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國學院大學考古学研究室が長野県安曇野の穂高古墳群を調査する3

考古学実習レポート 第3回(整理編)

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2016年1月7日更新

実習参加者の7割を占める“考古女子”の奮闘を4回にわたって紹介します。(第4回は、4月号にて報告いたします)
制作・Newton

出土品とデータを整理し、その意味を探る

長野県安曇野市での10日間にわたる古墳発掘調査を終えた実習生たちは、渋谷(東京都)にある國學院大學考古学研究室に戻り、調査結果の整理と分析作業に入りました。研究室に、穂高古墳群F9号墳で今回新たに発見した数十点の遺物(出土品)、測量データ、写真データ、実習生たちが記録した日誌類など、すべての調査資料が一箇所に集められます。整理・分析作業は「遺物」「図面」「写真」「日誌」班に分かれ、お互いに連携しながら進められました。

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測量結果や写真を基に、調査内容を正確な図面にする。

遺物班は、出土した貴重な遺物を1点1点ていねいに洗浄し、そのすべてに白い小さな文字で通し番号を付けていきます。2009年からおこなわれている過去6回の調査分と合わせ、通し番号は474に達しました。発掘時に「やった!」と大きな歓声があがった2つの馬具はサビに覆われていました。鉄鏃(鉄製のやじり)も同様です。

これらは劣化しないよう、エタノールに漬け、金属内部の水分を飛ばす処理を施しました。一気に100%のエタノールに漬けると金属が脆くなるので、最初は濃度50%程度に薄めたもの。丹念に筆で表面の汚れを落としながら、徐々に濃度を上げていきます。この作業ももちろん実習生の考古女子たちがおこないます。

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出土状況を参考にしながら、過去の調査で見つかった遺物と接合するか確認。シールの色が違うものはそれぞれ別の年度に出土した破片。

モノからコトへ。古代人の姿が見えてきた

馬具がきれいになり、詳しい構造も明らかになりました。実習を指導する深澤太郎准教授が現地で推理したように、やはり古代の轡(乗馬の際、手綱につなぐ金具。両端が輪になっていて馬の口にくわえさせる)のようです。輪の部分の組み合わせ方から2頭分と見られています。「2つの轡は別々のタイプのものですね。これは、被葬者の性格を考えるヒントになるかもしれません」(深澤准教授)

図面班は、写真班と連携しながら、測量データに基づく正確な図面を作成していきます。大切なのは手を抜かず、正確に描くこと。そうすることで過去6回の調査図面と重ね、この古墳の全体像を推理することができるからです。また彼女たちは遺物班や日誌班とも連携します。「この遺物はどのグリッド(区画)だった?」「B3です」「何日目に出たか分かりますか?」「写真はありますか?」と互いの情報をやりとりをしながら、図面に遺物の出土状況も記していきます。

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金属製の遺物はサビが増えないようエタノールに浸し乾燥。馬具の汚れも慎重に落とす。

このように、発掘時にはバラバラだった情報、モノをつなげ、それぞれが持つ意味を見つけやすくする作業が「整理」です。そこに過去の調査結果も統合して「分析」することで、この古墳に関わった古代の人々の姿が浮かびあがってくるのです。なお、石室床部から採取した赤い顔料は現在分析中とのこと。もしこれが埋葬時に遺体周辺に塗られたものならば、近くで出土したガラス小玉は古代人のネックレスだったのかもしれません。その結果も次回のレポートで報告します。

 

 

 

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