去る6月23日(土)、本学の祭式教室にて「宮廷装束の着装披露」が行われました。
こちらは、「霞会館 衣紋道研究会」が主催、本学神道文化学部が共催する行事で、今回で5回目になります。
衣紋道研究会では創立以来、髙倉・山科両流が培った衣紋道の伝統を継承し、研鑽を重ねておられます。皇室の祭儀執行や石清水・賀茂・春日の三勅祭などでも衣紋の奉仕をしておられる方々です。
普段、着装は私室で行うものですから、本来、その様子を拝見することなど、ほとんどありませんので、大変貴重な機会です。
今年は、男子装束は「挂甲(けいこう)装束」、女子装束は「女房(にょぼう)装束」です。
先ずは男子の着装から始まります。
御方(おかた)は小袖(こそで)・大口(おおくち)・巻纓(けんえい)の冠・緌(おいかけ)を着け、二人の衣紋者(えもんじゃ)と共に登場します。衣紋者は衣紋道研究会の方々ですが、御方は本学部2年生の金鑚さんが務めました。
単(ひとえ)、表袴(うえのはかま)、下襲(したがさね)、裾(きょ)、半臂(はんぴ)、闕腋袍(けってきほう)と手早く着装した後、肩当の緋の衣と挂甲を着けます。
挂甲とは、即位礼の「正殿の儀」(昭和までは「賢所大前の儀」と「紫宸殿の儀」)において威儀者(=警備の任に当たる者)が着ける装束です。
そして、太刀、平緒(ひらお)、胡籙(やなぐい)を着け、弓を持たせ、鞾(かのくつ)を履かせて着装がととのいます。
ここで男子御方役の感想をご紹介します。
今回、私が着装していただいたのは「挂甲」という装束です。挂甲とは「即位礼 正殿の儀」でのみ着装する装束です。
私自身、本学の衣紋講座に参加したことがありますので、衣紋方の難しさは身にしみているつもりでしたが、衣紋方のお二方が、声を出せないながらも、阿吽の呼吸で手早く着装なさる姿に感動いたしました。さらに着装の後は、装束の絶妙な締め具合などを実感しました。衣紋方のお二方から、着装の際にわずかでもずれないように気を付けている、ということを聞き、衣紋道の奥深さを感じましたし、平安時代から伝わる衣紋の技を日々鍛錬なさっていることに驚くばかりでした。
私は神道文化学部に入学して2年目になりますが、もともと父親の影響で衣紋道に少し興味がありました。今回の経験で、衣紋道という伝統文化を継承する側になりたいと思うようになりましたので、これから多くの人を通して勉強してきたいです。
最後になりましたが、このような貴重な経験をさせていただいたことに対しまして、関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
次に女房装束の着装です。
本来は、五衣(いつつぎぬ)・唐衣(からぎぬ)・裳(も)の装束と呼ばれておりましたが、現在では、十二単(じゅうにひとえ)として知られる装束です。
こちらも、衣紋者は衣紋道研究会の方々がおつとめになります。御方は本学部2年生の清野さんが務めました。
まずは、御方が小袖と長袴(ながばかま)を着けて登場です。
そして、単、五衣(いつつぎぬ)、打衣(うちぎぬ)、表着(うわぎ)、唐衣(からぎぬ)、裳(も)が、前衣紋者と後衣紋者の美しい手さばきで着けられていきます。最後に檜扇(ひおうぎ)を御方が持って、女子装束の着装がととのいます。
女子の御方役にも感想を聴きましたので、ご紹介します。
まずは、御方役として貴重な体験をさせていただいたことに対しまして感謝申し上げます。
最初は、季節や身分をあらわす装束を美しく重ねていく衣紋者の方々の優美な技術に、ただ感銘を受けていました。でも、それだけでなく、衣紋者の方々は、重い装束が御方の負担にならないようにと、さまざまにお気遣いくださっていることに気づきました。女房装束の優雅さは、装束の色目が重なる上品で洗練された美しさだけでなく、衣紋者との調和が大切なのだと感じました。今回、御方役を務めて、平安時代から続く日本の美しい伝統文化が、多くの人々に守られてきたという歴史の重みを感じることができました。
日本の装束は、古の人が四季折々の趣を慈しみ、優雅さを貴ぶ心を表現したものとうかがいました。日本人の美意識の原点として、これからも受け継がれて欲しいと思いました。
着装が終わると、会場からは様々な質問がなされ、参加者の方々は、着装の説明を非常に熱心に聴いておられました。
衣紋道とは、その古儀・作法が正しく後世に継承されるべき伝統文化です。そのことを、沢山の方々に伝えることができた一日でした。
来年も企画された際には、是非ともご参加ください。
(写真:増山正芳)