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ゆくゆくは、算数コンテンツが
教育分野以外にも、影響を与える状態にしたい

(『シブヤ沼フェス』インタビュー 第6回 横山明日希さん(math channel 代表))

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math channel 代表 横山明日希

2020年3月6日更新

 「渋谷」は、誰かの好きなもので溢れています。ファッション、音楽、アート、映画、文学、ゲーム、スポーツ……。
 「渋谷」を中心に活躍するみなさまに、アナログに引き続き、好きなモノ、はまっている「沼」についてインタビューしました。今回は〝数学のお兄さん〟として活躍する、横山明日希さんです。
 
 
 
 
−−現在のお仕事を始めたきっかけを教えてください。
 
横山さん(以下横山) もともと数字が好きで、大学も数理科学科に進みました。大学時代に「数学・算数の楽しさを伝える仕事をする」と自分の中で明確に決めてから、いろいろとネタ探しをしたり、どういう仕事内容にすればいいのか考えたり、試行錯誤を続けました。
 

子どものころに作っていたというロボットを再現してくださった。
 
−−具体的にどんなところで、ネタ探しをしていたのですか?
 
横山 ありとあらゆるものが数学のネタになるんですよ。たとえば、壁、ドア、カギ、日付……など、なんでも。わかりやすい例だと、東京タワーの骨組みのネタです。東京タワーの骨組みって、三角形なんですが、それは、三角形だと丈夫だから。なぜ三角形だと丈夫なのか……? これ、合同条件にからめたら説明できるんですよ。一度、これに気づくと、街を歩いていても「橋の構造もそうだな」とか、「プレハブもだ」とか、たくさん見つけられて楽しいです。 
 

子どもたちへも「三角形の骨組みはなぜ丈夫なのか」を、この知的玩具を触らせながら解説するという。
 
−−現在は、どんな活動をされているのですか?
 
横山 算数・数学の楽しさを伝える活動をしていくなかで、「算数・数学を好きになるきっかけ作り」が重要だと感じました。いまは、子どもむけのイベントを数多く開催しています。また、平成28(2016)年に、お笑い芸人で、数学講師もしているタカタ先生と「日本お笑い数学協会」を設立したのですが、これをきっかけに、イベントや動画配信、出張授業などをやらせていただいています。
 

1から10までの数字を実感してもらうために、ミニブロックを活用する。
 
−−書籍も出版されているようですね。
 
横山 日本お笑い数学協会のメンバーで100個の笑えてためになる算数・数学ネタをまとめた『笑う数学』(日本お笑い数学協会編、KADOKAWA)や、小学生向け算数パズル『算数脳をつくる 計算カードパズル』(幻冬舎)など、さまざまな読者層に向けた書籍を出させていただいています。
 
−−活躍されている場は多岐にわたるようですが、お仕事をする上で、大事にされていることはなんですか?
 
横山 自分自身が算数・数学を楽しむこと。自分たちが楽しんでいないと、受け手側にもその楽しさが伝わらないと思っています。また、コンテンツ作りにおいては、ちょっとでもおもしろいと思ったものはまずは試してみて、何かに役立てられないかと考えています。
 

数学をつかったゲームを考えるという中学生むけ授業。思いもよらぬゲームが生まれたという。
 
−−イベントを盛り上げるために、心がけていることはありますか?
 
横山 たとえば子どもむけイベントの場合は、子どもたちの発言をすべて肯定的にひろうということですかね。そうすると、どんどん子どもたちが前のめりになってくれるんですよ。これ、子どもに限ったことではないですね。イベント準備の段階で、メンバーに対しても言えることかもしれません。メンバーのアイデアが、たとえ自分にとって、100点中10点だなと思っても、そのアイデアを広げ、掘り下げ、おもしろいアウトプットにつながるようにしています。
 
トランプを使った数ゲーム。カードの数を足して、シルエットの敵を倒していく。ルールはそのつど柔軟に変更するという。
 
−−ご自身にとって、「今回のイベントは成功したな」って思うのはどんなときですか?
 
横山 イベントって奥が深くて、参加者、主催者全員にとって100%理想の教材、授業ってほとんどありえないんです。自分が70点、80点だとしても、ある子にとっては100点、ある子にとっては40点〜50点だったりする。だから自分が中途半端だなと思っても、メンバーの力を借りながら作りつづけること、多く作ることが大事なんだと学びました。
 
 
−−現在のお仕事を軸に、今後、やってみたいことはなんですか?
 
横山 全国各地で算数・数学の楽しさを伝えるべく、全学年全単元につながる教材・コンテンツを作りたい。また、講座やショーという形式だけでなく、テレビ番組や音声コンテンツなど、手法をたくさん広げていきたいです。
 また、ゆくゆくはまちづくりの手法として、算数コンテンツが教育分野以外にも影響を与えている状態にしたいと思っています。
 
−−まちづくりの手法とは、どういうことですか?
 
横山 算数・数学をテーマに仕事をしている人って、先生、研究者、金融関係者など、まだまだ少ないんですよね。でも、算数・数学コンテンツって、もっと可能性があると思うんです。
 先日も北海道上士幌町に行政と連携した企画で出張授業を行う機会がありました。そこでまちづくりのキーワードのひとつに「子育て」をはじめとした「教育」があることを改めて感じました。「学校や施設へのタブレット配布」や「子育て支援での助成金」など土台づくりに加えて「教育コンテンツの充実」が重要になってくるのではと個人的には思います。
 やっぱり日々、その町で出会うものを楽しいと思う、ということが大切だと思うんですよ。なので、たとえば算数の楽しさを伝える人たちが地域に増えると、その「楽しい」の機会が増える。全国各地で、地元の方が楽しいと思ってもらえる機会を提供し、その結果、さまざまな地域課題が解決できたらと思っています。
 
 
 
 
プロフィール:
横山明日希(よこやま・あすき)
math channel代表、日本お笑い数学協会副会長。大学在学中から、数学の楽しさを伝えるために〝数学のお兄さん〟として活動を開始し、これまでに全国で約200か所で講演やイベントを実施。2017年、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)主催のサイエンスアゴラにおいてサイエンスアゴラ賞を受賞。共著に『サクッとわかる!中学数学キャラ図鑑』(KADOKAWA)、著書に『算数脳をつくる かずそろえ計算カードパズル』(幻冬舎)ほか。
 
お仕事以外でハマってしまった沼:
お笑いです。人を楽しませる職業として、尊敬の気持ちを込めながらテレビ番組、芸人さんのことを観察しています。中学・高校のころ、いろいろ悩んでいた時期があったのですが、「笑う犬の冒険」「内村プロデュース」を見て、悩みを忘れて心から笑えたということが、いまでも強く記憶に残っています。
 
 
 
 
 
撮影:服部希代野 編集:篠宮奈々子(DECO) 企画制作:國學院大學
 
 

 

 

 

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