近くて遠い? 遠くて近い? そんな親の気持ちや大学生の子どもの気持ちを考えます。
「受験地獄があるから羨(うらや)ましい」!?
「南米アマゾンの奥地に住むというナマケモノの絵馬が、結構流行っているようです」(某宮司様談)
ナマケモノは、ほとんど木の上で寝ているが落ちることがない。そこが、合格祈願の受験生に受けているとのことでした。
インディアナ大学就任中、地元米国の中学校教師から、「日本は受験地獄(examination hell)があるから羨ましい」と言われた時は、一瞬耳を疑いました。
「なぜ学ばなければならないか」。
確かに、日本では、その根拠を受験に代替することができます。
しかし、「受験地獄」にほど遠い米国では、教師はその都度、その授業の「学び」の意味を生徒に知らしめる授業を展開しなければならないのです。
受験地獄を終えた今、「学び」以外で、受験が自らの心身の発達にいかに寄与してくれたかを思案してほしいと願います。
「心傷ついた」受験も、「心を伸ばす」受験に変容してほしいのです。
「癒し3カ条」
私の体験からは、「癒やし3カ条」を提案します。
1.「 健康管理も実力のうち」
今日の子どもに求められている「生きる力」の一つに、「健康の自己管理」が挙げられています。
その年に流行したインフルエンザのため大学受験に失敗した生徒に、担任教師は厳しい言葉を投げ掛けました。「風邪をひくのも実力のうちだぞ」。
この言葉は、彼の人生訓となりました。うがい、手洗いの励行等は、自立した生き方の基本です。
2.「常に感謝の気持ち」
受験は、子どもたちにとって人生の試練です。
受験は大人の仲間入りするために越えなければならない、現代版「通過儀礼」でもあります。
しかし、その一方で忘れがちなのは、自分を支えてくれている人々への「感謝の気持ち」です。
例えば「お守り」は愛されていることの証でもあります。お守りを握りしめ何度、愛されていることに感謝したことか。
3.「プラス思考の生き方」
受験を通して、プラス思考で生きることが大切であることを知ってもらいたい、と願います。例えば、おみくじで末吉を連続で引いた人が、こんなことはめったにない幸運と気持ちを切り替え、成功したという話を聞いたことがあります。
受験では、「床に落ちた」も、「床に大当たり」といった、気持ちの切り替えが大切になります。
人生経験が長くなると、人生は負け方が大切であると知ります。受験以上に、社会の現実は、もっと厳しいのです。
「実力」とは、マイナスもプラス志向で発想の転換をすることができる力だと思っています。
人生、負け方が大切
人生経験が長くなると、人生は負け方が大切である、と知ります。
受験以上に、社会の現実は、もっと厳しいのです。
実力とは、マイナスもプラス志向で発想の転換をすることができる力だと思っています。
そこで最後に、國學院大學渋谷キャンパス近くの金王八幡宮の掲示板に掲げてあった、『天平の甍』『敦煌』『あすなろ物語』などの名作で知られる作家・井上靖氏の名言を記載しておきます。
「努力する人は希望を語り、怠ける人は不満を語る」

学報掲載コラム「おやごころ このおもい」第29回
