違うことを子どもが一生懸命発想してやろうとしても、そのことを「余計なことはするな!」という言葉で片づけてしまったり叱責してしまったりする。自分が思った通りに進まないと機嫌を損ねてしまうようなクラスもあって、そういうクラスでは一見子どもたちが言うことを聞いているようですが、先生がいなくなった時、音楽の時間とか図工の時間に解放されると、たがが外れたようにわっと大騒ぎになってしまいます。つまり、子どもたちが本来持っているエネルギーを、そこでギュッと縮めてしまっている。独裁者にならないようにということで、先ほどフィードバックが大事だとおっしゃっていましたが、自分がどういう姿なのかということを、どういう担任なのかということを、常に子どもたちの姿からフィードバックしなければいけない、ということを改めて感じさせられました。

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ー「独裁者はフォードバックが苦手」という藤嶋先生の話を、林さんはどのようにお聞きになりましたか。

林:独裁者は今の世界でいうと、北朝鮮とか、それから中国は1人の人間なのかどうか、中国共産党の一党独裁という言い方をしますね。それから、選挙をやって大統領を選んでいるように見えるんだけど、実は選ばれた大統領がかなり好きなことをやるという国もありますね。私のいたヨーロッパでは2011年ごろ、G20という、世界の大きな経済力の強い国が20カ国集まって開く首脳会議がフランスであり、その取材に行った時にちょうどギリシャのパパンドレウ首相が、ユーロ危機の原因をつくった国の総理としてやって来て袋だたきに遭いました。会議が始まる前にフランスのサルコジ大統領とドイツのメルケル首相に呼び出されて2人で面罵するわけです。お前は何ていうことをしてくれたんだと。ヨーロッパは1990年代、2000年代を通じて一生懸命、一つの通貨をつくって経済を統合しましょうと、一つの市場にして貿易を自由にしてみんなで成長しましょうという目標でやってきた。ところがギリシャは、歴代政権が粉飾決算を続けていた。こういうルールでなければユーロという通貨に入っちゃいけませんよという、GDP比でいうと3%の財政赤字額というのが上限だったのですが、これを4倍も上回るような数字を実は隠していました。

そこはやはり情報が共有されてない。情報が他の国と共有されていないと、うまくいっていないことに気付かない。情報が共有されていないと回らない典型的な失敗がユーロ危機だったのかなということを、藤嶋先生の話を聞いて、まず思いました。

ーきょうの話の中で皆さんと共有できそうなキーワードの一つが吉永先生の「リフレクション」。これは職場とか社会の中でも使っていけるということですか?

吉永:そうですね。失敗を恐れない風土をつくることは非常に大事。あえて挑戦する、失敗を恐れないということです。グーグルでも“Fail Fast”が重要だとされているそうです。まず失敗しろと、そこから何か示唆を得て次の行動に活かしていきなさいということを言っています。ただ、そこから何を学び取れるかということのために、やはりリフレクションというのは非常に大事だなと。

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その時に、新人はなかなかそれが振り返れない。経験を振り返るといっても実はとても難しいことで、経験をどう切り取るかということも含めて、熟達している者がその経験を客観的に見たときに初めて見えてくるものがあると思います。その経験の切り取りも含めて、自分だけでやっていては難しいところを、せっかく組織なので、それを見ていた同僚なり先輩なり上司なりが、それはどういうことだったんだということを、What? ー 何があったんだということと、そして、それはこの企業にとって、あるいは自分たちにとってどういう意味があるんだということをSo What? で考えて、さらにそれを教訓化するためには、どうやって次の成功体験に導いていくかという教訓化、一般化するということが大事だと思います。

ー教訓化というのは、具体的にはどのようなイメージのアクションなのでしょいうか?

吉永:企業の中でリーダーとして活躍された方は、よく「セオリー」なんてビジネス本なんかで言われるかと思いますが、そのセオリーに当たるんじゃないかと思います。こういうことが起きた時にはこうする。それを書き留めている方も実際にいらっしゃると思いますし、日々そんなことを書き留めておけないという場合には、それをシェアすることがとても大事。後輩、あるいは二度と組織の中でそういった失敗を犯さないためには、それをみんなで共有していくことが非常に大事だろうなと。

ー林さんの新聞社も大きな組織ですが、そういう仕組みは何かありますか?

林:新聞社の一番身近な失敗は間違いを書くことです。広義の誤報。レベルはいろいろありますが、小さいものになると、例えば人さまの年齢を一つ間違いました。でもこれは非常に失礼な間違いです。もうちょっとレベルの低いのになると、英字新聞ですと単語のつづりを間違いました。我々の対応では本来全部直なきゃいけないんですが、全部やっていると実は毎日何本も直さなきゃいけないということが起きる場合もあります。ですので、遅く出てきたニュースを処理するまでの時間がないと、どうしても処理のスピードに応じてミスが増えますし、人にもよりますし、そのあたりは気を付けようねということを定期的に言わざるを得ないですし、社内的にはそれなりの処理の手続きもあります。

しかしそればっかりやっていると、みんなが萎縮してしまう。例えば英字新聞部の一番の仕事は読売新聞の日本語の記事を英語にするという作業なんですが、いかに英語として読んで自然で味があってもっと読みたくなる文章にするかということに力を注いでいるわけです。そうすると、書き直しの作業というのが何回か出てきます。その過程でふっと間違えたり、抜けたりということがどうしても起きます。それをあまりうるさく言うと、「いい文章じゃなくて、じゃ出来てきたままやれよ」と、こういう不安を持つ人も出てきます。私の仕事は「まあまあ」とか言いながら、一生懸命毎日皆さんに仕事してもらうように雰囲気をつくることなんですが、毎日毎日がそういうことの繰り返しですので、ある意味システムがあるというよりは、そういう仕事だという風に言えると思います。

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ーきのうまでの話では、失敗に気付くタイミングも結構難しそうですが、学級運営で失敗に気付くのはどういうタイミングですか。

吉永:これは世界のリーダーもそうじゃないかなと思いますが、フィードバックをどう得るかということだと思います。学級の場合には対象は子ども、政治の場合には国民になるかもしれません。例えば子どもたちの言葉遣いがちょっと荒くなってきたなとか、そういうことをきっかけにしてつかまえて、要は自分の中にそれが引っかかるかどうかということが、すごく大事。その引っかかりが何なのかというと、何とかちゃんと何とかちゃんが今けんかしているっぽいぞとか、今は行事前で子どもたちがざわついているぞとか、そういう子どもたちの様子みたいなものを子どもからのフィードバックとして読み取って、それを子どもたちに、「今失敗しているんじゃない?」「今おかしいんじゃない?」と今度はこちらから子どもにフィードバックして、それを失敗経験として活かしながらやっていくということでしょうか。そのときに、成功のイメージを常に自分が持っているということが大事。この子たちにはどういう姿になってほしいかという成功のイメージがあって、そことのギャップを感じた時にそれが恐らく失敗であり、成長へのきっかけになる失敗経験なんだと感じています。

ー今の話からいくと、周りをウォッチする力が独裁者は高くなかったのかもしれないと思えたりしますが、いかがでしょうか?

藤嶋:それができる人がそのまま下降せずに権力を維持して、常に変わっていけると。変わっていける人は柔軟に適応できている、環境の変化に適応できている。また、よく分からないことについては信頼できる専門家を見つけるというのはすごく大事で、一見偏った政治的立場をとっているような場合でも実は要所要所はちゃんとした専門家で占めているとか。政権維持にはそれが大事なんですね。イメージと違って、重要なところでは、ちょっと自分とは考え方が違うかもしれないけれど、本当の一流の専門家を使っているというのは結構大事です。

ー林さんは国際社会の中で、フィードバックについて、どのように感じていらっしゃいますか。

林:一概に言うのは難しいかもしれませんが、民主主義の国においては、日本とかアメリカとか西ヨーロッパの国々においては、大統領とか総理大臣とか選挙で選ばれてくる人たちは世論調査の数字をものすごく気にする。それは、世論調査の数字が新聞、テレビ等々で出たり、最近ではフェイスブックの「いいね」の数とかを見て政策を変える、あるいは言葉を選んでメッセージを出すということを、今の民主主義の指導者たちというのは、かなりやらざるを得ない時代になってきているなと。権力の側も、有権者の側もインターネットで直接自分たちのメッセージを外に出すことができるように、かなりの国でなりました。我々の仕事は、彼らからしてみると情報の仲介人。仲介人の立場でない人たちから見ると、君たちは邪魔だという風に見えることがあるのではないかと。そうすると、そこで力に対するおごりというか、力に驕れるというものが表に出てきて、そこから自分にとって都合の悪い情報というものは排除するプロセスが始まって、藤嶋先生がおっしゃったような独裁の悪化のプロセスが始まる。これは必ずしも独裁国家じゃなくても、選挙で選ばれる国の政治家も陥りがちな問題だと思います。

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ー最後に、失敗と向き合うためのヒントを一言ずつお願いします。

藤嶋:政治学の中に「クライシス」という言葉があります。クライシスにはピンチや危機という意味もありますが、同時に運命の分かれ道、転換点という意味がある。つまり、危機の時に、ピンチの時にどのような選択をするか。Crisis, Choice and Changeという理論によれば、その選択によって後の展開が大きく分かれてくる。政治が大きく動くときには、「危機を転じて根本的な、前向きな変化を起こしていく」ということもよく見られます。ただ、攻めの姿勢も大切ですが、僕自身がよく思うのは、失敗というのはやはりきついものだと、個人にとって。まず受けとめて、しのがなきゃいかんよな、というのがあります。しのぐ時に何が支えになってくれるかと言えば、やはり友人や家族だったり、あるいは自分にとって好きなスポーツだったり、音楽だったり、映画でも小説でもいいですが、何かそういう支えとなるものがあって初めて失敗と向き合えて改善につなげられる、進歩につなげられる。だから、むしろ支えの大切さを強調したい。人間って、そんなに強いもんじゃないよということも同時に思いました。

吉永:私自身はずっと子どもと向き合うという非常にミクロな組織の中でやってきましたが、それを政治に置き換えても同じように、独裁者にならないためにフィードバックをするとか、失敗をいかにリフレクションして成長につなげていくかということに、話はずっとつながっていくんだろうなと感じました。ただ、大きくなればなるほどいろいろ仕組みは複雑になっていって、きっと新聞に書かれている記事や世論とか、そういうものをいかに取り入れていくかということのフィードバックは、ダイレクトに子どもとやりとりするというのとまた違って、ただそうやって真摯(しんし)に他者に向き合うということの大切さを非常に感じました。人間って失敗に向き合うことは非常に感情的にリスクがありますので、失敗を自分の中でもう一度見つめ直して、それをポジティブなイメージに転換していくことが必要だと思いますし、クラスもそうですが、そこで支えてくれるのは、くさい言い方ですけど、仲間、あるいは同僚であり先輩であり…。そういう他者との関わりの中で有効なリフレクションも促されますし、失敗をしてしまった時にそれを支えてくれる人がいるという、精神的な支えとなる他者との関わりということも、また大切だなと感じました。

林:私も毎日失敗しています。一番失敗するのは、「何だあの部長は」と思う人が1人増える度に一つ失敗を犯しているということです。それを気付くのはその瞬間の場合もあれば、しばらくたってからの場合もあれば、あるいは全然気付かずに他の人から聞いてということもあります。その時には、自分がその人をちゃんと見てないんだなという風にいつも反すうして反省します。それはリフレクションという言葉で今日教えていただいたわけです。にもかかわらず、毎日似たようなことをやっているんじゃないかなという自分の進歩の無さもまた現実。基本的にそういうことを犯す限りは、自分が狭量になっていたり頑固になっていたりということがあるのだなということを日々感じています。そういうことを積み重ねることで失敗の相対化というか、ちょっと距離を置いて自分で見て分析して、一つ一つの局面にそれぞれ冷静に対処できるようにということも可能になるのではないかなと思いました。

ーありがとうございました。きょうの話には「フィードバック」というキーワードがあり、まず周りにいる人たちに向けた観察力を高めることがフィードバック力を上げることにつながり、そこから今度はリフレクションに回っていく時のヒントが、政治と子どもという面から多少なりとも導かれたような気がします。皆さん、どうもありがとうございました。

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