法学部×教職

2018年12月1日更新

~「教員になる夢」を実現するための4年間~

高等学校教員(公民) 酒井裕一さん

(法学部 法律学科 政治専攻 2018年卒)

“教職の國學院”とも称される國學院大學は、数多くの教員を輩出してきたことでも知られています。政治専攻の卒業生・酒井裕一さんは、教員になる夢を叶えて今、高等学校の教壇に立っています。早期に見通しを立て、目標達成のために必要な学びを自分で選び、考えてきた結果が、キャリアの実現につながったと酒井さんは振り返ります。

早期にビジョンを定め、自分で考えて動く

――現在のお仕事内容を教えてください。

 

出身地である埼玉県の公立高校で、2018年の春から教壇に立っています。教員として第一歩を踏み出したこの半年間は毎日が新たな経験の連続で、本当に早かったですね。今は3年生のクラス副担任を担当し、科目は「現代社会」を受け持っています。課外活動では硬式野球部の顧問も務めています。仕事で最も力点を置いているのは、やはり教材研究です。たくさんの引き出しを持つベテランの先生方と比べたら、1年目の私は「まったくストックが無い」状態からのスタート。しかも授業中は、生徒たちが興味津々に前のめりで聞いてくれる時も、逆に私の説明不足で今ひとつピンと来ていない時も、ストレートに気持ちが伝わってきます。だからいい授業をするためにも、教材研究は決して手を抜けません。自分自身が納得できるまで準備をした上で、授業本番に臨むことを常に課しています。教員ではありますが、3年生の生徒たちとの年齢差はわずか5歳。進路相談などでは生徒たちの「アニキ」のような気持ちで、いつも応じています。

 

 

――教職をめざしたきっかけは?

 

高校時代にふたりの恩師に出会ったことがきっかけです。ひとりは当時所属していた硬式野球部の監督であり、「国語」の教員でもあった先生です。この恩師の「生徒との対話を重視する姿勢」は、私が教職にあこがれを抱いた原点です。そしてもうひとりが「政治・経済」の先生です。この恩師からはまさに政治と経済のおもしろさを教えていただきました。そこで私は國學院大學に入学当初から、高校の教員になることを目標に据えていました。卒業までの4年間、この目標がぶれることは一度もありませんでした。むしろ大学での学びや母校での教育実習を通じて、教職に就きたいという想いが段々と強くなったほどです。早い時期から将来のビジョンを定め、そのために大学4年間をかけて自分に必要な学びを見極め、行動したことが、夢の実現につながったのだと考えています。

厚みある専門性がアドバンテージに

――学生時代はどのようなスタンスで履修科目を選びましたか?

 

義務教育課程や高校までの学びとの違いのひとつに、大学では高度な専門性を持つ研究や、学際性豊かな学問にふれられることが挙げられます。そこで私は、1年次から自分が興味・関心をそそられた分野は意欲的に科目履修しました。それらと並行して、教職課程の授業を取っていました。

 

 

――法学部の専門科目では、どの科目に力を入れましたか?

 

小原薫先生の「日本政治思想史」のゼミナール(演習)と、藤嶋亮先生の「比較政治」の授業です。小原先生のゼミでは、日本の政治・社会をとりまく貧困や格差問題などの諸問題についてテキストを読み、学生同士で議論を深めていきました。そして3年次と4年次の後期には、それぞれ1万字のゼミ論文を書き上げました。3年次のゼミ論文では、かねてより関心があった第二次世界大戦中の日本の政治状況と軍事をめぐる問題について研究し、文献調査のため国立公文書館へも足を運びました。自分の関心あるテーマということで1万字という字数はさほど苦にはなりませんでした。他方、藤嶋先生の授業では、政治学の一分野である「比較政治学」の視点で、旧共産諸国の「民主化」をキーワードに中欧・東欧の民族、宗教、革命などについて考察していきました。それは、知的好奇心を大いに刺激する内容であったことを覚えています。高校教員に専門性は不可欠です。だからこそ、政治専攻の専門科目を通じて自身の知識に厚みを持たせたことは、今はアドバンテージになっていると考えています。

 

 

――2年次には「政治インターンシップ」にも参加していますね。この感想は?

 

政治インターンシップ」は、政治専攻の学生にはぜひ勧めたい科目のひとつです。それほど、満足度の高い内容でした。私は衆議院議員のもとで2ヶ月間のインターンシップに参加しました。汗をかきながらの支援者への挨拶まわりや街頭での応援演説、熱気を帯びた政策部会での活動など、地元と国会とをひっきりなしに行き来する議員の姿は、それまで私がメディア等を通じて抱いていた「政治家」のイメージとは異なるものでした。この政治インターンシップで、初めて「生の政治」にふれることができたと思います。高校生たちに政治や経済を教える立場となった今、リアリティを持って語る上で欠かせない経験となっています。

学内のしくみをフルに活かす

――現在のキャリアを実現するために利用した、教職サポートについて教えてください。

 

私は教員就職関連の支援を行う学内の「教職センター」を3年次から利用しました。専門性を高める法学部の授業、教員採用試験に向けての基礎的・基本的な力を身につける教職センターの講座、そして自主学習の3本柱で教員採用試験には十分対応できると考え、Wスクールはしていません。対策では準備段階から、小論文が苦手であることを自覚していました。そこで教職センターで、教員OBであるベテランの先生に小論文を添削してもらうことで、論理的な文章を書くスキルを磨きました。小論文は、最初に提出した答案が真っ赤になって返され、再び同じテーマで書いて、また赤が入った答案が戻されてと、ひとつのテーマで何度も書き直しました。真っ赤になった答案を初めて目にした時は、さすがに少しショックを受けました。しかし、最初から誤魔化されずに弱点を明快に指摘していただけたことが、実はとてもよかったのかもしれません。さらに、どこがダメなのかを自分で考えながら書き直していったことも、力をつける要因になったのではないでしょうか。

 

――今後の抱負をお願いします。

 

私が「公民」の教員をめざすきっかけとなった高校時代の恩師は、今年度限りで定年を迎えるということで、先日それまでの教材研究の資料一式をごっそり譲り受けました。その膨大な資料の量と重さは、大ベテランの先生であってもひとつの授業をするために大変な時間と労力をかけて教材研究していることの証であり、教材研究の大切さを新人の私に伝えるには十分すぎるものでした。この教員としての真摯な姿勢は、これからも常に続けていきたいです。選挙年齢が18歳に引き下げられたいわゆる「18歳選挙権」によって、これまで以上に若い世代に向けて政治に対する関心を高める必要性は高まっています。そんな今だからこそ、教育者としての私の責任はより大きいと、受け止めています。

プロフィール

酒井裕一(さかい ゆういち)さん/埼玉県内の公立高等学校勤務/法学部 法律学科 政治専攻2018年卒/大学3年次には東日本大震災復興支援ボランティアに参加。小中高と10年間野球に打ち込んだ。高校では硬式野球部の主将・捕手を務め、3年夏の高校野球・埼玉大会ではベスト16入りを果たす。趣味は車とバイク。〔プロフィール写真は、2018年3月、國學院大學卒業式での一枚〕

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