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國學院大學
伝統文化リサーチセンター

第2回研究フォーラム「國學院における近代国文学の形成―武田祐吉の学問を中心に―」

2009年5月15日更新


1.開催主旨
 現在、伝統文化リサーチセンターの「國學院の学術資産に見るモノと心」グループでは、「國學院の学術資産に見る近代人文学の形成」として、本センター資料館において、先人たちの学問内容に関する展示を行なっている。しかし先人たちの実像は、展示資料のみならず、実際にその謦咳に接した人物から、直接お話をうかがうことによって、より深く知ることができる。今回のフォーラムでは、武田祐吉博士の謦咳に触れた本学の中村啓信名誉教授を招き、当時のお話をうかがう。
 
2.日時
 平成20(2008)年10月29日(水) 13時30分~15時50分
 
3.場所
 本学渋谷キャンパス学術メディアセンター棟1階常磐松ホール
 
4.発題者・コメンテーター・司会 (敬称略)
《発題者》
 中村 啓信 (本学名誉教授)
  「國學院における近代国文学の形成―武田祐吉の学問を中心に―」
《コメンテーター》
 青木 周平 (本センター・教授、グループ研究代表者)
 渡邉 卓 (本センター・ポスドク研究員)
《司会》
 松本 久史 (本センター・講師)
 
5.概要
 現在、伝統文化リサーチセンター・第3グループでは、「國學院大學における近代人文学の形成」として、宮地直一・河野省三・大場磐雄・三矢重松・折口信夫・武田祐吉の学問に関する展示を行なっている。しかし、これら先人たちの実像は、謦咳に接した人物から直接話を聞くことにより、さらに深く知ることができるという趣旨から、このフォーラムは開催された。同時に、展示だけでは表現の難しい学者の実像を、本グループの研究成果をふまえ、広く外部に発信することも目的としている。当日の進行と概要は以下のとおりである。
 
(1) 渡邉卓「武田祐吉博士の新出資料とその学問」
 司会の松本久史による開会の辞、青木周平による趣旨説明ののち、渡邉卓により、現在本センターで進められている「武田祐吉関係資料」の研究成果の報告がなされた。まず、武田祐吉の略歴・学問・武田祐吉博士記念文庫の概要を紹介したのち、今回、新たに発見された「武田祐吉関係資料」(自筆原稿・講義メモ・ノート・カード・書簡・影印・修了証書など約430点)のなかから、修了証書などの青年期の武田祐吉に関する資料のほか、講義メモ・書簡(三矢重松・折口信夫・西田直二郎など)が紹介・解説された。また、武田が出演しているラジオ放送の録音の一部が流された。



(2) [発題]中村啓信「國學院における近代国文学の形成―武田祐吉の学問を中心に―」
 続いて中村啓信名誉教授より、「國學院における近代国文学の形成―武田祐吉の学問を中心に―」として、武田祐吉の学問についての講演がなされた。中村氏は、草創期の本学日本文化研究所において、武田のもとで『日本書紀総索引』『校本日本書紀』の編纂に携った経験をもつ。当時の体験談を交えつつ、それらの編纂の経緯を述べ、最後に武田の主著の一つである『古事記研究 帝紀攷』をめぐる諸問題について述べた。ここで中村教授は、安寧天皇の皇女である渟名底仲媛命(鴨玉女)が、北野本『日本書紀』(京都北野天満宮所蔵)では「鴨玉女」、卜部本系の『日本書紀』では「鴨王女」となっていることに触れながら、「文献学」の問題点について述べた。


(3) 質疑応答
 中村氏に対し、まずコメンテーターの青木から、武田の講義メモのなかに見出された「古事記学」についての所感が質問された。これに対して中村氏から、『古事記』と『日本書紀』でどうして異なっているのか、なぜこのような形態になっているのかを、体系的かつ幅広い学問的な関連のもとで考察し、一つの『古事記』研究というものを考えると、「古事記学」という命名もよいのではないかとのコメントがあった。
 また同じくコメンテーターの渡邉からは、『日本書紀』諸本の価値について、時代による相違があるのかとの質問があった。これに対して中村氏は、武田の校注した朝日古典全書本『日本書紀』の底本である北野本の問題に触れ、これは写本の伝来過程に関わってくる問題で、A本・B本のどちらがより原本(オリジナル)に近いのかということを考えた場合、北野本のほうが、より原本に近いのではないか、という見解を示した。また、文献学は一度校本が出来上がったらそれで終わりではなく、もう一度、後世の学者によって批判される必要があるとした。
 
6. 成果と課題
 当日は上代文学を専攻する大学院生のほか、社会人の参加も多くあり、総数68名の参加があった。武田祐吉の謦咳に接した中村氏の講演により、武田の人となりやその学問の特色を知る上で参考になったばかりでなく、草創期の日本文化研究所の研究事業の一端についても知ることができたことは、今回の大きな成果であった。しかし反面、会場の聴講者から、これといった質問や意見が出なかったことは、大きな反省点となるだろう。研究成果をどのように広く一般に公開していくのかを模索していかなければならない。
 
文責: 戸浪裕之(ポスドク研究員)



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