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H25公開「模擬裁判員裁判」開催報告

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2013年11月29日更新

 去る平成25年11月24日(日)に、公開「模擬裁判員裁判」を開催しました。
 裁判員制度が2009年5月からスタートしたことを踏まえ、法律家を目指す法科大学院学生が、裁判員の皆さんに理解していただける新しい法廷活動を修得することを目的としたもので、今回で5回目の実施となります。
 本法科大学院の2年生が、裁判官、検察官、弁護人の法曹3役に扮し、裁判員裁判の一連の流れに従い進められました。「裁判員」には渋谷区に在住もしくはお勤めの一般の方にお願いし、地域の皆様にも、国民と法律専門家が協働する新しい裁判制度を体験していただきました。

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 本法科大学院学生は、2年次後期開講の「リーガルクリニック(初級)」で「模擬裁判」を履修しています。今年度の刑事模擬裁判では、口論の末に起こった殺人未遂事件を題材に、「どのように説明すれば裁判官、裁判員を合理的に、納得させることができるか」を主眼に、検察官役及び弁護人役の学生が冒頭陳述から証人尋問、論告・弁論までを行ってきました。その内容はすべて、四宮啓法科大学院教授や渋谷パブリック法律事務所の弁護士のアドバイスを受けながら、学生たちが試行錯誤の上、練り上げたものです。

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 模擬裁判は、すでにあるシナリオに沿って、そのとおりに演じていくという例が多いものですが、本学の模擬裁判員裁判にシナリオはありません。裁判員役を担当していただく一般の方は、当日初めて、裁判員としてのレクチャーを受け、裁判で初めて事件の概要を知るのです。法科大学院の学生にとっては、授業で学び、磨きあげてきた法廷技術が、一般の方に通用するものなのか試されることになります。

【裁判内容】
  起訴状朗読等冒頭手続(5分)
  冒頭陳述(検察官5分、弁護人5分)
  書証・物証取調べ(5分)
  証人尋問1 小見川証人(医師)(検察官10分、弁護人10分)
  証人尋問2 橋行久証人(被害者)(検察官20分、弁護人20分)
  証人尋問3 福上次夫証人(被告人の兄・被害者の友人)(検察官15分、弁護人15分)
  被告人質問(検察官20分、弁護人20分)
  論告・求刑(検察官10分)
  弁論(弁護人10分)
  裁判官・裁判員評議 (60分)※非公開
  判決言い渡し

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 今回の事件は、職を失い兄の家に居候をしていた被告人が、家に遊びに来ていた兄の友人にそのことをとがめられ、口論の末、果物ナイフで刺して重傷を負わせたというものです。被告人は、殺人未遂の罪で起訴されました。事件の争点は2つ。1つは、被告人に殺意があったかどうか。2つ目は、兄が被告人を取り押さえようとして、羽交い絞めにしたのがどの時点からだったか。被告人は殺意はなかったと主張しています。検察官、弁護人は、それぞれの主張の合理性を、証拠にもとづいて、裁判官、裁判員を説得する必要があります。
 検察官も弁護人も、立ち位置から話し方まで細部に渡り、わかりやすくかつ説得的な説明を尽くします。証人から現場の状況を聞き出す場面では、図面を使って位置関係を説明してもらったり、物証を見せるなど工夫が凝らされていました。
 証人役、被告人役は、渋谷パブリック法律事務所の弁護士が担当しましたが、俳優と間違われる程の迫真の演技に、会場は引き込まれていました。当事者は、自分に不利となるようなことは言いません。重要な証言を聞き出すには、相当な手腕が必要となります。裁判員の方からも、度々細かい点を確認する質問があり、本番さながら緊迫した雰囲気の中、進められました。
 裁判官、裁判員による別室での1時間の評議の後、殺意は認められるとして、殺人未遂が認定され、検察側の求刑6年に対し、懲役4年の実刑が言い渡されました。
 裁判員の方からは、「証人の証言の受け止め方も裁判員により異なり、合議する意味が分かった」「人を裁くことの難しさを実感した」との感想が述べられました。

裁判官、裁判員による評議の様子。 裁判員の中でも、意見が分かれました。

裁判官、裁判員による評議の様子。
裁判員の中でも、意見が分かれました。

 今年は、法学部学生5名及び國學院高校の生徒さん5名が、「裁判員チーム」として参加してくれました。

 学部生が議論を取りまとめつつ、高校生も積極的に意見を述べていました。
 学部生・高校生合同裁判員チームによる判決は、殺意は認められないとして「傷害」を認定し、懲役3年に処するという結果となりました。

学生チームの評議の様子

学生チームの評議の様子

裁判官、裁判員が非公開で評議を行っている間、裁判員制度の設計に携わった四宮 啓教授と傍聴席の皆さんとで、意見交換が行われました。

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裁判員裁判終了後、会場向いの「カフェラウンジ若木が丘」において、懇親会が催されました。緊張から解放された出演者は、裁判員役の方々となごやかに歓談していました。

 今回、裁判員としてご協力いただきました地域の方々、学生・生徒の皆さん、傍聴人としてご見学いただきました皆様に、心より感謝申し上げます。

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このページに対するお問い合せ先: 法科大学院事務課

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