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武田神道文化学部長 卒業生に送る言葉(平成29年3月19日)

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神道文化学部長 武田秀章

2017年3月19日更新

「その汝が持てる生大刀・生弓矢以ちて…」

いよいよ皆さんの「門出の時、出立の時」が来ました。
けれども、私ども教職員にとっては、四年間を共に過ごした皆さんとの「別れの時」です。うたた感慨を禁じえません。

2903神文卒業式祝辞01

ここでは、神道の古典『古事記』で最も感動的な「別れの場面」から、その「訣別の言葉」を、皆さんに贈りたいと思います。
須佐之男命が、自らの「愛弟子」とも言うべき大国主神に贈った「別れの言葉」です。 それはこんな言葉です。
「その汝が持てる生大刀・生弓矢以ちて、…おれ大国主神となれ、…底津石根に宮柱太しり、高天原に氷椽高しりて居れ、是奴よ…」

2903神文卒業式祝辞02

藤本准教授 渋谷・ヒカリエにて

そもそも大国主神は、当初、多くの兄弟の中で、最も虐げられていた「惨めな神」に過ぎませんでした。
大国主神は、名にし負う大国主神―大いなる国作りの主―としてと生まれ変わるための「力」を獲得するために、須佐之男命の棲む地の底の他界、「根の堅洲国」に赴いたのです。

2903神文卒業式祝辞03

菅准教授 福島県いわき市にて

待ち構えていた須佐之男命は、大国主神に矢継ぎ早の「試練」を与えます。
まず一日目の試練が「蛇の室の試練」。
二日目の試練が「ムカデと蜂の室の試練」。
三日目の試練が「火責めの試練」。
須佐之男命の本意は、大国主神を、国作りの担い手にふさわしい、強くたくましい神へと鍛え上げることでした。

2903神文卒業式祝辞04

いよいよ大国主神は、須佐之男命の最後の試練、「八田間の大室の試練」に臨みます。
ここで大国主神は、須佐之男命の油断の隙に乗じて、そのレガリアである生太刀・生弓矢を力づくで奪い取って、逃げ去っていきます。
あとを追った須佐之男命は、黄泉比良坂(よもつひらさか)において、遠ざかってゆく大穴牟遅神のうしろ姿をはるばると見送りながら、先の「別れの言葉」を、大声で呼ばわったのです。
「おのれこそが、大国主神となれ!」と。

2903神文卒業式祝辞05

さて、皆さん。自分自身のことを思い出してください。
皆さんもまた、大国主神が須佐之男命のもとを訪ねたのと同じ様に、自らの成長を齎す「力」の獲得を期して、本学に入学してきたのではないでしょうか。
大国主神が須佐之男命から四度の試練を与えられたように、皆さんもまた本学で四年間の試練に臨んだのではないでしょうか。

2903神文卒業式祝辞06

大国主神が一日目の「蛇の試練」を乗り越えたように、皆さんも大学一年目の試練を乗り越えました。
大国主神が二日目の「ムカデと蜂の試練」を乗り越えたように、皆さんも大学二年目の試練を乗り越えました。
大国主神が三日目の「火責め」の試練を乗り越えたように、皆さんも大学三年目の試練を乗り切りました。

2903神文卒業式祝辞07

大国主神の正念場は、須佐之男命の最後の試練、「八田間の大室の試練」でした。
皆さんもまた大学生最後の学年、締め括りの四年次こそが、最大の正念場だったのではないでしょうか。
四年次は大学の学びの総仕上げの年です。演習論文の重圧がのしかかります。卒業か否かの瀬戸際に追い込まれた人もいたでしょう。
そして言うまでもなく最大の試練は就職・奉職です。その厳しさ、辛さはの程は、誰よりも皆さんが一番よくご存じです。
こうした最終学年の諸々の試練を乗り越えて、皆さんは、われとわが手で、見事自らの武器を掴みとり、自らの進路を切り開いたのです。

2903神文卒業式祝辞08

皆さん、どうかこの須佐之男命の最後のお呼びかけのままに、われとわが手で得た生大刀・生弓矢をもってーすなわち大学の学びで勝ち取った武器をもって―力強く人生を切り開いていってください。
須佐之男命は「おのれこそが大国主神となれ、国作りの担い手となれ」と呼ばわれました。
皆さんが次代の日本の国作りの担い手となって、全国津々浦々で生き生きと活躍することを心より祈りつつ、『古事記』の須佐之男命のメッセージを、惜別の言葉として贈りたいと思います。

「その汝が持てる生大刀・生弓矢以ちて、…おれ大国主神となれ、…底津石根に宮柱太しり、高天原に氷椽高しりて居れ、是奴(ら)よ…」

本日はまことにおめでとうございました。

平成二十九年三月十九日
神道文化学部長 武田秀章

2902神道学専攻科舞奉納02

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