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グローバル力は、本物にふれる感動体験で育つ。

SHIBUYA LIVE! vol.2 山種美術館

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國學院大學・学長(当時) 赤井益久

2015年7月13日更新

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(左)山種美術館館長 山﨑 妙子
(右)國學院大學学長 赤井 益久

130年以上にわたり「日本を学ぶ」教育を実践してきた國學院大學。同大学の赤井益久学長と、国内初の日本画専門美術館である山種美術館の館長で公益財団法人山種美術財団理事長も務める山﨑妙子氏が、日本文化の発信の重要性について語り合った。日本画や国学に興味のある人はもちろんのこと、グローバル人材を 目指すビジネスパーソンにとっても大いに参考になるはずだ。
制作・東洋経済企画広告制作チーム

新たな価値を生む大学と美術館の連携

赤井 本学の「東京・渋谷から日本の文化を国際発信するミュージアム連携事業」は、國學院大學博物館、山種美術館、渋谷区、東洋文庫の連携事業であり、平成27年度(2015)文化庁「地域の核となる美術館・歴史博物館支援事業」にも採択されました。

実は、私は毎日、貴館の前の道を歩いて大学まで通っています。まさにお隣さんとも言える距離であり、以前から何か一緒にできないかと考えていました。貴館には、フォーラムやイベント、特別展など幅広い連携事業に協力していだき、参加者からも好評です。

山﨑 当館は、創立者の山﨑種二の「美術を通じて社会、特に文化のために貢献したい」という理念のもと、日本で初めての日本画専門の美術館として1966年に開館し、来年には創立50周年を迎えます。国の重要文化財を含む約1800点のコレクションは、近代日本美術史を通覧できると自負しています。連携事業を通じ、当館に初めて来館されたというお客様も多く、感謝しています。

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橋本雅邦《日本武尊像》(山種美術館)の前にて

コアを磨き世の中に求められる存在へ

赤井 いま美術館や博物館では来館者誘致が大きなテーマの一つになっています。その点で、早くからさまざまな施策を推進しているそうですね。大学も黙っていても、学生が集まる時代ではありません。個性ある教育と研究ができなければ存在感がなくなってしまいます。そのためにも、國學院大學とはどのような大学なのかを広く伝え、理解してもらうことが大事だと考えています。

その一つとして、私が重視しているのは、「日本を学ぶ」という本学ならではのコアを磨き、学生に本物の体験ができる機会を提供していくということです。本学の博物館は無料で開放しており、重要文化財をはじめ、展示物はそのほとんどが本物です。また、講義は再現性のないライブ、学問は知のエンターテインメントだと考えており、教員にもそのつもりで講義をしてほしいと話しています。本物の体験こそが、共感や感動を生み出していくと確信しています。

山﨑 美術館においても、かつてのように、美術鑑賞の趣味のある方だけご覧くださいという時代ではなくなっています。

当館は2009年に現在の地に新築・移転しました。建築の際のコンセプトである「上質なおもてなし」、「今還る場所」に沿って、靴音が響かない床材の使用、日本画の素材がよりよく鑑賞できる照明といった館内への工夫はもちろん、渋谷の立地にあった外観設計なども意識しました。

このほか来館者に喜んでいただけるようなイベントも多数行っています。たとえば落語家や音楽家、華道家元など、異なる分野とのコラボレーションをすることで、日本画の新たな魅力や価値を提示していく取り組みなどです。

また私自身も、SNSを活用した情報発信を積極的に行っています。日本画だから国内の方だけに向けて、という姿勢ではなく、日本画だからこそ海外の方へグローバルに、という思いで所蔵品や展示室の画像を、ネットを通じて紹介しています。

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山種美術館では、日本文化をより広く発信していくために、海外からの来館者に向けた外国語(英語・フランス語)ガイドツアーも実施

グローバル時代だからこそ日本を知る必要が

赤井 グローバル化という言葉を聞かない日はありませんし、グローバル人材の育成も大学の役割の一つだと感じています。外国語が堪能で、積極的に海外に出て行くような人材。私はそのような人をプッシュ型人材と呼んでいます。しかし、それだけでなく、自国の文化を知りその良さを自分の言葉で発信できるプル型の人材育成も重要だと考えています。つまりインバウンドを推進できるような人材です。多様な価値を受け入れるためには、まず自分のアイデンティティ、すなわち日本語や日本文化を知っていることが不可欠なのです。

山﨑 当館でも外国語によるガイドツアーを行っていますが、まさにそのとおりですね。実は、今日一般に使われている「日本画」という名称は、明治以降に、西洋から伝えられた油彩画と区別するために生まれたものなのです。言い換えれば「自分とは何か」を示す言葉の一つが「日本画」だったわけです。

赤井 そのお話は、まさに「国学」にも通じます。幕末や明治維新のころはわが国がこれまで経験したことのないグローバリゼーションの時代でした。外国の学問が押し寄せる中で、日本古来の思想を尊重する「国学」を研究するために、本学の前身である皇典講究所が創設されたのです。

渋谷に根付き今後も本物を発信していく

赤井 また國學院大學は、神道精神を研究・教育の理念としています。「産土神(うぶすながみ)」は、土地や、その土地に住む人々を守ってくださる神さまです。神道ではずっと、このような土地の神さまを大切にしてきました。

「地域の核となる美術館・歴史博物館支援事業」についても、こうした精神と親和性があると考えています。また10年以上前からキャンパスのある渋谷の街を文学、歴史、社会、宗教など、多様な視点から考察する「渋谷学」を本学が展開している理由もそこにあります。社会貢献、地域貢献を重視している貴館と相通ずる部分が多いですね。地元に働きかける取り組みも進めていると聞きました。

山﨑 はい。当館でも、近隣の小学生を休館日にお招きした特別鑑賞会のほか、自治体や文化センターと協力した社会人向け特別講座なども活発に行っています。

赤井 日本画をはじめとする日本文化を都心の渋谷から発信していくことで、企業や人材が国際競争力を高めていける一助になっていきたいと思います。引き続き、互いに信念を持って本物の「学問」と「展示」に取り組んでいきましょう。

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先人たちの膨大な知識と知性を記憶する貴重史料の数々。國學院大學博物館は先人たちの「知」を呼び覚まし、新たに鍛え上げた「知」を国内外へ発信する

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東洋経済7月13日発売号
タイアップ記事掲載

 

 

 

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