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『コップの原理』で、ソネ方式

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人間開発学部学部長・教授 新富康央

2014年7月18日更新

子育ては、3つの目― 見つめる目、見つける目、見守る目、です。特に「見つめる目」が基本です。今回は、「見つめる目」の子育て方法として、「コップの原理」を提案します。

サッカー元日本代表、北澤豪氏と行った、「子育てトークショー」での育児相談から述べたいと思います。30歳代男性からの質問回答です。

「小学校3年生の息子がいます。私が強い口調で怒ってしまうせいか、子どもが私の顔色をうかがっている様子がわかります。本人は言いたいことが言えず、こちらも本心や本音が聞きにくく、距離を持つような雰囲気が感じられ、どのように接していいのかわからない状況です」

このように、子どもとの心の距離で悩んでいる親御さんは少なくありません。子どもが思春期ともなれば、親が子どもの「壁」になることも必要ですが、その場合も、子どもとの心理的距離は縮めておくべきです。子どもの表面的な出来、不出来と関係なく、一個の人格として全面的に受け入れてやる。これが「見つめる目」の精神でした。しかし、子どもとの心の距離があってはなりません。

心の通わないところで、「ダメ」と言ってしまえば、子どもはさらにかたくなになるだけです。ではそうならないためにはどうしたらいいか。その対処方法を私は「コップの原理」と名づけています。では、「コップの原理」とはなんでしょうか。

水いっぱいに満ちたコップから、もう一方のコップに水を注ごうとすると、水はこぼれてしまい、うまく入りません。そこで、水をコップ八分目ぐらいに減らして、他方のコップに注ぎます。言い換えれば、コップ2分目ほどでも隙間を空けておくということです。頭の中が親でいっぱいにならないということです。

親の思いで頭がいっぱいになると、子どもとの間に心の壁や距離ができてしまうのです。親が親として身構えるので、子どもも自分の気持ちを隠す、あるいは控えるようになります。その結果、子どもが親の顔色をうかがうようになるのです。こんな状態では、思春期の中学生になると今度は逆に、鬱積(うっせき)したストレスなどを爆発的に発散させるようになります。

「コップの原理」の具体例の一つが、「ソネ方式」です。最初は、親の言いたい気持ちを控えて、子どもの気持ちをそのまま「そう、○○なんだネ」、と受け止めてやることです。まさに「ソネ方式」です。子どもの言いたいことを、さらに代弁しても良いと思います。子どもからの「嫌だ」の口答えに対して、「そう、○○だから、嫌なんだネ」、と。 親が2分目だけでも隙間を空けてやることで、子どもは安心して、本音を語り始めるでしょう。その上で、「でもな」、「でもね」と、親としての思いや気持ち、子どもへの要望や期待を、伝えてやればよいのです。

親の要求で頭がいっぱいにならない、「コップの原理」で、「見つめる目」を始めましょう。

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