予測できない未来が待ち受ける今
「開拓者」に求められるもの
渋谷対談!Vol18 トップが語る Vision & Mission『國學院大學×サッポロホールディングス株式会社』
2018年3月31日更新
同じ渋谷区に居を構える、國學院大學の赤井益久学長とサッポロホールディングスの尾賀真城社長が対談。テクノロジーの進歩やグローバル化が急速に進み、未来が予測しにくい中、2人は「未知の世界」を切り拓く力についてどう考えるのか。
プロフィール | |
赤井益久(あかいますひさ) |
尾賀真城(おがまさき) |
國學院大學 学長 |
サッポロホールディングス株式会社 代表取締役社長 |
1950年生まれ。 國學院大學大学院文学研究科博士課程を経て、1996年より同文学部教授。2011年に学長に就任。 |
1958年生まれ。 1982年にサッポロビール入社。2013年よりサッポロビール株式会社社長となり、2017年から現職。 |
過去をつなぐことで未来が生まれる
赤井 昨年6月、本学とサッポロホールディングスは包括的な連携協定を結びました。御社の姿勢を見る中で特に感銘を受けたのは、創業から受け継がれる「開拓者精神」です。人工知能(AI)やグローバル化の進展など、今後私たちが“未知”の未来に進む上で参考にすべきだと思うのですが、ぜひその意味を教えてください。
尾賀 弊社の始まりは、明治9年に札幌にできた開拓使麦酒醸造所です。日本人による官営のビールを初めて作ろうとする中、気候や原料をふまえて当時“開拓地”の北海道を選びました。ビールの醸造さえ珍しい時代に、北海道に工場を作るのは大変な挑戦だったはずです。以後、商品開発でも新ジャンルの開拓をし続けましたが、それができたのは弊社のルーツを大切にしたからこそです。
赤井 過去を大切にする。そこに未知の世界を切り拓くヒントがあると思います。確かに未来は不透明ですが、しかし未来は過去が積み重なってできるものでもあります。本学は「人文・社会科学系の標(しるべ)となる」ことを目指しており、人間の歴史や歩んだ道を研究することに通じます。いわば、未来を見据えるための学問なのです。
悩みの筋道をつける それが過去を脱却する力に
赤井 一方で、未知の世界を歩む力は「悩む力」であるとも考えます。失敗や挫折の中で悩む力を養うことがカギであり、本学の教育計画ではそれを「豊かな知」と表現しました。
尾賀 加えて、悩んだ末に楽しむことが必要です。AIと人間を比較した場合、AIが勝るのは「失敗を恐れないこと」だと言われます。では人間が勝るものは何かというと、「楽しさを感じること」だと思うのです。大切なのは、楽しさを感じると「何かをしたい」という意思が生まれること。この意思こそが、人間の本質的な原動力ではないでしょうか。
赤井 教育でも楽しみは重要ですね。ただ、悩みや苦しみを超えてこそ本当の学ぶ楽しさを味わえます。今は情報が溢れており、学生は容易に結果にたどり着いてしまいます。であれば、悩みをきちんと経験するように私たちが筋道をつけなければなりません。悩みから楽しみという筋道が、未知へ踏み出す意志になります。
尾賀 それが「過去からの脱却」なのかもしれません。企業としては、過去から学びつつも、あくまで新しいことを求め続ける。そこに心血を注がなければ成長はありません。
悩みの新しい何かを生むために私たちに必要なものは
赤井 新しいものを求める姿勢は大切です。大学で言えば、今の学生は読書離れが顕著ですが、ただそれを嘆くのではなく、克服することが使命です。「ラーニングコモンズ」という形で、教室や図書館以外に勉強の場を作るなど。そういった仕掛けで変えていく必要があります。
尾賀 新しいものを生み出す上で、私たちが重視するのはお客様視点です。ブランドを作っているのはお客様であり、世の中が求めるものを追求する姿勢を忘れてはいけません。その視点が新たなアイデアにつながります。
赤井 御社はこれまで、アクティブラーニングの授業などを通して、本学の学生にそういった考えを伝えていただきました。学生は、自分の勉強が実質的な社会貢献になることを体感できるので、貴重な機会になっています。
尾賀 私たちとしても、学生と接することは事業のアイデアや社員のモチベーションにつながっています。こういった異分野の連携も、新たな価値創造を生む一手といえるでしょう。