ARTICLE

「探究する学び」が求められているワケ

すくすく子育てエッセイ(在宅編)Vol.06

  • 人間開発学部
  • 全ての方向け
  • 教育

人間開発学部教授 田村学

2020年4月27日更新

 國學院大學では、教育学・体育学の教員が中心となり、子育てに関する連載企画を5月上旬まで緊急展開します。自宅でテレワークを続けながら子育てに奮闘しているパパママの心の励みになるものや、お友だちとも自由に遊べず寂しい思いをしている子どもたちへの応援メッセージが込められたテーマでお送りします。

 身の回りに、突然に現れた「非日常」。ひっそりと静まりかえる首都圏の姿に安心したり、繰り返されるテレビの映像に不安になったりするのは私だけではないと思います。大人でさえ情緒が不安定になる日常の中、子ども一人一人の心も穏やかではないことは、誰もが容易に想像できるのはないでしょうか。

 思いもかけず身に降りかかった「休校」の二文字。国内の多くの学校では、普段通りの卒業式が実施できず、クラスメートとのお別れもままならず、仲間との最後の学校生活を突然に迎えることとなった子どもたちも多かったことと思います。

 そんな中、子どもの家庭での学びはどうなっているのでしょうか。学校からは課題が出され、宿題が用意されていると思われます。いくつかの学校や家庭に聞いてみたところ、「プリントに示された漢字を書きましょう」「次の計算を練習しましょう」などのドリル学習が多いようです。

 知識を確実に習得するためには、繰り返したり反復したりする学習が欠かせません。しかも、日本の先生方はとっても上手に繰り返し反復学習を行ってきました。それは、日本の先生のストロングポイントと言えるかもしれません。一斉指導の腕に関しては、日本の教師は評判が高いのです。無理矢理やらせること、ましてや叱りつけたりして何度も練習させるようにしているわけではないのです。

 具体的には、「楽しい繰り返し」「変化のある繰り返し」「成長を実感できる繰り返し」などを工夫し、一人一人の子どもが前向きに、自ら学習に取り組むことができるようにしてきました。おそらく、今回の各学校の課題や宿題に関してもそうした工夫が行われているものと思います。

 一方、家庭での学習には、自分の好きなことや関心のあることに真剣に立ち向かい、本気で追究する学びも欠かせません。没頭したり、集中したりできることは大切な能力なのです。夢中になって、粘り強くチャレンジし続けることが成功への王道であることは、誰もが知っていることでしょう。知識の習得以上に、むしろ、そうした学びこそが大切なのではないかと考えています。ずっと指示されたままの受け身の学習を続けることには、実は大きなリスクが隠されています。確実にたくさんの知識や技能を身に付けることができたとしても、それらは案外と剥がれやすいものであったり、言われなければやらない極めて受動的な学び手を育ててしまったりする可能性があるのです。

 私たちの子どもの姿への期待はどのような姿でしょうか。知識や技能の確実な習得は重要なことですが、そのこと以上に自ら主体的に学習に取り組む学び手を育てていきたいと考えるのは、多くの大人に共通する強い願いなのではないかと思います。この学びを「探究」と呼ぶことができます。全国の学校に休校措置がとられる中、子どもが家庭で「探究」していくことができる支援の一つとして、webサイト「自分で学ぶ、探究の世界(http://npo-filc.org/inquiry/)」を準備しました。

 学校で学ぶさまざまな学習は,最終的には、自分一人で「探究」ができるようになることを目指していると言っても大袈裟ではないでしょう。サイトには次のように書いてあります。この機会に、親子で「探究」に挑戦してみるのもよいかもしれません。

 

本の秘密を探り1枚の紙にまとめた一例


 探究とは,

  • いろいろな活動をやってみたり,いろいろなものに関心をもってみたりする
  • その中で,課題(解決したい問題や深く知りたいこと)をみつける
  • 課題を解決するために,教科で学んだ知識や技能を使う
  • 課題を解決するために,自分で情報を集める
  • 集めた情報を,整理したり分析したりして,自分にとって新しいことを発見する
  • わかったことをもとに,自分なりの考えをつくり出す

というような流れですすむ「深い学習」です。 学校では,「総合的な学習の時間」や「総合的な探究の時間」でこの力を身につけますが,家庭でもすすめることができます。


 これからの社会で求められる学びは、まさに「探究」です。学びを「探究モード」に変革していかなければなりません。身近な社会の問題の解決に向けて、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動する力が求められているのです。そこでは、絶対の正解よりも、納得解や最適解が期待されています。そうした学習の繰り返しの中でこそ、未来社会を創造する主体が、確実に育っていくのではないでしょうか。

 今まさに、「探究する学び」が求められているのです。

 

【参考】

 NITS独立行政法人 教職員支援機構『学習指導要領の読み解き方』
 ※ 田村教授の講義を聴講できます。

 

 

 

 

このページに対するお問い合せ先: 総合企画部広報課

MENU