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最先端技術導入ではなく、あるものを活かす企業課題解決が生まれた理由 株式会社WOWOW×國學院大學【前編】

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経済学部特任助教 齊藤光弘

2019年3月4日更新

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 学生たちが秘めている柔軟な発想力を、実際の企業の課題解決へと結びつける。「言うは易く行うは難し」という言葉そのものに思えるチャレンジングな試みが、2018年前期、経済学部経営学科の授業で行われた。
    齊藤光弘・特任助教が中心となり、BS・CS放送においてドラマや映画、スポーツ、エンターテイメントを放送している株式会社WOWOWと提携して進められた『経営学特論:ビジネスデザインⅠ』の授業。WOWOWマーケティング局・冨澤律子さん、そして最終プレゼンで優勝したチームから黒澤京子さん(経済ネットワーキング学科2年生)、福富健功さん(経済学科2年生)、さらには授業の補助にあたったFA(ファシリテーター&アドバイザー)である寺尾雅人さん(経営学科3年生)を加えた5人で、充実した半期の取組みを振り返った。教育現場、課題を抱える企業、多くの人にとってのヒントが、この座談会に詰まっている。
     
 
 
 ―「経営学特論:ビジネスデザインⅠ」と名づけられた今回の授業には、どのような意図があったのでしょうか。
 
齊藤: 近年は大学教育においても、一方的な講義形式の授業ではなく、学生が主体的に物事を考え学んでいく、アクティブラーニング型の授業が重視されるようになっています。本学、および経済学部でも力を入れていまして、この授業も「課題解決型授業(PBL:Problem-Based Learning)」という形式にしています。
    
その上で、経済学部経営学科でビジネスデザインを扱うにあたって、学外で面白い活動をなさっている企業さんと一緒に授業を行えないか、と考えました。今まさに現場で懸案事項となっている課題をいただいて、学生が考えていく、というスタイルですね。
   
そこで思い浮かんだのが、以前から友人だったWOWOWの冨澤さんでした。普段からすごく楽しそうに仕事をされていて――自分がやりたいこと、想いをしっかり形にしていくWOWOWさんの社風に誇りを持っていらっしゃったので、学生たちにとってもロールモデルとなる企業だと思って、お声がけしたんです。すぐに「面白いね!」と賛同してくださいました。
 
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冨澤: 私はかつて人事部で人材育成や教育研修の担当をしておりまして、その時に齊藤さんと知り合ったんです。一昨年、マーケティング局に移動になり、いわゆる現場の仕事をするようになったのですが、今回こういったお話をいただいて、現場の課題を一緒に解決していくという取り組みは面白いな、と考えました。
 
もちろん、企業としての人材育成や社会貢献といった文脈で関わっても興味深い取り組みにはなったと思うのですが、双方の取り組む姿勢が大きく変わってくるとも思います。あくまで現場の課題に集中して取り組む、というプログラムでご一緒できたのが、結果的にもよかったのではないかと感じていますね。
 
 
 
―双方にとって新鮮な取り組みだったと思うのですが、どのように課題を設定していったのでしょうか。
 
齊藤: 学生たちの学びが深まるのはもちろんのこと、WOWOWさんにとっても、学生たちが彼らなりの視点で考えた結果が今後に生かせるようなものになってほしい。その意味でしっかりwin-winの関係性になるよう、事前に何度もミーティングを重ねて、課題は設定しました。
 
未来のメディア像、ビジネス像をデザインしていくうえで、具体的には「近年の若者のライフスタイルの変化、およびICT(情報通信技術)の変化を踏まえながら、これから若い世代が思わず使いたくなるようなWOWOWの新しい取り組みを提案せよ」というものになったんです。
 
 
冨澤: 課題の設定に関しては、かなり考え抜きました。あまりにも狭い領域に限定してしまうと学生さんたちの思考が広がりませんし、かといって丸投げのような形で大きな課題を放り投げてしまうと、皆さんどちらの方角に向かっていったらいいのかわからなくなってしまう。そのバランス感覚に関してはとても悩んで、相談させていただきながら、先ほどのテーマに落ち着いたんです。
 
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―なるほど。実際に受講された学生さんたちは、どのような意図で履修を決めたのでしょうか。
 
福富: それまでの自分にとっては、企業と関わる機会というと、インターンシップぐらいしかないというイメージを抱いていました。その中で友人から「こんな授業があるよ」と教えてもらいまして。この授業に参加すれば、リアルな企業の“中身”に触れられるのではないか、と思って参加しました。
 
 
黒澤: 私は、学部の1年全体が参加したプレゼン大会がきっかけでした。自分としてもすごく力を入れていたんですが、決勝で優勝を逃してしまって……「もっと自分のスキルを上げたい!」と思って、プレゼンの機会がたくさんあるというこの授業を履修したんです。 
 
また、ここにいらっしゃる寺尾さんのように、自分たちもFAとして授業補佐にあたっていますが、やっぱり後輩たちの役に立つ存在にもなりたい。この授業で学んだ知識や経験が生かせないかな、と思ったんです。
 
 
寺尾: FAというのは、授業において、良い意味で異質な立場なんです。先生と一緒に教壇には立っているのですが、3年生という学生の立場でもある。学生目線も持ちながら、先生と受講生の橋渡しのような役割を担っていくんです。自身も一学生として、WOWOWさんという実際の企業とのやり取りの中で、学んでいくことが多い時間でした。
 
 
 
―授業への最初の関わり方自体が、既に皆さん共に主体的だったわけですね。

寺尾: 学生たちからも率直な意見がポンポン飛び出してくるので、面白かったですね。それらの意見が整理されるようにうまく誘導していく、という点でも、FAとして非常に勉強になりました。

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―4月に授業が始まってすぐ、課題を提供する企業がWOWOWさんだと伝えられ、学生さんたちは月末にかけて調査をして、企業の実態をまとめた「ファクトブック」を作成。そこから課題解決の議論へ、という流れだったようですが、授業の進め方で留意されたことはありますか。

齊藤: 私が受け持つクラス以外にも、あと二人の教員がそれぞれ1クラスずつ、計3クラスに分かれて授業を行ったんですが、最初のファクトブックのプレゼンと中間発表、そして最終報告に関しては、WOWOWさんから各クラスに2名ずつ担当についていただいて、フィードバックをしていただいたんです。そこで重要なのが、アクティブラーニングを設計する側の態度です。学生たちの主体性を引き出さなければいけないので、教員や企業の皆さんなど、関係する大人たちが「これは間違っている」だとか、「こちらが正しい」などと言ってしまうと、学生たちはその“正解”に向けて思考を寄せていってしまいます。
 
知識を伝える「ティーチング」ではなく、学生たちに問いかけ、彼ら自身がどういう意図でそのアイデアに至ったのか、何が見えていなかったのかを考えさせる――「コーチング」こそが必要です。学生たちのアイデアを膨らませていただけるように、担当いただくWOWOW社員の皆さんには、事前にコーチングの研修をさせていただきました。
 
 
冨澤: ダメ出しをするのではなくて、学生さんたちのやる気を引き出していく、ということですね。どうやったら次につながるフィードバックができるのか、事前に齊藤さんに研修をしていただいたんです。今回、私含め6名の社員で授業に参加させていただいたのですが、他の若い社員はまだ部下がいないものもおりましたので、企業側としても良い学びをさせていただきました。
 
そして実際に授業に取り組んだのですが、そこで出てきた学生の皆さんの指摘やアイデアが、まさに現場感に満ちた、素晴らしい“生の声”だったんですよ!
 
 
―予想以上の盛り上がりがあったわけですね。学生たちのビビッドな“生の声”、ぜひ後編で伺わせてください。
 
 
 
 

 

 

 

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