法学部×法曹界

2018年12月1日更新

~弁護士としての出発点~

 

弁護士法人 てんとうむし法律事務所 勤務  川村正衡さん

(法学部 法律学科 法律専門職専攻 2014年卒)

 

 

2016年に司法試験に合格し、現在は弁護士として活躍するのが法律専門職専攻の卒業生・川村正衡さんです。ロースクールの受験、そして司法試験というふたつの難関突破の原動力となったのは、國學院大學で鍛えた「基礎力」と言い切ります。そんな川村さんに、大学入学から卒業までのお話を聞きました。

期待以上の環境に大きな手応え

――弁護士をめざしたきっかけを教えてください。

小学生のころ、教養系のバラエティ番組に出演する弁護士をみて、初めて「弁護士」という職業を意識するようになりました。いわゆる弁の立つ、法律家の姿にあこがれを抱くようになったのです。同時に社会の基盤である法律そのものにも興味を持ちました。こうして大学進学を考える頃には弁護士になることが将来の目標となり、大学卒業後にはロールクール(法科大学院)へ進むことも視野に入れました。

 

――法律専門職専攻に進学する上で、決め手となったポイントは?

法律専門職専攻は、徹底した少人数教育と、司法試験を見据えたカリキュラム設計に魅力を感じました。そして実際に入学してみると、期待した以上の環境がありました。在学中はすべての先生方が、学生一人ひとりの顔と名前はもちろん、個々に最適な指導法や学習・成績の状況など細部に至るまでしっかりと把握してくださっていました。4年間、まさに言葉通り手塩にかけて私たちを育ててくださったことに、今でも心から感謝しています。また、ロースクール進学と司法試験突破という同じ目標を持つ仲間に囲まれていたので、互いに切磋琢磨しあい、刺激を与えあいながら、高いモチベーションを保ち続けることができました。

 

 

――高校生の時点で弁護士になる目標を立て、そのための準備も相当早くに始めたのでしょうか?

 

弁護士になる目標に向けて本格的に動き出したのは、大学に入学してからです。入学時点での私の法律に関する知識は、一般的な法学部生と大差は無かったと思います。それこそ「六法」で条文を引くことから覚えるという、法学を学ぶ基礎中の基礎から始めました。しかし猛烈なスタートダッシュで学ぶ法律専門職専攻では、1年次、2年次のうちに主要な基礎法律科目をすべて学ばなければなりません。この2年間の学習内容は非常に密度が高く、必修の授業で毎日、時間割が埋まったほど。しかし最初に法学の磐石な土台をつくったことが、実はとても重要だったのだと今は受け止めています。ここから3年次のゼミナール(演習)での応用・発展へと着実につながり、さらに3年次の後半からはロースクールの受験勉強に集中することができました。だからといって、大学4年間が勉強一色に染まったわけではなく、3年次に上がる直前までは大学の魅力を外部に向けて発信する学生サークルでも活動していました。それなりに大学生らしい、メリハリある学生生活を楽しみましたね。

成長のカギは、初年次に養う「基礎力」

――川村さんが大学4年間で特に力を入れた科目・研究を教えてください。

 

最初に学んだ科目であり、最も思い入れも強い科目は「憲法」です。1年次・2年次の「憲法」の基礎科目では、授業前に毎回マーク式の小テストがありました。当初は、目の前にあるテストをこなしていくのに精一杯でしたが、今振り返ると実はこの小さな積み重ねが、基礎トレーニングになっていたのだと感じています。このおかげで2年次が終わる頃には「憲法」の基礎知識がしっかりと身についていました。司法試験をめざす上では、計画的な学習が継続できるかということもカギとなります。そんな勉強のクセのようなものが、初年次に付いていたのかもしれませんね。さらに3年次の植村勝慶先生(憲法)の「応用演習」では、旧司法試験の問題を素材に、皆でディスカッションを重ねながら検証を行い、学びを深めました。具体的な事例を使ってどう解決するかを徹底的に考え抜き、それまでバラバラだった知識をあらためて整理し、体系化していくことができました。さらに自分の考えを筋道ある文章にして論じていく法学の醍醐味にもここで出会いました。こうして力をつけていった「憲法」は、ロースクール受験時も、入学後も、私の得意科目のひとつになりました。

 

 

――高橋信行先生のゼミナール(演習)でも学んでいますね。どのようなことを学びましたか?

 

4年次の高橋信行先生(行政法)のゼミでは、判例をもとに学びを深めました。例えば、猫カフェの深夜営業が規制対象となった判例をテーマにした際は、私たちも事前に猫カフェに足を運び、規制にいたるまでの立法事実が妥当なのかを考えました。現場でのリアルな体験を踏まえた上で、規制する側はどうみているのか、それゆえにどういう判断を下したのかということを、順を追って突き詰めていったのです。この高橋ゼミでの学びを通じて、生活の中で法律は実際にどう適用され機能するのかというのを、自らの目と耳でしっかりと感じ取ることができました。そしてここから、私自身の法のプロフェッショナルとしての思考も、机上論ではない、より血肉の通ったものになっていったように感じています。

授業と自主学習に、シンプルに絞る

――司法試験への挑戦は、大変険しい道というイメージがあります。壁に直面した時期はありましたか?

 

大学4年間は司法試験対策の予備校に通っておらず、志願者全体における自分の立ち位置がわからないという一抹の不安はありました。一方で法律専門職専攻の授業と自主学習でしっかり学んでいるという自負はありましたので、まったく見込みが無いポジションに自分がいると悲観することはありませんでした。実際にロースクールも3年制ではなく2年制で合格しましたので、実力はついていたのだと思います。今、弁護士の同期の話を聞くと、ほとんどがWスクールの経験者です。それに比べると私は大学の授業と自主学習のふたつに絞って集中するという、自分に最適な勉強方法を早い段階で見つけられていたことが、結果的にはよかったのかもしれませんね。ロースクールでは、法律文章をどのように伝わりやすくするかというテクニックの部分を特に磨きましたが、國學院大學の4年間で基礎力がついていなければ、ここで力を出すことはできません。やはり基礎力ができていたからこそ、その先で応用的な部分をしっかりと発揮できたのだと思います。

 

 

――「今につながっている」と感じる大学時代の学びは?

 

植村勝慶先生(憲法)の「応用演習」のある答案で、教科書通りの解答をした際、先生から「なぜそうなるのか」と本質をつく問いを返されたことがありました。当初私は「教科書に書いてあるから」という程度の気持ちで構えていました。しかし、あらためて振り返ると、法律文書は丸暗記したことをそのまま書くのではなく、自分なりに理解を深め、納得した上で書くプロセスが大切であると気づくことができたのです。法律を学ぶとは、言葉を変えれば思考のトレーニングともいえます。そしてこれは、法律専門職専攻でお世話になったすべての先生方のご指導に共通していたスタンスなのかもしれません。例えば中川孝博先生(刑事訴訟法)からは、どのように法律の文章を書くのかという「型(スタイル)」を学びましたが、この「型」を消化し、いかにして自分の武器として磨いていくのかということを常に問われていたように思います。こうして養われた姿勢が、今後も法のプロフェッショナルとして活躍する上で、自分の核になっていくのではないでしょうか。

 

プロフィール

川村正衡(かわむら まさひら)さん/弁護士法人 てんとうむし法律事務所勤務・弁護士/法学部 法律学科 法律専門職専攻2014年卒/立教大学大学院法務研究科を修了後、最高裁判所司法研修所を経て2017年12月より現職。将来は、司法修習生時代の仲間とともに、地元・埼玉での弁護士事務所開業をめざす。

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