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強みを伸ばし人文・社会科学系の標に

赤井学長 2期8年を振り返る

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学長 赤井 益久

2019年3月15日更新

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 東日本大震災に見舞われた直後の平成23年4月に就任して以来、「國學院ブランドの確立と強化」に力を注いできた赤井益久学長。研究教育環境の充実に取り組みながら、教育目標として掲げた「主体的を持ち、自立した『大人』の育成」に向けて「遮二無二走ってきた」。今年3月末の退任を前に、2期8年を振り返った。

就任直前に「3.11」

――学長就任早々、震災対応を余儀なくされました

 発生した3月11日時点は副学長でしたが、学長就任予定者として対応に当たりました。その年の卒業式、入学式は中止せざるを得ませんでした。余震があり、大勢が一堂に会するのは危険と判断したからです。電力制限から渋谷キャンパスの1号館は使わず、このため授業も変則でした。1年目は震災対応で終わり、2年目は創立130周年記念事業に注力。やりたいことに取り組めるようになったのは3年目からです。

――國學院大學の将来像を考える5カ年の中期計画「21世紀研究教育計画」にかかわってきました

 副学長・理事に就任した平成19年度からの第2次計画を任されました。14年度から始まった第1次計画は、神道文化学部の開設や渋谷キャンパス再開発などの個別事業計画にすぎませんでした。大学として対応できるようなものではなく、担当理事として『包括的、中長期的に考える必要がある』と訴え、次期(第2次)から研究教育開発推進に関する指針を、若い職員も加わって議論して作り上げました。

――どういった内容ですか

 國學院の使命として『3つの慮(おも)い』を掲げました。伝統と創造、個性と共生、地域性と国際性という3つの調和です。『慮』という字を当てていますが、『慮(おもんばか)る』は神道精神の本質だからです。日本人としての主体性を保持した寛容性と謙虚さ、つまり相手の立場を慮りながら自己主張して調和を図るということが求められるのです。一方、3つの調和を支える『5つの基(もと)い』を設定。教育、研究、人材育成、国際交流、施設整備という5つの基盤を整えることにしました。

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ブランドの確立へ

――本格的に携わった第3次で打ち出したかったことは

 3つの慮いと5つの基いに加え、両者をつなげる将来の在り方として『建学の精神を生かした個性ある教育と研究の実現』『日本社会の中核を担い、グローバル化する時代に貢献できる人材の育成』『國學院ブランドの確立と強化』を打ち出しました。大学の個性化とそれによる認知度向上を図るのが目的です。これらは29年度からの第4次でも引き続き注力することにしました。第3次、第4次で國學院の将来像を示す計画を整備しました。具体的に実行していくことで國學院は間違いなく発展していけると確信しています。

――ブランド作りを意識した理由は

 18歳人口の減少やグローバル化の進展など大学を取り巻く環境が激変する中、私立大学が生き残るには建学の精神を旗幟鮮明にして個性を理解してもらう必要があるからです。130年超の歴史と伝統があるにもかかわらず、一般に広く大学の個性が知られているかというと疑問符が付きます。一方、早稲田大や慶応大はどんな大学か具体的に分からなくても『知っている』と答えるでしょう。入学を志願する高校生や学生の就職先となる企業などから選ばれるにはブランドの確立が不可欠なのです。

――人文・社会科学系を軽視する風潮もあります

 文部科学省が27年6月に全国の国立大学に通知したいわゆる「文系不要論」は大きなインパクトを与えました。しかし人文・社会科学より実学にシフトすることは学問の進展に大きなマイナスとなるうえ、人材育成にも結び付きません。考える力が習得できないからです。國學院大學には人文・社会科学系の学部しかありません。だからこそ第4次計画で『人文・社会科学系の標(しるべ)となる』ことを定めました。日本の歴史や文化、宗教といったこれまでの研究実績を礎に強みをさらに伸ばし、他大学のモデルになる努力を惜しまないとの思いがあります。

――ブランドを確立するために取り組んできたことは

 学生の質の向上に尽きます。そのために幼稚園から高校、大学まで法人一体の『オール國學院』で人材育成に取り組み、一貫教育の環境を整えていきます。第4次計画で法人全体の計画を策定したのもそのためで、大学は教育目標として『主体性を持ち、自立した『大人』の育成』を掲げました。國學院ブランドを創るのは卒業生だからです。そのためには質の保証、つまり学生の質を社会が求める水準まで高めなければなりません。『採用した学生はよく働く』という企業との信頼性を構築できれば『次も採用』という好循環を生み出せます。

授業は一期一会の真剣勝負

――質を保証するための教育は

 人生100年時代を迎え、学生は『どう生きるのか』を考えなくてはなりません。そのヒントを与えるのが大学の役割ですが、学生の志向性は一人一人違います。そうした中で生き方のヒントを与えるため、チョーク・アンド・トークを基本に学生のノートを取らせる授業を展開、学び方にアクティブラーニングを取り入れています。また27年度から教学マネジメントと教学の一体改革を図り、教育の質の保証に努めてきました。具体的には教学ガイドラインを策定し、3つのポリシー(卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受入れの方針)に基づく教育の実践・検証を始めました。

――学び続けることが大事です

 授業は真剣勝負でありライブです。二度と同じ授業はなく、まさに一期一会。そのありがたみを学生が理解すれば勉強します。だからこそ学生は大学時代の4年間を大切に使ってほしいし、成長を求める学生を手助けする使命を負う大学には4年間育てさせてほしい。『啐啄同時(そったくどうじ)』という言葉があります。雛が卵から生まれようとするとき殻の中からつついて音をたてます。このとき親鳥がすかさず殻をついばんで破り、雛が生まれます。この親子の関係は大学に任された人材育成につながります。また卒業式に『学び続けなさい』と話しています。社会人になっても勉強は続くからです。

――キャンパスを構える地元との交流にも積極的に取り組んでいます

 地元・渋谷区内の企業トップと対談を続けました。企業のブランド作りを伺うのが目的の一つでしたが、企業も腐心していることが分かりました。またサッポロホールディングス、あいおいニッセイ同和損害保険とは包括的連携協定を結びました。地域の発展と若年層の育成につながるプログラムに取り組んでいます。一方、地域連携では渋谷区との間で29年7月、協働して地域の社会的課題を解決していくための新しい公民連携制度『シブヤ・ソーシャル・アクション・パートナー協定(S-SAP)』を締結。学生がが社会の抱える課題に向き合う機会が増え、多くの刺激を受けています。

研究の集大成を

――研究者、教育者としてこれから取り組むことは

 20年間、大学の中枢にいました。学長として8年間の任期を全うしましたので、残された時間はライフワークの研究である中国の古典文学、古典語法、特に唐代の詩歌と小説について集大成に取り組みます。また、これまで大学中心の生活を送り家族をおろそかにしてきましたので、与えられた時間を自分の研究に加えて不慣れな家族サービスにも使いたいと考えています。

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赤井 益久

研究分野

中国古典文学、中国古典語法

論文

「伝奇と説話-白居易をめぐって―」(2018/12/28)

「玄宗と楊貴妃の物語を伝えた『場』」(2017/11/30)

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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