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國學院大學で学ぶ留学生たちは、明治神宮を訪れました。そこで生じた留学生の疑問に、本学教員が回答します。
Q.明治神宮は、都会の賑やかな場所の中で、豊かな緑があり、とても驚きました。これには理由があるのですか?
A.東京の緑の多さは、明治天皇と江戸の大名によるものです
明治神宮の杜は、明治天皇が崩御なされた後に、全国からの庭園設計の権威であった林学博士・本田静六氏により計画され、全国青年団の勤労奉仕により作られた人工の杜です。現在では、多様な生物が生息し、水が湧き、100年の間に自然の杜へと成長してきました。
しかし、東京に緑が多いのは、江戸時代にまで遡ります。明治時代に日本を訪れたお雇い外国人たちは、一同に東京の緑の多さと美しさに驚いたそうです。
これには2つの理由があります。参勤交代で江戸を離れる大名の人質が住む江戸屋敷の広大な敷地内に立派な庭園が築かれました。江戸の町の7割を占めたといわれる武家の屋敷内に庭園が築かれたのが、今日まで残されたものもあり、東京に緑が多く残る所以です。武器を持つことが禁じられた江戸の大名たちは、庭園をはじめとした芸術文化にお金をかけたのです。
もう1つの理由として、自然を演出するといった文化が挙げられます。周囲の山々をも庭園の背景の一部として取り入れたり、石や砂などにより山から海原へと水が流れる様子を演出したり、さまざまな趣向が凝らされており、自然への憧憬が感じられます。
ところで、伝統的に、結婚相手を見極める際には、家の前の前裁(庭先に植えられた花草木)に咲く花を見ろ、と言われていたそうです。そういったところからも、緑の豊かさに生き方を重ねる、日本人の心が窺えるのではないでしょうか。