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臆病だった自分を成長させてくれた
ファシリテーター&アドバイザーの経験は宝物

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経済学部4年 森 こまち さん

2023年2月6日更新

 大学の4年間で何を身につけるか? 

 森こまちさんは、2年生からFA(ファシリテーター&アドバイザー)として下級生の授業に参加し、学生がうまく議論ができるよう、導き役として活動してきた。FAとはなんだろうか。そして、そこから何を得られるのか。森さんのお話を聞きながら考えてみたい。

 

新しい挑戦ができない自分を変えたくて

 國學院大學経済学部では、平成26(2014)年からアクティブ・ラーニングを積極的に導入している。アクティブ・ラーニングとは、学生が講師からの話を一方的に聞くのではなく、能動的に授業に参加し、自ら考える思考法を養う学習法。この学習に欠かせないのがファシリテーター&アドバイザー(FA)の存在だ。FAは教員とともに学生たちの積極性を引き出し、グループディスカッションやグループワークの活性化を促していく。

 FAが参加する授業は、経済学部1年次に共通で受けるグループワーク形式の授業のほかアクティブ・ラーニングを導入している授業、たとえば「リーダーシップ基礎」や「政策デザイン」などである。

 FAになるのは、所定の授業を履修した2年生のうち、立候補した学生から選抜されたおよそ20〜25人ぐらいだ。

 現在4年生(令和5(2023)年卒業予定)の森こまちさんは、熱心に活動した結果、FAのリーダーを任され、4年生の前半まで活動を続けていた。

 「立候補といっても、自分から『やります、やります!』と言ったのではなくて、1年生のときに、先輩がすすめてくれたので、じゃあやってみようかな……という感じでした。私は結構、臆病で、新しいことに挑戦するのにためらいを感じるタイプだったので」

 そう笑う森さんだが、やってみたいという動機はもちろんあった。

 「いちばん大きな動機は、自分を成長させたいということでした。入学して大学に慣れてくると授業とサークル(野球サークル)とアルバイトの繰り返しに飽きちゃって。せっかくならこの大学でしか経験できないことをやってみたいと思い、挑戦してみようと思ったんです」

「1年のときのリーダーシップ基礎の授業にFAの先輩が2人ついてくださって、講義やファシリテーションをしてくれたりと、とてもカッコよかったんです」

 その他に、自分が授業を受けたときにFAとして参加した先輩の姿を見て、憧れたということもあった。

 FAに立候補する学生たちの動機はいろいろだという。「就職に有利になるのでは」という人もいれば、森さんと同じように「自分を成長させたい」という人、また「FAに立候補するような意識の高い人と友だちになりたい」という人もいるそうだ。

 

FAデビューがなんとオンライン!

 FAに選ばれた学生は、事前に2回ほど研修を受ける。学生への声かけのタイミング、グループディスカッションを活性化させる方法、先生との連携の仕方などを学ぶ。

 そしていよいよFAデビューとなったところで、思いもよらない展開が待っていた。新型コロナウイルスの感染拡大によって、授業がすべてオンラインになってしまったのだ。

 「困ったなと思いました。まず先生方も含めFAメンバー全体でZOOMの使い方を学びました。そして授業中に起こりうるトラブルを想定して、その対処法をまとめ授業に臨んだんです」

「2年の後半からFAのリーダーにもなり、対下級生だけではなく、組織をまとめることにも関わりました」

 FAはおもに、グループワークの際に議論を活性化させる種をまいたり、学生の発言を促したり、議論が迷走したときに道筋を示したりする。教員やFAが「今日はこのテーマで話し合おう」とテーマを出し、その内容についてレクチャーを行った後、議論を開始する。このグループは3〜5人程度のこともあれば、個人でのワークもあり、またペアになって行う場合もあるようだ。

 議論が煮詰まったグループがあればFAの出番。「どこまで話が進んだかな」と問いかけ、「ここから先が分からない」という返答がきたら、一人ひとりの意見を促したり、その意見について別の人からの意見を引き出していったりする。

ファシリテーションの様子

 しかし、オンラインでは想定外の反応も起きた。

 オンラインでのグループワークは、ZOOMのルーム機能を使って3〜4人ごとに分かれてディスカッションするのだが、議論しているルームに入室して議論を見守ろうとすると、森さんや先生が入室した瞬間、「来た!」という空気が流れ議論がピタッと止まってしまうことがあった。

 「そこで、私や先生は入室するときにビデオオフ、音声もミュートにしてできる限り存在感を消して議論を見守り、必要なときにはビデオと音声をオンにして話しました。あとはチャット機能を使ってサポートをしました」

 オンラインでは授業の前後に軽い雑談などもできない。なかなか受講生個々の個性や考え方を知る機会もなかった。そこでオンライン交流会を企画して、毎週授業以外の会話を楽しむ時間を作り、学生たちの個性を把握する努力もした。

 3年生になってからはアクティブ・ラーニングの授業は対面となり、やっと学生たちの空気を身近に感じながらの活動となった。大変さももちろんあるが、FAの活動をしてよかった! と思うのは、受講生の成長を感じられたときだ。

 「最初の授業のとき、一人ひとり自己紹介をするのですが、そのときに緊張してほとんど話せなかった学生がいたんです。その人が、1年が終わるころ自分の主張を流暢に語れるようになって『うわあ、成長したな!』と感激しましたね」

「やっぱり、下級生の成長を目の当たりにすると感動します。やっていてよかったな、と」

 

先生とも二人三脚で取り組んだ2年半

 学生の成長を促すには、授業のときだけFAとしてふるまえばいいわけではない。

辻和洋助教(右)と。先生からは多くのことを学んだ。

 「先生がどんな授業をしたいか、FAが加わってどんな授業にしていくか、毎回、事前に打ち合わせをしました。私はずっと辻和洋助教とタッグを組んでいたのですが、先生から教えられたことは『振り返りは必ず行う』ということです。『何をして、結果どうなったか、きちんと振り返りを行って記録しておくこと。それが蓄積されて成長につながるから』という先生の言葉を信じて、授業の後にはFA間で運用している掲示板に、振り返りを記して共有したり、自分自身ではノートに細かく記したりしていました」

 そう言って手にしたノートは、年が変わるごとに分厚くなっている。そこには、携った学生のことだけではなく、森さん自身の成長も刻まれているのだ。

年を追うごとに書き込みが増え、分厚くなっていった森さんのスケジュール帳。FAの打ち合わせ内容や授業の振り返り、反省点ほか自身の予定も書き込まれている。「クラウドで管理するカレンダーより、その日に学んだことや感じたことを書き込んでいつでも振り返ることができる手書きの手帳がいちばんです」

左から1〜2年生、2〜3年生、3〜4年生のときに使用した手帳。年ごとに厚くなっているのが一目瞭然!

 

困っている人がいたらなんでも手を貸したい

 森さんは、「大学生活の多くをFA活動に費やした」という。いわば、本来の自分の学業以外に、人のために多くの時間を使ったわけだ。年度が上がるごとにゼミや卒業論文など多忙になっていく中、なぜ、FAを続けたのだろうか。

 「私は福島県中通りの小さな村の出身なんです。そこでは、人と人が支え合うのは当たり前。そういう環境で育ちましたから、困っている人がいたら自分にできることをするのは当然という気持ちがあるんです。自分では当たり前過ぎて、助けるという意識ではなかったかもしれません。ただ困っていたら手を貸すだけ。そういう意味でFAの活動はとてもやりがいがありました」

 その結果、自分自身も大きく成長できた。

 「挑戦することが怖くなくなりました。自分の強みも分かりましたし、いろいろな経験をして失敗することが怖くなくなったのは大きいですね」

 充実した大学生活は体中からあふれている。高校時代の先輩に久しぶりに会ったとき、

 「なんだか、こまちちゃん変わったね。すごくキラキラしてるよ」

 と言われたことがとってもうれしかったという。

 FAの経験を活かしたいと、卒業後は人材開発や組織開発に関する仕事に就くことを選んだ。

 まっすぐな思いで駆け抜けた4年間。森さんには、次のステージでもキラキラな瞳を持ち続けたまま活躍してほしい。

 

 

取材・文:有川美紀子 撮影:阪本勇 編集:篠宮奈々子(DECO) 企画制作:國學院大學

 

 

 

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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