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渋谷から日本と世界をもっとつなげる

2020年東京五輪・パラリンピックへ-院友たちの挑戦-

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ジェイノベーションズ代表、Japan Local Buddy代表  大森峻太さん(平25卒・121期法)

2019年9月20日更新

 2020年東京五輪・パラリンピックの開催を来年に控え、日本を訪れる外国人観光客の数は右肩上がりです。平成30年には改正通訳案内士法が施行され、インバウンド(訪日外国人客)関連事業も盛況となっています。院友の大森峻太さん(平25卒・121期法)は、國學院大學のお膝元である渋谷を拠点に、外国人旅行客向けに日本人ボランティアガイドをマッチングするサービスや有料ツアーの企画・催行、ガイドの育成、インバウンドマーケティングなどを展開。「国際交流で世界中がつながった先には平和がある」と強い思いを語ります。

おおもり・しゅんた 平成元年生まれ、30歳。神奈川県茅ケ崎市出身。國學院大学在学中、3度の海外留学を経験。大学卒業後はカナダに拠点を移し、1年半かけて海外を巡る。帰国後の26年、外国人旅行者とボランティアガイドをマッチングするサービスを始める。28年、インバウンド関連事業を中心に手がける「ジェイノベーションズ」を設立して代表に就任。ボランティアガイド団体「Japan Local Buddy」の代表も務める。事業の傍ら、メディアなどで留学やインバウンドに関する情報を発信している。東京都観光まちづくりアドバイザー。

地域の魅力は地元の人から

――外国人旅行者向けにボランティアガイドのマッチングサービスや有料ツアーなどを手がけるきっかけは

大森峻太代表(以下、大森) 大学時代や大学卒業後に海外を一人旅する中で、以前の留学で知り合った友人や初対面の方の自宅に泊めてもらったり、旅行者1人では行きにくいような場所に連れて行ってもらったりする機会に恵まれました。そこで気づいたのは、「地域の魅力を知るには地元の人と交流すること」でした。大学卒業後、1年半の海外渡航から帰国すると、東京五輪・パラリンピックの開催が決まっていて、たくさんの外国人旅行者が日本に来るようになっていました。彼らと地元の人をつなぐことができれば、日本のことをもっと知ってもらえるのではないかと考えたのが、きっかけの1つです。

 もう1つのきっかけは、大学2年の秋に國學院大學の学生を中心に立ち上げた国際交流サークルです。英語を熱心に学ぶ日本人学生の多くは「日本にいると英語を使う機会が少ない。もっと国際交流をしたい」と悩んでいました。一方で、外国人旅行者のほとんどは日本語がしゃべれません。そこで、外国人旅行者と英語を話したい日本人をつなぐサービスをつくろうと考えました。

――活動や事業は、どう広がりを

大森 マッチングサービスが軌道に乗るまでの時期に、「渋谷の街にいる外国人の手助けをしてみよう」と思いつきました。学生時代、友人との遊び場はたいてい渋谷の街で、渋谷駅前などで待ち合わせをしていると、外国人旅行者からよく道を尋ねられた経験がきっかけです。国際交流サークルの仲間だった院友1人と現役学生2人を誘い、「English Volunteer(英語ボランティア)」と手書きした紙を持って街頭に立ち始めたのが最初です。半年ほどするとメディアに取り上げられるようになり、地元の渋谷区などいくつかの自治体から「インバウンド関連事業を一緒にできないか」といった声をかけていただくようになりました。その1つが、渋谷駅前のハチ公前広場にある「青ガエル観光案内所」の運営です。こうした事業と並行し、ボランティアガイドの登録数や外国人旅行者からの依頼件数も増えるようになりました。そこで、法人化することを決め、「ジェイノベーションズ」を起業するとともに、ボランティアガイド団体「Japan Local Buddy」の代表にも就きました。

渋谷駅前のハチ公前広場にある「青ガエル観光案内所」

――ボランティアガイドと有料ツアーの違いは

大森 有料ツアーの開始は平成30年です。改正通訳案内士法の施行日である1月4日にスタートさせました。法律の改正に伴い、誰もが有償で外国人旅行者向けの観光ガイドができるようになり、事業に追い風となっています。30年4月には、渋谷区観光協会オフィシャルツアーも手がけ始めました。外国人観光客があまり行かない場所もガイドしています。当初は、私たちにお金をもらう価値があるのかと不安もありましたが、実際に始めると参加者からの満足度が高いことが分かり、自信がつきました。

 ボランティアガイドの登録者数は約2500人に上り、中にはプロとして通用する方もいます。おもてなしの気持ちは、ボランティアもプロも同じです。とはいえ、ガイドをする上でボランティアとプロの差をあえて挙げるならば、臨機応変さと語学力でしょう。この2つはプロに強く求められる資質です。加えて、参加者によるアンケートで厳しく評価された際に受け止められる強い精神力もプロには必要です。

世界に広がる友人の輪

――通訳ガイドの魅力とは

大森 大きく2つあると思っています。1つは世界を知ることができることです。世界を知ることは日本を知ることにつながります。私たちは日々、外国人旅行者に驚かれますが、そのときは「あなたの国では、どうなの?」と逆に問いかけます。また、日本についても尋ねられますから、知識が必要です。私は神道精神を教育に積極的に生かしている國學院大學の出身でありながら、神道について詳しくありませんでした。しかし、外国人旅行者を神社に案内する機会が多く、神道に関する書籍を読むようになり、興味が沸いてきました。

 もう1つは世界中の人と出会えることです。日本にいながらにして世界中に友人ができるんですよ。ボランティアガイドの中には、日本でガイドをした外国人旅行者と仲良くなり、海外へ行った際にガイドをしてもらったり、家に泊めてもらったりする人も少なくありません。世界中に友人の輪が広がっていくのは大きな魅力です。

――世界とつながる活動や事業から見えてくるものは

大森 世界は本当に多様だと感じるようになりました。文化も異なるし、自分では当たり前だと思っていたことが当たり前ではないこととして日々、起こります。ですから、どんなことも受け入れられるようになりました。インバウンドがこれほど増えると、日本全体も変わらざるを得ないのではないでしょうか。

――学生時代で印象に残っていることは

大森 先ほどもお話しした国際交流サークルの活動です。最盛期には國學院大學の学生だけでも100人を超える規模になり、大学の国際交流課にも活動を応援していただきました。留学生と日本人学生が集まり、旅行やゲームなどのイベントを毎月のように行い、留学生の出身国の料理を食べ歩いたこともあります。「自分たちが国際交流を活発にすれば、他の日本人学生も海外にもっと興味を持ってくれるはず」という思いでした。そういう環境でしたから、留学や海外旅行をする学生が多かったですね。

――留学経験者はたくさんいますが、自らの経験を活動や事業に生かせたのは、なぜ

大森 「違い発見力」のようなものが影響しているかもしれません。例えば米・ニューヨークで、私は自由の女神像の近くにあったシェアサイクルに関心を持ち、日本ではまだ珍しかった自転車を共有して利用するというシステムを調べてみました。多くの人は女神像に目を奪われ、関心を示さなかったでしょう。仮に関心を持ったとしても、調べるまでには至らなかったでしょう。一歩踏み込んで自分のものにしようとする姿勢が自分にはあるのだと思います。

「他人事」が「自分事」に

――本学のお膝元である渋谷で起業し、地の利は

大森 地元の方に「國學院出身」と自己紹介すると、皆さん、歓迎してくださいます。ガイド先として訪れる機会の多い神社へあいさつにうかがう際にも、親しみもって受け入れていただいています。ありがたいことです。

――急速に生まれ変わる渋谷への思いは

大森 渋谷の「自由さ」は変わってほしくないです。5年前、外国人旅行者の道案内を始めた際には、よく分からないであろう私たちの活動を地元の方は応援してくださいました。当時の活動を自由にできたからこそ、今の事業につながっているのです。渋谷だからこそ可能だったと感じています。これからの渋谷には、もっと自由で多様性のある街になっていってほしいです。

――今後の夢は

大森 海外を巡って世界中に友人ができたことで、世界中の出来事が「他人事」ではなく「自分事」になりました。海外でテロや災害などが起きたときには、誰かの顔が浮かぶようになったのです。日本の人と世界の人がもっとつながり、お互いが当事者意識を持てるようになれば、平和にもっと近づけると思うのです。「通訳ガイドをしたい」という人がもっと活躍できれば、国際交流のハードルはどんどん下がるはずです。現在は関東と関西が活動と事業の中心ですが、日本中に拡大させることが目標です。国際交流で世界中がつながっていけば、海外に目を向ける人も、日本に興味を持ってくれる人も増えるでしょう。その延長に平和があると願っています。

 

 

 

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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