第3回公開講座「國學院の古代研究」
2011年5月26日更新
1.開催目的
本公開講座は、國學院大學北海道短期大学部との共催により、同大学部学生および滝川市民に「國學院の学術資産に見るモノと心」グループの研究成果の一部として、本学における古代研究に関連する学問を知っていただくことが目的である。本公開講座は、北海道滝川市の全面的な後援を受けて開催された。
2.開催日時
平成21(2009)年10月3日(土)13時~16時
本公開講座は、國學院大學北海道短期大学部との共催により、同大学部学生および滝川市民に「國學院の学術資産に見るモノと心」グループの研究成果の一部として、本学における古代研究に関連する学問を知っていただくことが目的である。本公開講座は、北海道滝川市の全面的な後援を受けて開催された。
2.開催日時
平成21(2009)年10月3日(土)13時~16時
3.開催場所
國學院大學北海道短期大学部(北海道滝川市文京町)402教室
4.発題者・発題タイトル・司会
〈発題者〉
遠藤 潤 (國學院大學伝統文化リサーチセンター助教)
「近世国学の古代研究―平田篤胤を焦点として―」
中村 耕作 (國學院大學伝統文化リサーチセンター助手)
「古代の心に迫る國學院の考古学」
月岡 道晴 (國學院大學北海道短期大学部准教授)
「折口信夫の古代学―まれびと論を中心に―」
秋元 信英 (國學院大學北海道短期大学部教授、國學院大學伝統文化リサーチセンター客員教授)
「明治二十一年、松本愛重『国学』の一考察」
〈総合司会〉
武田 秀章 (國學院大學伝統文化リサーチセンター教授、「國學院の学術資産に見るモノと心」グループ代表者)
〈進行〉
渡邉 卓 (國學院大學伝統文化リサーチセンターポスドク研究員)
5.概要
本公開講座は國學院大學北海道短期大学部との共催であり、滝川市の後援をうけ開催された。講座の対象は同短期大学部学生および滝川市民であり、「國學院の古代研究」をテーマとして本学の学問史について発表をおこなった。当日の進行は以下の通りである。
國學院大學北海道短期大学部(北海道滝川市文京町)402教室
4.発題者・発題タイトル・司会
〈発題者〉
遠藤 潤 (國學院大學伝統文化リサーチセンター助教)
「近世国学の古代研究―平田篤胤を焦点として―」
中村 耕作 (國學院大學伝統文化リサーチセンター助手)
「古代の心に迫る國學院の考古学」
月岡 道晴 (國學院大學北海道短期大学部准教授)
「折口信夫の古代学―まれびと論を中心に―」
秋元 信英 (國學院大學北海道短期大学部教授、國學院大學伝統文化リサーチセンター客員教授)
「明治二十一年、松本愛重『国学』の一考察」
〈総合司会〉
武田 秀章 (國學院大學伝統文化リサーチセンター教授、「國學院の学術資産に見るモノと心」グループ代表者)
〈進行〉
渡邉 卓 (國學院大學伝統文化リサーチセンターポスドク研究員)
5.概要
本公開講座は國學院大學北海道短期大学部との共催であり、滝川市の後援をうけ開催された。講座の対象は同短期大学部学生および滝川市民であり、「國學院の古代研究」をテーマとして本学の学問史について発表をおこなった。当日の進行は以下の通りである。
・発題1:遠藤 潤「近世国学の古代研究―平田篤胤を焦点として―」
遠藤潤は、平田篤胤の古代研究を通して、近世国学における古代研究について報告をおこなった。遠藤はまず近世国学から國學院への繋がりを述べたのち、(1)主要な著書はどの時期に著わされたのか、(2) 篤胤が「古伝」を重視したのはなぜか、(3)篤胤の考えた「古史」とは? という3つの観点から、篤胤の古代研究を概観した。観点(1)では、篤胤の生涯を振り返りながら、主要著書が著わされた時期が確認された。観点(2)では、『霊能真柱』が取りあげられ、「古史」「古伝」を近代的な科学知識(天体論)と結びつけて理解しようとしたことを論じた。観点(3)では、篤胤の著書のなかで最も重要なのは、『古史成文』『古史徴』『古史伝』の3つであり、これらでは篤胤が「神代」を含めた歴史を考え、古伝説の理解において「祝詞」を重視したこと。『日本書紀』のように漢文で書かれたものであっても、一定の評価を与えていたことが指摘された。また複数の文献を比較・考証をすることで研究を進めていたことに着目し、これは篤胤のみならず、同時代的に一般化しつつあった傾向であったこと。その前提として、学知の公開や諸学者との交流があったことを指摘した。
遠藤潤は、平田篤胤の古代研究を通して、近世国学における古代研究について報告をおこなった。遠藤はまず近世国学から國學院への繋がりを述べたのち、(1)主要な著書はどの時期に著わされたのか、(2) 篤胤が「古伝」を重視したのはなぜか、(3)篤胤の考えた「古史」とは? という3つの観点から、篤胤の古代研究を概観した。観点(1)では、篤胤の生涯を振り返りながら、主要著書が著わされた時期が確認された。観点(2)では、『霊能真柱』が取りあげられ、「古史」「古伝」を近代的な科学知識(天体論)と結びつけて理解しようとしたことを論じた。観点(3)では、篤胤の著書のなかで最も重要なのは、『古史成文』『古史徴』『古史伝』の3つであり、これらでは篤胤が「神代」を含めた歴史を考え、古伝説の理解において「祝詞」を重視したこと。『日本書紀』のように漢文で書かれたものであっても、一定の評価を与えていたことが指摘された。また複数の文献を比較・考証をすることで研究を進めていたことに着目し、これは篤胤のみならず、同時代的に一般化しつつあった傾向であったこと。その前提として、学知の公開や諸学者との交流があったことを指摘した。
・発題2:中村耕作「古代の心に迫る國學院の考古学」
中村耕作は、大場磐雄の提唱した「神道考古学」を素材に、國學院の考古学についての報告をおこなった。中村は、(1)「考古学」を「物質資料(モノ)をもとに人類の過去を研究する学問」であると規定し、モノが生まれた背景となる「心」を検討する必要があることを述べた。(2)坪井正五郎・高橋健自・鳥居龍蔵という3人の学者を取り上げ、國學院における黎明期の考古学を概観した。(3)大場磐雄の「神道考古学」について説明し、それが「考古・民俗・文献三位一体の神道研究」であると規定し、鳥居龍蔵・折口信夫・宮地直一に学んだことが大きいことを指摘した。さらに学問の特徴として、「特徴的な自然景観(ランドマーク)に対する信仰の研究」であり、祭祀遺跡や神社・地名の分布から、畿内勢力の動向を考えていることを挙げた。(4)「神道考古学」の新しい展開としての「祭祀考古学」に触れ、國學院において学術資料館・「祭祀考古学会」・21世紀COEプログラム・伝統文化リサーチセンターにおいて、現在進行形で取り組まれていることを述べた。
中村耕作は、大場磐雄の提唱した「神道考古学」を素材に、國學院の考古学についての報告をおこなった。中村は、(1)「考古学」を「物質資料(モノ)をもとに人類の過去を研究する学問」であると規定し、モノが生まれた背景となる「心」を検討する必要があることを述べた。(2)坪井正五郎・高橋健自・鳥居龍蔵という3人の学者を取り上げ、國學院における黎明期の考古学を概観した。(3)大場磐雄の「神道考古学」について説明し、それが「考古・民俗・文献三位一体の神道研究」であると規定し、鳥居龍蔵・折口信夫・宮地直一に学んだことが大きいことを指摘した。さらに学問の特徴として、「特徴的な自然景観(ランドマーク)に対する信仰の研究」であり、祭祀遺跡や神社・地名の分布から、畿内勢力の動向を考えていることを挙げた。(4)「神道考古学」の新しい展開としての「祭祀考古学」に触れ、國學院において学術資料館・「祭祀考古学会」・21世紀COEプログラム・伝統文化リサーチセンターにおいて、現在進行形で取り組まれていることを述べた。
・発題3:月岡道晴「折口信夫の古代学―まれびと論を中心に―」
月岡道晴氏は、有名な「まれびと論」を素材として、折口信夫の古代学について報告をおこなった。月岡氏は、我々が抱いている折口信夫のイメージから説き起こし、「国文学者」「民俗学者」「歌人」としての折口を概観した。これらの要素は、一見バラバラに見えるものの、その中心に「まれびと」という存在を置いたことを指摘した。ついで折口の「まれびと」論を、スサノヲ神話を素材に概観し、彼の理論の優れている点は、「まれびと」論を神観念の起源、祭りの起源に留めず、その仮設モデルに基づいて日本文化の多様な層を読み解こうとした点にあると論じた。最後に、折口の境遇について触れ、彼にとっての「まれびと」論の意味を述べ、折口にとって研究・創作・出生を追求することは三位一体のものであったと論じた。
月岡道晴氏は、有名な「まれびと論」を素材として、折口信夫の古代学について報告をおこなった。月岡氏は、我々が抱いている折口信夫のイメージから説き起こし、「国文学者」「民俗学者」「歌人」としての折口を概観した。これらの要素は、一見バラバラに見えるものの、その中心に「まれびと」という存在を置いたことを指摘した。ついで折口の「まれびと」論を、スサノヲ神話を素材に概観し、彼の理論の優れている点は、「まれびと」論を神観念の起源、祭りの起源に留めず、その仮設モデルに基づいて日本文化の多様な層を読み解こうとした点にあると論じた。最後に、折口の境遇について触れ、彼にとっての「まれびと」論の意味を述べ、折口にとって研究・創作・出生を追求することは三位一体のものであったと論じた。
・発題4:秋元信英「明治二十一年、松本愛重『国学』の一考察」
秋元信英は、明治21年に「哲学館講義録」の1冊として刊行された松本愛重の『国学』について報告をおこなった。秋元はまず松本愛重の伝記に不明な点が多いこと、また『古事類苑』の副編集長として、その学究生活の大半を捧げたことを指摘した。ついで『国学』の内容に入り、以下の点についての指摘をおこなった。(1)国学について述べるのではない。(2)学問としての国学の立場から「神代史」を考える。(3)平田篤胤の立場を切り捨てている。(4)道徳的な解説がない。(5)『記紀』に忠実。(6)後世の史書を異説・異伝として扱う。その手法としては、次の4点を挙げた。(1)佐々木信綱らと同じように、東京大学のお雇い外国人であったバジル・ホール・チェンバレンを尊敬している。(2)『古事記』を優先的に考える。(3)強引な解釈はない。(4)幽界について論じない。最後に『国学』には『古事類苑』の副編集長、公家日記の大家としての松本愛重の前兆が窺え、それは國學院の学風に繋がっていくことを論じた。
秋元信英は、明治21年に「哲学館講義録」の1冊として刊行された松本愛重の『国学』について報告をおこなった。秋元はまず松本愛重の伝記に不明な点が多いこと、また『古事類苑』の副編集長として、その学究生活の大半を捧げたことを指摘した。ついで『国学』の内容に入り、以下の点についての指摘をおこなった。(1)国学について述べるのではない。(2)学問としての国学の立場から「神代史」を考える。(3)平田篤胤の立場を切り捨てている。(4)道徳的な解説がない。(5)『記紀』に忠実。(6)後世の史書を異説・異伝として扱う。その手法としては、次の4点を挙げた。(1)佐々木信綱らと同じように、東京大学のお雇い外国人であったバジル・ホール・チェンバレンを尊敬している。(2)『古事記』を優先的に考える。(3)強引な解釈はない。(4)幽界について論じない。最後に『国学』には『古事類苑』の副編集長、公家日記の大家としての松本愛重の前兆が窺え、それは國學院の学風に繋がっていくことを論じた。
・討議
4人の発表ののち、武田秀章の進行により、フロアーに開くかたちで討議をおこなった。まず短期大学部生より、遠藤に向けて、『霊能真柱』に見える「死者の霊魂は黄泉国に行かない」という点を詳しく説明してほしいとの質問があった。これに対して遠藤は、篤胤の思考法として、いろいろな世界の問題を「現実」の問題として考える傾向がある点を説明し、また篤胤は、これまでの信仰の世界が、科学的な思考法によって否定されていくなかで、我々には「見えない世界」があることを述べることによって、これまでの信仰の世界の居場所を確保しようとしたことを説明した。
ついで同じ短期大学生より、月岡氏に向けて、日本の神は「祭りのような特別な日に、遠く離れた他界から人間世界を訪れる存在」であるという点についての質問があった。月岡氏は、まずまれびとは春や秋に収穫の力をもってやってくる存在であることを説明した上で、そのまれびとがやってきた「何でもない日」を演出するために、まれびとの側からそれを「祭り」にして、人間の側がそれを繰り返していくことによって「特別な日」となることを説明した。
最後に締めくくりとして講演者の秋元が挨拶し、本公開講座を終了した。
4人の発表ののち、武田秀章の進行により、フロアーに開くかたちで討議をおこなった。まず短期大学部生より、遠藤に向けて、『霊能真柱』に見える「死者の霊魂は黄泉国に行かない」という点を詳しく説明してほしいとの質問があった。これに対して遠藤は、篤胤の思考法として、いろいろな世界の問題を「現実」の問題として考える傾向がある点を説明し、また篤胤は、これまでの信仰の世界が、科学的な思考法によって否定されていくなかで、我々には「見えない世界」があることを述べることによって、これまでの信仰の世界の居場所を確保しようとしたことを説明した。
ついで同じ短期大学生より、月岡氏に向けて、日本の神は「祭りのような特別な日に、遠く離れた他界から人間世界を訪れる存在」であるという点についての質問があった。月岡氏は、まずまれびとは春や秋に収穫の力をもってやってくる存在であることを説明した上で、そのまれびとがやってきた「何でもない日」を演出するために、まれびとの側からそれを「祭り」にして、人間の側がそれを繰り返していくことによって「特別な日」となることを説明した。
最後に締めくくりとして講演者の秋元が挨拶し、本公開講座を終了した。
6. 成果と課題
本公開講座は、「國學院の学術資産に見るモノと心」研究プロジェクトの研究成果の一部を外部に公開することを目的としておこなわれた。昨年度の公開講座と同様に、伝統文化リサーチセンターの研究成果を広く公開するために、同短期大学部との共催のもとに開催された。第2回目の開催となった本講座は、126名の参加があった。また、質疑応答や休憩時間には、学生や市民から個別に質問がよせられた。これらのことから、滝川市において國學院の学問について興味・関心が高まっていることが窺われた。しかし、一部の学生からは内容が難しかったとの意見や、発表時間の制限から討議が深まらなかったところもあったため、今後の課題が残された。
本公開講座は、「國學院の学術資産に見るモノと心」研究プロジェクトの研究成果の一部を外部に公開することを目的としておこなわれた。昨年度の公開講座と同様に、伝統文化リサーチセンターの研究成果を広く公開するために、同短期大学部との共催のもとに開催された。第2回目の開催となった本講座は、126名の参加があった。また、質疑応答や休憩時間には、学生や市民から個別に質問がよせられた。これらのことから、滝川市において國學院の学問について興味・関心が高まっていることが窺われた。しかし、一部の学生からは内容が難しかったとの意見や、発表時間の制限から討議が深まらなかったところもあったため、今後の課題が残された。
(文責:渡邉卓)
このページに対するお問い合せ先: 研究開発推進機構事務課






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