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日本人らしさを大切に守り「今」を生きる

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國學院大學・学長 赤井益久

2017年1月9日更新

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(左)中島精太郎(なかじま・せいたろう)明治神宮 宮司
(右)赤井益久(あかい・ますひさ)國學院大學 学長

國學院大學の学長と明治神宮の宮司。刻々と変化する渋谷に拠点を構える2人のリーダーがグローバル時代を生きる人々に呼びかけた。「今こそ、日本人の本質を大切に」──
制作・PRESIDENT

永遠の森づくりと共通する人づくり

赤井 本学ではキャンパスがある渋谷の街を社会・文化・民俗・宗教など多様な観点から考察する「渋谷学」に取り組んでいます。繁華街と文教地区が共存する渋谷は、実にユニークなエリア。そして70万平方メートルもの代々木の杜をたたえた明治神宮の存在感も絶大です。

中島 明治天皇、昭憲皇太后を奉祀する神社のため全国約40カ所の候補から選ばれたのが、この地でした。しかし当時、一帯は畑地や荒れ地。代々木の杜と呼ばれる鎮守の杜は、10万本の献木と、のべ11万人に上る青年たちの勤労奉仕によってつくられた人工森なのです。

赤井 1920年に明治神宮が創建され、約100年後には人工林が自然の森になる、つまり循環的に成長する永遠の森となるよう、綿密に考えられた計画と伺いました。

中島 はい。当時、伊勢神宮や日光東照宮のようなスギ林の形成を推す声もありましたが、林学者たちが関東ローム層にはクスやシイなど照葉樹が適していると判断し、さらに多様な樹木を配して、自立した森として生き続けるように設計したそうです。

赤井 命が尽きた葉や木も次の命の糧となる。将来を見据えて、「今」を生き、活かすことは教育にも通じます。

中島 ええ。当時の人々は自ら森の完成を目にすることを望みませんでした。それは未来に委ね、「今」なすべきことに一心不乱に勤しんだわけです。神道で「中今(なかいま)」といいますが、人は遠い過去から無限の未来へつながる「今」に生かされている。「今」を精いっぱい生きるべきなのです。そして子孫である自分がいつか祖先になる。その連続性に大きな価値を覚えますね。

赤井 当時の人々の精神性に、私たち大学人もならわねばなりません。在学期間の「今」の連続のなかで数十年もの未来を見据え、学生たちに生きていく力の種を授けることで、個性を輝かせ、社会の中核を担う、自立する人材として送り出したい。そんな教育、人材育成を中期計画に沿って実践しています。

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國學院大學が取り組む「渋谷学」は一般にも公開され、講演だけでなくフィールドワークを交えながらも展開している。(写真は平成27年11月開催時の様子)

主体性を保持した寛容性と謙虚さを

中島 「中今」は、この言葉をご存じなくても、どなたでも意識していることなのだろうと思います。それは、あらゆる日本の文化や考え方に息づいているといえるでしょう。四季に恵まれ、自然に対し畏怖の念を抱くなかで育まれてきた、日本人独特の感性といってもいい。

赤井 國學院大學の教育・研究活動の基礎にあるものも、まさにそうした日本人らしさ。特に私たちは「日本人としての主体性を保持した寛容性と謙虚さ」の重要性を説いています。グローバル化が進展しても、この日本人らしさは大事にしたいものです。また、私はよく学生たちに「グローバル化に対応するには時間軸と空間軸の認識が必要」という話をします。人は過去に学び、よりよき未来を目指して「今」を生きるほかありません。「中今」という日本人の感性を大切にするとともに、日本や自分自身の立ち位置を認識して物事を考え、自ら行動する力が欠かせません。

中島 明治神宮もグローバル化の潮流を受け、海外からの訪問は急増しています。合理的・論理的とされる文化圏の方々も、日本の感性に心ひかれるのでしょう。かつて米高官が参拝された際、その理由を「日本の伝統と文化に敬意を表すためお参りした」と語っていました。日本文化について、私が「その基層には相手の異質性を慮り、和らぎを重んじる考え方がある。すなわちバランスとハーモニーです」とお話ししましたら、高官は「私の外交も同じです」とおっしゃっていましたね。

伝統を踏まえて新しさを求める

赤井 日本にとって史上最大のグローバル化の波はやはり明治維新でしょう。そのなかで、先人たちはさまざまな軋轢(あつれき)を感じながら、近代化と日本人の本質の保持とのハーモニーを追求しました。そこで欧米の思想や体制を導入する一方、日本の古典を研究するため、本学の母体である皇典講究所が創設されたわけです。

中島 そうでしたね。明治天皇が詠まれた和歌の一つに「いそのかみ古きためしをたづねつつ新しき世のこともさだめむ」とあります。温故知新を大切になさった。私たちも伝統を踏まえつつ時代に合った神社の役割を果たしたいと思います。

赤井 本学も、故きを温めて日本人の本質に触れる「日本文化体験型授業」など、独自の取り組みを行っています。あわせて最初にご紹介した「渋谷学」では、街の最新トレンドなども積極的に取り上げ、温故知新を実践しているところ。そうした体験が、これからの日本を形づくっていく人材を育てると考えています。本日はありがとうございました。

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人は遠い無限の過去から遠い未来へつながる「今」に生きている(左:中島宮司)
日本人らしさの一つは主体性を保持した寛容性と謙虚さ(右:赤井学長)

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