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中国に渡って見えた「異文化」と「挑戦」

大学生交流事業に参加して

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櫻井杜乃さん(平31修・127期神専攻)、門間玲奈さん(日文3)

2019年5月28日更新

 独立行政法人国際交流基金日中交流センター(東京都新宿区)が年2回実施している大学生交流事業に、國學院大學から櫻井杜乃さん(平31修・127期神専攻)と、門間玲奈さん(日文3)が参加しました。日本と中国の文化交流を目的としたイベントを自ら企画立案して選考を通過し、今年3月、中国陝西省の省都、西安に他大学の学生とともに派遣された。海外への渡航は初めてだったという2人に、交流事業を経験して得たものについて聞きました。

「神道」で日本を伝えたい

――交流事業に参加したきっかけは

櫻井さん(以下、櫻井) 同じ神道学専攻科(専攻科)に参加経験のある学生がいて、「とても楽しかったので、ぜひ同じ体験をしてほしい」という誘いを受けたのがきっかけです。そのつながりで、門間さんや初めて会う他大学の学生とチームを組んで参加することになりました。

門間さん(以下、門間) 私は高校生の頃から留学に興味がありましたが、なかなか行動を起こせずにいました。現在、神職課程を履修していて、お正月に神社で巫女の助勤に参加したときに出会った専攻科や他大学の先輩方に留学の相談をしたところ、この事業に誘っていただきました。経験者がいたので心強く、良い機会なので参加してみようと思いました。

――渡航するまでは、どのような活動を

櫻井 私たちのチームは他大学の学生も含む5人でした。全員に巫女の奉仕経験があったので、「神に仕える人」を意味する「巫(かんなぎ)」にあやかって「かんなぎガールズ」というチーム名で活動しました。大学生交流事業には、全国から20~30チームがエントリーしたのではないでしょうか。チーム結成から約4カ月後に面接があり、企画のプレゼンテーションの結果、中国に派遣されるチームが選抜されました。私たちならではの分野ということで「神道」を思いつきましたが、中国の人に伝えるのも、理解してもらうのも難しそうなので、神道と絡めて分かりやすく日本の文化や歴史を知ってもらえるような企画を考えるのは大変でした。

門間 私は日本文学科で伝承文学を専攻しており、企画を考えている時期にちょうど授業で七福神の話を教わりました。七福神は中国、インド、日本の神様が一緒に祀られているということを知り、日中交流にうってつけのテーマだと思いました。七福神というコンセプトのもと、メンバーで意見を出し合い、日本の偉人7人を紹介しながら、さらに日本で流行している御朱印の要素を取り入れた「七福偉人祭」という企画が出来上がりました。具体的には、偉人7人それぞれのブースを設け、各ブースで御朱印をイメージしたスタンプがもらえるイベントです。

想定外のハプニングも

――準備をする上で大変だったことは

櫻井 日本に昔から根付いている文化を伝えるためにどのような企画が必要で、偉人とどのように掛け合わせてブースを作るのかということに、すごく時間をかけました。 その結果、千利休のブースではお茶を点てる体験ができ、甘い物が大好きだった夏目漱石のブースでは和菓子が楽しめるというように、7人の偉人のストーリーを紹介しながら、それぞれの偉人にゆかりのある和菓子や和装、かるたなど、日本の文化も楽しんでもらうという内容になりました。選抜のための面接では、言語も文化も違う人たちに伝えたいことを伝えられるのか、やったことがないイベントを成功させることができるのか、予算はどれくらいかかるのかなど、かなり具体的なことまで問われるので、内容を細かく詰めておく必要がありました。

門間 「明日から始められます!」と言えるくらい、しっかりとした内容の企画書を作らなければいけませんでした。そこで、必要な物品は現地で調達できるのか、日本から持ち込んだほうがよいのかということも、あらかじめ調べて決めておきました。それでも実際に現地に行ってみると、想定外のことはたくさんあって…。夏目漱石のブースでふるまう、どら焼きとわらび餅を調理する時間もしっかりと計算した上でイベント当日に臨もうとしていました。しかし、現地の大学院に留学している日本人学生から「それだと間に合わないよ」とアドバイスをしていただき、急きょ、イベント前日に現地の方にキッチンをお借りして、6時間ほどかけて調理するというハプニングもありました。

――現地でのイベントの様子は

櫻井 渡航や準備を含めて7日間の日程で、私たちは西安の陝西師範大学に派遣されました。陝西師範大学の日本語学科の学生に手助けしてもらいながら、イベントを運営しました。また、彼らの日本語授業を私たちが受け持つ時間もあったため、どういった内容の授業をするのかということについても企画書を作成しました。イベント当日は、陝西師範大学の学生や近隣住民らおよそ100人ほどが訪れました。「七福偉人」の7つのブースのうち、私は巫女装束や浴衣の着付けを行う小野小町ブースと、かるたを紹介する紫式部ブースを担当しました。特に着付けのブースは大盛況で、「自分が着せてもらうだけでなく、着付けてみたい」という方がとても多く、中国の方同士で着付けをし合うという交流も生まれました。

門間 私は源頼朝に追われた義経が奥州・平泉へ逃れるストーリーを題材に、謎解きゲームをするブースを担当しました。日本では地下鉄の駅などで謎解きイベントがよく行われていますが、中国ではあまりなじみがないため、渡航前に現地の学生と連絡を取り合い、中国の方にも楽しみながら義経の歴史を学んでもらえるような内容を考えるのに苦労しました。イベントの準備も当日の運営も、思いがけないことがたくさんありましたが、日本語学科の学生が熱心に手助けをしてくれて、「自分たちだけではできなかった」と強く感じています。イベントを通した文化的な交流だけではなく、中国の学生と個人的な親交を深めることができたことも、とてもうれしかったです。

挑戦で得た新たな目標

――2人にとっては初めての海外渡航。イメージとのギャップは

櫻井・門間 すごくありました!

櫻井 歴史上では日中関係が上手くいかない時期もありましたが、出会った中国の学生たちは日本が大好きで、私たちととても仲良くしてくれました。街並みも想像と違っていて、何車線もある大通りがあれば、狭い路地では歩行者と乗用車と自転車がぎゅうぎゅうになって通っていて、人間同士の距離が近く、大らかな国民性なのかなと思いました。

門間 5車線ほどの大通りは横断歩道がないのですが、現地の人たちは平気で渡っているので驚きました。日本人の感覚では怖いと感じるのでしょうが、中国人にとっては普通のこと。中国という異国の地で生活してみることで、「ここでは私たちが異文化なんだろうな」と文化の違いをすんなり受け入れることができました。

――今回の経験から、見えたものは

櫻井 挑戦すること、そして人とのつながりの大切さです。今回、経験者の方が縁をつなげてくださって、「かんなぎガールズ」のメンバーに出会い、貴重な経験ができましたし、現地の方々にたくさん助けてもらってイベントを成功させることもできました。仲良くなった中国の学生とは今でも連絡を取り合っていて、彼らが日本に来るときには、私たちが手助けをしてあげたいと思っています。中国という国や、異文化に対するイメージも、実際に行ってみないと分からないことがたくさんあったので、挑戦してみてよかったなと実感しています。

門間 私も、挑戦することの大切さを感じました。一歩を踏み出すのはとても勇気がいることですが、今回、挑戦してみて勉強になることがたくさんあったのはもちろん、「できることはやってみたい」という気持ちになりました。現地の日本語学科の学生は日本文化や日本語について知りたいという気持ちがとても強いのですが、私には知識不足で教えられないことがたくさんあって、もどかしい思いをしました。そこで、今年度から「日本語教育」を履修しています。やってみようと思ったことに挑戦してみれば、必ず何かにつながると思います。

――ありがとうございました

 

 

 

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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