平成23年3月11日の東日本大震災発生から6年半が経ちました。
震災の年の7月、福島県いわき市小名浜の環境水族館アクアマリンふくしまで、神社関係者により「千度大祓」(せんどおおばらい)が行われました。「この震災関連により失われたすべての御霊の安らかに鎮まることを祈るとともに、今を生きる数多の方々の魂を振り興す」という趣旨によるものです。以来、毎年海の日の頃にこの行事が続けられています。平成24年から、國學院大學神道文化学部と神道学専攻科の学生たちも参列させていただくようになりました。
今年は神道文化学部生13名、専攻科生5名に加えて大学院生が2名、教職員・学務補助員が5名、あわせて25名が参列いたしました。
朝7時半に大学に集合、神殿で正式参拝の後バスに乗り、小名浜を目指しました。
平成24年から26年までは、千度大祓の斎行に先立ち、院友会浜通り支部の会長でもある山名隆弘・大國魂神社(いわき市平菅波鎮座)宮司と幹部の方々により、津波被害を受けた豊間・薄磯・沼の内地区を案内していただきました。今回、3年ぶりに、バスの中からではありましたが、学生たちとともに豊間地区の現在の様子を見学しました。盛り土や防潮堤建設、住宅再建が進んでいる状況がうかがえました。4年連続で参加した学生はその変わりように驚いている様子でした。
平成23年以来の会場であるアクアマリンふくしまも施設の拡張工事が行われ、平成27年に入場ゲートが屋外に設けられたため、平成28年からは「千度大祓」の会場が隣接するアクアマリンパークに移りました。また日取りも海の日の前日の日曜日となりました。
午後3時から、まず慰霊祭が行われました。これも昨年からですが、雅楽器を奏することのできる学生たちは伶人としても奉仕します。祭詞奏上の後、双葉郡浪江町請戸の田植踊が奉納されました。当時小・中学生だった踊り子たちも今は大学生に成長しています。
この時から雨が激しくなり、雷も発生していたため、近くの「小名浜潮目交流館」に会場を移して祭儀を続行しました。午後4時45分より大祓詞十巻奏上が始まりました。今年は例年以上に氏子総代、敬神婦人会、一般の方々の参列が多くみられました。その中には、県外避難から帰還した方々もいらっしゃったそうです。
最後に、丹治正博・福島県神社庁長と山名隆弘・福島県神社庁いわき支部長より謝辞をいただきました。いわき市の北、原発事故による帰還困難区域を抱えている双葉郡では復興祈念公園の構想があり、いずれその地で祭りを行いたいという願いが語られました。
参列者には「千度大祓厳修」と記されたお守りが配られました。また、院友会浜通り支部よりかまぼこをいただきました。
千度大祓は2020年まであと3回続けられる予定です。震災の発生から時間が経つにつれて人間も年をとり、地域の状況、課題も変わっていきます。その中で、慰霊と復興祈願の思いを保ち、継承することがこの行事を続ける大きな意義となっています。来年以降も多くの学生たちが参加することを願います。また、さまざまな理由で当日の参列がかなわなくても、何かしらこの行事を支える活動を学生たちの手でできないか、考えてみてほしいと思います。
最後に、4年間千度大祓に参加した学生の感想を紹介したいと想います。
私は、1年生から4年間、千度大祓に参加いたしました。今回、「4年間あっという間だったな」という思いと「今年で最後なんだ」という寂しい思いを抱えて奉仕いたしました。私が4年間参加することができたのは、福島の方々の優しさと、復興に対する想いに惹かれたからだと思います。
4年前、「東日本大震災という未曾有の災害に対して神職を志す私ができることは何だろう」と考えていたとき、千度大祓を知りました。
実際に参加してみると、たくさんの人が東北の復興を信じて協力しあっていることを実感しました。一人の力だけで復興に繋がらないのは当たり前ですが、どうせ何も変わらないと考えるのは間違いです。たくさんの人が東北の復興を思い描いて協力していますし、それが千度大祓という行事にもあらわれていました。
千度大祓に参加することは決して無意味なことではありません。一人でも多くの人に千度大祓に参加し、東北の復興する姿を見て欲しい。それが私が心から伝えたいことです。
(文・写真:神道文化学部教授 黒崎浩行/協力:神道文化学部 川元日菜子)