法学部×社会福祉職

2018年12月1日更新

~人々を支える仕事との出会い~

社会福祉法人 原町成年寮勤務 永坂真琳さん

(法学部 法律学科 法律専攻2017年卒)

 

大学入学当初は、教職志望だったと明かす法律専攻・卒業生の永坂真琳さん。在学中のある出会いをきっかけに目標が変わり、卒業後の現在は社会福祉の世界で、障がいを持つ人々をサポートする職務に携わっています。その原点には、数々の「生きた現場」での経験、そして学生時代のゼミでの学びが根ざしているといいます。

教職志望から、社会福祉の世界へ

――現在のお仕事内容を教えてください。

 

東京都内にあるグループホームの生活支援員として働いています。利用者の皆さんは20代からご高齢の方までと年齢層は幅広く、障がいの程度もさまざまです。入職したての頃は覚えることがあまりにも多く、思いもよらない事態にあたふたしてしまったこともありました。それに比べると2年目の今は、仕事全体に安定感が出てきましたね。そして、個々の利用者さんについても理解が深まってきたと感じています。毎日の仕事で得るやりがいは、本当に大きいです。利用者さん一人ひとりと向き合う中で、その方の人生の機微にふれながら支援できることは心から楽しいですし、私と利用者さんとが、互いに影響を与えあいながら人間らしい関係性を築けている。そう実感しています。

 

 

――社会福祉の世界で働こうと思ったきっかけは?

 

大学1年生の時に、障がいを持つ方の外出などを補助するガイドヘルパーのアルバイトをしたことが、この世界に関心を持った最初のきっかけです。それまで、障がいを持つ方々と直接関わる機会が無かった私にとって、ここで出会った皆さんがとても朗らかで、初対面の私にもすぐに打ち解けてくださったことは、大きな気づきを与えてくれました。たわいのない世間話をしたり、生きることの核心にふれる話を伺ったり、個性豊かな人柄を知ったり、そうした機会を通じて、次第にこの世界で働きたいと考えるようになりました。でも、もともと私が國學院大學に進学した一番の理由は“教職の國學院”で、中学校・高校の教員をめざそうと考えていたからです。2年次には既に現在の進路を視野に入れていたものの、教職課程は最後まで履修を続け、教育実習にも参加して教員免許は取得しました。

物事にも人にも、まずはフラットに向き合う

――2年次から安田恵美先生のゼミナール(演習)で学んでいますね。安田ゼミを選んだ理由は?

 

私は安田恵美先生(刑事政策)のゼミの1期生です。本来、法学部では、プレゼミの受講やゼミの見学会・発表会に参加して事前に見極めた上でゼミを選ぶことができます。しかし安田先生は当時初めてご着任される先生ということで、参考にする情報も先輩の口コミもほぼ無い状態でした。それでも、先生が「高齢犯罪者の権利保障と社会復帰」という社会福祉にかかわるテーマで長年ご研究されていることから、半ば祈る気持ちで安田ゼミに飛び込みました。実際にゼミが始まってみると、そんな心配は杞憂であったことがすぐにわかりました。何よりも、先生がとても気さくなお人柄だったのです。「(研究室に)いつでも来てや!」といってくださるので、ゼミ論文の相談はもちろん、日常生活や就職活動の相談など、何か用件をつくっては先生の研究室に通っていました。先生のフィールドワーク先であるフランス土産の紅茶をいただきながら、皆で持ち込んだお菓子をつまみ、ひとしきりお喋りに興じていたのも懐かしい思い出です。今では安田ゼミの1期生であることが、私の誇りです。

 

――安田ゼミでの学びは、現在のお仕事でどのように生きていますか?

 

「リアルな現場」を体感する機会の多さは、まさに安田ゼミの学びの醍醐味であり、今仕事をする上でも生きていると思います。安田ゼミでは3年次の夏に関西地方の刑務所と、日雇い労働者が多く暮らす街、大阪市のあいりん地区を訪ねました。初めて目にする「塀の中」の鉄格子の太さや厳重な扉の開け閉めには驚きましたし、テレビドラマでよく目にする面会室が、実物は思いのほか簡素なつくりであったことも新鮮な発見でした。また、高齢の受刑者の多さもとても印象に残りました。一方、NPOで活動する方の案内のもと歩いたあいりん地区では、独特の活気をおびた街の空気を肌で感じてきました。これらの現場で得た知見と文献調査等をベースに、3年次と4年次には「発達障害のある少年の犯罪と社会復帰」「累犯障がい者の実態と社会復帰支援」をテーマにそれぞれゼミ論文をまとめました。今振り返ると、安田ゼミで得たもので最も大きかったのは、先入観や偏見を持たずに向き合える姿勢だと考えています。どのような人にも事態にも、まずはフラットに向き合う。これも、先生の人柄と現場でのリアルな体感があってこそ身についたものかもしれません。

インターンシップで「現場の知恵」を吸収

――社会福祉の世界で活躍するために、大学在学中から準備していたことはありますか?

 

学生のうちに数多くの人々にかかわり、さまざまな現場の生きた知恵を吸収することで、どのような人がいて、どのような支援が必要なのかを知り、自分の引き出しを増やしたいと考えていました。そこで、社会福祉関連のインターンシップを自分で探して参加しました。私がインターンシップ先として選んだのは、路上生活者の方向けの食堂の運営・就労支援などを行う横浜市内のNPO法人です。このNPO法人の活動拠点で7日間のインターンシップを経験しました。就職活動を始めたばかりの頃は、福祉系の大学・学部で学んだ人と比べたら知識も経験も乏しい私が、最初からこの世界に飛び込むことに、少し悩んだ時期もありました。しかし、やはり自分の進むべき道は社会福祉の仕事のほかにはないと、最終的には気持ちを固めました。そして安田先生の「がんばりや!」の言葉も、私の背中を押してくれました。

 

 

――永坂さんが、法律専攻の4年間で最も自身の成長を感じる点は?

 

教科書や専門書で学ぶだけでは得られない現場での豊かな経験を通じて、物事を多面的に見る力を身につけられた点です。そして、4年間を通じて社会の骨格である「法律」の分野で「刑事政策」や「民法」「行政法」も学んで得た知識は、行政とかかわる機会も多い今の仕事では、今後必要になる場面も多くなると考えています。また、障がいを持つ方には学びへの高い意欲を持つ方も多くいらっしゃるので、教職課程で学んだことも将来的には生きてくるかもしれません。障がいのある方とそうでない方とのオープンな関係性を築くには、課題が山積しているのが現状です。そのような中で、よりよい関係を結ぶための橋渡しができる人材になることが、これからの目標です。

プロフィール

永坂真琳(ながさか まりん)さん/社会福祉法人 原町成年寮勤務、生活支援員/法学部 法律学科 法律専攻2017年卒/國學院大學在学中は法学部の専門科目と教職課程とで、1限から5限までほぼ授業で埋まるほど多忙な日々を送る。現在、うさぎ、ハムスター、インコの3匹とともに暮らす。趣味はホラー映画の鑑賞。〔プロフィール写真は、卒業旅行先・台湾での思い出の一枚〕

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