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折口信夫「大嘗祭の本義」②【学問の道】

「古代信仰の元の姿」と大嘗祭

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研究開発推進機構 准教授 大東 敬明

2019年1月17日更新

 平成30年11月29日、「来訪神 仮面・仮装の神々」がユネスコ無形文化遺産代表一覧表に記載された。
 正月や春の初めに来訪する神(まれびと)が、言葉(呪言)によって人々に幸せをもたらすことは、折口信夫(国文学者・民俗学者、1887〜1953)の祭祀論・日本文学発生論と深く関わっている。さらにその主著である『古代研究』3冊のうち、民俗学篇2(昭和5年)に収められた「大嘗祭の本義」とも無関係では無い。

「大嘗会御神殿絵図(部分)」(國學院大學博物館所蔵)

「大嘗会御神殿絵図(部分)」(國學院大學博物館所蔵)

 「大嘗祭の本義」は、折口独自の祭りについての《仮説》にもとづくものである。それは、冬を春にする言葉を発する神の出現(春祭り)、秋に収穫の報告をする(秋祭り)、冬に「外来の威霊」を身につける(冬祭り)というサイクルである。これを「大嘗祭の本義」では、大嘗祭に於いて天皇が神に神饌を捧げる神饌供進を《秋祭り》、大嘗宮神殿中央に置かれた神座(寝座)に籠もって天皇が天皇霊を身につけることを《冬祭り》、高御座に昇って天皇が言葉を発する即位式を《春祭り》にあてはめる。この《仮説》では本来は別々の儀式である大嘗祭と即位式とを一続きの儀式と捉える。そして、このような一続きの祭りが、やがて暦法の変化によって、別々になったとする。さらに、神座(寝座)を「真床襲衾(まどこおふすま)」と呼ぶなどして天孫降臨神話と大嘗祭・即位式を結びつけた。

 『古代研究』民俗学篇1(昭和4年)に収録された「ほうとする話」においては、高御座に昇った天皇は「遠くより来たまれびと神であり、高天原の神でもあった」としている。

 また、天皇が神座(寝座)に籠もるという作法は資料にはみえないが、高御座に昇った天皇が神として言葉を発することを前提に想定されているといえよう。なお、実際の大嘗祭は即位式の後に行われる。

 このような、折口の《仮説》は、その独特の直感によって、類似する古典と各地に残る儀式・行事を結びつけながら想定された《古代信仰の元の姿》であった。

 『古代研究』の「追ひ書き」によれば、その三冊は、柳田國男の民俗学を国学に取り入れ、「新しい国学の筋立てを模索した痕」であった。そして、「新しい国学を興す事」は、「古代信仰の元の姿」を見ることでもあったのである。学報連載コラム「学問の道」(第13回)

研究分野

神道史、祭祀・祭礼、神道思想史

論文

萩原龍夫の二十代 : 国民精神文化研究所・教学錬成所での活動に注目して(2013/03/00)

『諸国大明神神名帳』と修正会・修二会の伝播 (特集 資料がかたる物語、記録からよむ物語)(2013/11/)

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