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世界で唯一の学びを次代に

変化する社会に求められる寛容さ

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神道文化学部長 西岡 和彦

2019年5月20日更新

 國學院大學創立120周年を契機として、平成14年に文学部から独立して開設された神道文化学部。皇典講究所から受け継ぐ神職養成と神道学・宗教学の研究を専門とする世界でも類を見ない学部の舵取りを任されることになった西岡和彦学部長は、日本社会や神社界を取り巻く環境の変化に迅速に対応することの重要さを訴えるとともに、「神道精神と、さまざまな学びを受け入れる『寛容さ』を堅持したいと思っています。そのために、学生には日本文化を背負う立ち位置をしっかり身につけてもらいたい」と強調する。西岡学部長に今後のビジョンを伺いました。

日本文化背負う立ち位置を身につけて

 神職養成と神道学・宗教学の研究を専門とする神道文化学部は開設から17年目。このような学部は日本では國學院大學にしかありません。つまり、世界でここだけの学びができるのです。開設当初は「10年が勝負」とされていましたが無事に乗り越え、20年へと近づいています。ここで歩みを緩めるのではなく、その先の30年をも見据え、しっかりと足腰を鍛えて足固めをしたいですね。そのためには、時代に即して動くと同時に神道精神にある「寛容さ」を堅持しなければなりません。

 「寛容さ」とは、さまざまな学びを受け入れるのにも必要ですが、何でも受け入れるのではなく、しっかりとした理念を堅持した上で受け入れることを理想とします。最近はグローバル化が注目されていますが、日本に暮らす者としての立ち位置が大事になってきます。本学部の学生には学びを通じて日本文化を背負う立ち位置を身につけ、文化や宗教を寛容的に受け入れる人間になってもらいたいと願っています。

 本学部に入学する学生の3分の1は神社の家柄である社家出身で、3分の2は一般家庭の出身者。皆、学びに対する志向性がかなり高いと感じています。神職を目指す学生には資格に必要な祭式や祝詞など特殊な授業もありますが、できるだけ幅広く歴史・文化・宗教を勉強して将来の神社界を担ってもらいたいですね。また、本学部での学びは多彩で、神職・研究者はもとより一般企業に就職しても生かしてもらえるはずだと確信しています。

環境変化を受け、学びの環境を整える

 本学部では國學院の母胎である皇典講究所の流れを受けて神職養成を続けていますが、少子化や高齢化の進行で地域の神社を維持する後継者の育成が難しくなっています。かつて10分の1程度だった女子学生が3分の1まで増えている現状は、神社界もひしひしと感じているはず。男性神職が多い中、女性神職の増加によって、さまざまな課題も出ていて、学びの場にも影響が予想されます。祭式の作法などを教える場合、手取り足取り指導しなくてはなりません。例えば、拝礼の作法にしても(腰の角度が)15度、45度、60度、90度とあり、最初のうちは実際に背中や腰に手を当てながら指導する場合もあるのです。女子学生にしてみれば、女性教員に指導される方が気兼ねなく学べるのではないでしょうか。

 このような神道界を取り巻く環境の変化を受けて本年度、女性の専任教員を採用しました。大学は学生の声を真摯に聞く必要があると思っています。女性の専任教員採用も女性の側に立った教育環境を整えるためなのです。変化に対応した環境整備によって、神社界のリーダーとなるべき人材を育てることが本学部の務めだと信じています。

 しかし、本学部の責務は神職養成だけに留まりません。本学部を卒業して神職となる学生は全体の6割で、4割は研究者・教育者や他分野へと進んでいます。そして、その4割の中に本学が築き上げてきた研究の後継者が含まれているわけです。他にはない学部である以上、本学部の未来を担う後継者を自ら育てなければ國學院の理念が堅持できなくなってしまいます。研究の後継者をきちんと育て上げることも本学部の責務だと思っています。

 本学部は神道学と宗教学の2コース制を採用し、学生と教員の距離が近い環境となるよう少人数クラスによる教育を実践しています。それによって多くの成果を上げてきたのですが、学生の志向は多様化しています。もっと研究したい学生にはそれに応じたカキュラムを作ってあげるとか、神職として高度なスキルを修得したい学生には今のカリキュラムを前提によりケアできるように改良するとか、個々の学生に対応した形が作れるのではないでしょうか? そこに本学部を変えていく工夫の余地があると思っています。

出雲大社に学ぶ時代への対応

 若い頃は野球観戦をしたり観劇をしたりもしましたが、専任教員になってからは旅先で各地の神社に参拝するぐらいですね。それも教材のために写真を撮ることが多くて・・・趣味というより仕事になっていますね(笑)。

 出雲大社の研究を専門としているので島根に行くことが多いのですが、専門としているだけに「ここがお勧め」と紹介することは難しいです。しかし、講演などでは「出雲大社を研究すれば、神道の研究や日本史の研究はそのままできる」と伝えています。というのは、出雲大社が日本の歴史から外れたことはないからです。伊勢の神宮ほどではないにしても、必ず日本の歴史に登場します。出雲大社が神代から変わることなく今に存在し、信仰が守られてきたと考える人が非常に多いですが、そんなことはありません。他の神社と同様に出雲大社も戦国時代に衰退しました。しかし、江戸時代になると江戸に担当者を常駐させ、支援を受けるために幕府の役人と密接な関係を築き上げ、今のような姿にまで盛り返したのです。時代への対応がきちんとできた神社が生き残るということですね。出雲大社はまさにその良例だといえます。時代に即して変化するという点では、学部の運営にも繋がる部分があるのではないでしょうか。(談)

 

 

 

西岡 和彦

研究分野

神道思想史、神道神学

論文

『天日隅宮考』と出雲大社(2022/12/15)

自重館文庫成立史—北島国造家と垂加神道—(2021/03/31)

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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