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國學院大學
伝統文化リサーチセンター

岡山県神道関係文化財調査

2011年5月11日更新


1.調査目的
 「神社祭礼に見るモノと心」グループは、指定文化財を実際に見聞調査することによって、その特徴や問題点を抽出し、当該文化財の有する歴史的・社会的意義を究明することを目標とする。この分析をおこなうために、文化財に携わる人達に聞き取りをし、加えて資料の収集をおこなっている。
 特に、平成19年度以来、諸国の一宮と東照宮を中心とした調査を重ね、その中でも、社殿形式と祭祀の関係に注目してきた。中でも、備前岡山藩は池田光政が初代藩主となり、様々な神祇政策が施行されている。その代表例が、寛文年間(1661~1673)におこなわれた大規模な神社合祀である。また、寺請を廃して神道請(神職請)を制度とするなど近世初期に独特の神祇政策がとられた。
 このような時代背景を有する岡山藩の東照宮・備前国一宮の吉備津彦神社ではどのように社殿の造営がいとなまれ、祭祀がおこなわれたのか。また、備中国一宮の吉備津神社の社殿は、中央にいくにしたがって天井も床も高くなるという独特な内部構造を有する日本唯一の社殿形式である、吉備津造(比翼入母屋造)であり、ここではどの様な祭祀が営まれてきたのか。
 以上の点をふまえて、近世初期に独特な神祇政策の下にあった東照宮(現在の玉井宮東照宮)と備前国一宮である吉備津彦神社、日本唯一の社殿形式である備中一宮の吉備津神社の実地調査をおこなうこととした。
 
2.調査期間
 平成23年(2011)3月7日(月)~3月10日(木)
 
3.調査地
 玉井宮東照宮(岡山県岡山市中区東山)
 吉備津彦神社(岡山県岡山市北区一宮)
 吉備津神社(岡山県岡山市北区吉備津)
 岡山県立図書館(岡山県岡山市北区丸の内)
 
4.参加者
 茂木栄(伝統文化リサーチセンター教授)
 池谷浩一(伝統文化リサーチセンター客員研究員)
 山田岳晴(伝統文化リサーチセンターポスドク研究員)
 松本昌子(伝統文化リサーチセンター作業協力者)
 
5.調査の概要
(1)調査対象
 ・調査先神社所有・所蔵の文化財、特に建造物
 ・上記に関連する資料
 ・祭祀をおこなう祭場が把握できる祭礼(賀茂別雷神社燃灯祭・2月14日)
(2)今回の調査での知見
今回はこれまでの調査の成果を整理することで、次の知見が得られた。
A)宮城県・鹽竈神社は国府の守護神であるが、藩主の伊達家が代々大神主をつとめ、かつ『鹽竈社縁起』において、陸奥国鎮護さらには伊達  家が鎮守府将軍に連なる奥州藤原氏の系統であることを明らかにすることで、伊達氏が奥州の正統な統治者であることを示していた。石川県・白山比咩神社は歴史的に一向宗との争いが絶えなかったが、白山三所権現の一が阿弥陀如来であるため、壊滅的な争いを避けることができた。すなわち、白山比咩神社の保護は領国内の宗教勢力の均衡に大きな役割を果たしていた。
  岡山藩の吉備津彦命に対する祭祀も、こうした状況と類似する例がある。吉備津彦命を祀る神社は、古代から信仰の対象とされる吉備中山を神の山としている。藩祖池田光政はこの吉備津彦神社(吉備国の祖である吉備津彦)への祈願により誕生した―吉備津彦命に連なる―とされる。
B)宮城県・仙台東照宮の祭礼は、鎮座の翌年から宮町の町衆を中心に盛大な祭礼がおこなわれるようになり「仙台祭り」と称される一方で、藩主が在国の年には神輿や山鉾がでるなど、伊達家とのつながりが強い。また神職が不在の時期は宮町の町衆で維持管理がなされてきた。石川県・尾崎神社(金沢東照宮)は、加賀藩三代目・前田利常が隠居し光高が次代藩主となり、金沢城内に東照宮を建立したい旨を幕府に願い出、許可されて、城内北部に東照宮が建立された。つまり、前者と後者では、祭に関わる組織に大きな違いがある。
 岡山県・玉井宮東照宮(岡山東照宮)は後者に当たる。近世において、その東照宮祭祀・権現祭は、盛大な祭礼であったが、参加できるのは武家と有力者だけであった。東照宮本殿に玉井宮の祭神が合祀されたのは、明治時代のことである。
 
6.今後の課題  
 全国に一宮や東照宮は鎮座しているが、その現状は多種多様である。それは様々な経緯を経ての結果であるが、その要因に近世大名(領主)の神祇政策が大きく作用していることが予想される。ただしこれまでの調査の結果でも明らかな通り、それは一様ではない。こうした成果をどのように整理するかが、今後の課題となろう。
(文責:池谷浩一)
 
 



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