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國學院大學
伝統文化リサーチセンター

京都府福知山市額田一宮神社祭礼調査

2011年5月11日更新


 
1.調査目的
 「神社祭礼に見るモノと心」グループでは、全国の「ダシ」を出す祭りの資料を収集し、各地の「ダシ」の形態を把握するとともに、同一形態の「ダシ」の分布状況とその背景を探るための調査研究をおこない、データベースを作成しているところである。基礎データとしては、平成7年に神社本庁が編纂した『全国神社祭祀祭礼総合調査』、いわゆる『平成祭データ』を活用している。『平成祭データ』には自治体史や祭礼報告書に記載の無い神社に関する情報も詳細に調べられており、全国の「ダシ」の展開の一端を知る事が出来る。しかし、この『平成祭データ』は全国各地の神社を網羅しているものの、わずかな地域でデータが掲載されていない場所が存在している。今回調査をおこなう、京都府の登録無形民俗文化財となっている福知山市夜久野町額田に鎮座する一宮(いっきゅう)神社の秋祭りもその一つであり、詳細なデータベースを作成するための調査対象として選択し、現地調査をおこなった。
 旧夜久野町時代に編纂された『夜久野町史』(平成17年刊)には、32社の神社が掲載されており、旧夜久野町下にて出される曳きものは、「芸屋台」と「太鼓台」の2種類で、12の神社の祭礼に登場している事がわかった。特にこの中でも規模が大きく、珍しいモノが登場する祭礼が額田一宮神社の秋祭りであった。主な特徴は以下の通りである。
(1)「上ダシ」→2層の山車。2層部分が360度回転する山車として西日本唯一とされる。1層部分には、お囃子を演奏する子供たちが乗り、2層部分には、その年に収穫された野菜などで作成された人形を乗せて練り歩く。
(2)「下ダシ」→置山の性格を持つ風流物。その年に収穫された野菜などを使用して作成された人形や風景などを各地区の代表者の家の軒先などに飾る。
(3)「御神木」→神輿の原型と言われている。御神木が本祭の神幸祭において、中心的な役割を果たす。柱の信仰、もしくは柱を使用する祭礼として山口祭や山神祭と類似する点が多く、注目すべき点が多い。
 以上の3点が額田一宮神社の秋祭りの特徴であり、他の地区には見られないモノが多いといえる。
 
2.調査期間
 平成22(2010)年10月8日(金)~11日(月)
 
3.調査地
 一宮神社(京都府福知山市夜久野町額田)
 福知山市立図書館分室(京都府福知山市夜久野町額田)
 
4.参加者
 池谷 浩一 (伝統文化リサーチセンター客員研究員)
 新木 直安 (伝統文化リサーチセンターポスドク研究員)
 秋野 淳一 (伝統文化リサーチセンター作業協力者)
 山中 聡一郎 (伝統文化リサーチセンター作業協力者)
 
5.調査内容
(1)調査対象の概要と調査事項
 額田一宮神社は、旧丹波国に属し周囲を山に囲まれた場所の下夜久野村字額田小字松本に鎮座し、彦火々出見命・豊玉姫命・籠神を祀る。創建年代は不明とされているが、夜久郷の大社で村内五社の第一とされていた。中世には、この地にあった福井庄の総社であったと伝える古社で、旧福井庄28か村の範囲がほぼそのまま氏子区域となっている。主要な祭りに、今回調査対象とした10月9日~10日の秋祭りがある。
・一宮神社宮司、額田のダシ振興会会長からの聞き取り調査(10月8日)
・福知山市立図書館分室にて、祭りや地域の歴史、屋台やダシに関する資料、その所在と内容に関する文献調査(10月9日)
(2)秋祭りの儀礼構成
・10月9日(前夜祭)
17:30 宵宮祭祭典催行。
17:45 宵宮祭祭典終了。
18:00 宮本屋台(上町)が神社を下町方面へ向けて出発。
18:45 国道9号線近くで、下町屋台と合流。2階部分を回転させ、神社方面へ戻る。
18:50~23:00 途中で掛け声と共に2階部分を回転させる。また、子供達によるヨサコイソーラン踊りや餅つきがおこなわれる。
23:00 神社に到着。お囃子をおこなっていた子供達を大人が背負うなどして、足がつかないようにして神社に参拝する「宮入り」をおこなう。
23:05 宮本屋台・下町屋台と共に2階部分を回転させる。
23:15 上町と下町の境まで進み、別れて宵宮祭が終了する。
・10月10日(本祭)
8:00 駅前に宮本屋台・下町屋台・太鼓台・子供神輿が集まり、伊勢音頭を踊る。
10:45 下町屋台が駅前で祝い餅つきをおこなう。ついた餅は、振舞われる。
11:30 下町屋台が神社に宮入りする。
11:50 宮本屋台が神社に宮入りする。
13:30 本祭祭典が催行される。
13:50 召立が行われ、威儀物等を捧持者に渡す。捧持者は上町と下町の境で待機。
14:15 御神木の先を本殿に入れ、御霊を移す。
14:25 御旅所へ向けて出発。
14:40 御旅所神事催行。
14:50 御神木巡幸開始。
15:20 盛砂に御神木を差し、町会の御旅所で神事催行。
15:40~21:00 御神木が町会を巡幸する。各町会の御旅所で神事をおこなう。
21:15 御神木が宮入りする。鳥居の前に人が立ち、御神木の宮入りの邪魔をする。これは「祭を終わらせたくない」との思いからであり、昔からの恒例であるという。
21:35 御神木が鳥居をくぐり、本殿に御神木の先を入れ御霊を戻す。
(3)「つくりもん」
 各町会で野菜を使用したつくりもんを作る。
・奥:坂本龍馬
・旦:水木しげる妖怪ワールド
・向:ゲゲゲの鬼太郎と小豆はかり
・上町:となりのトトロ
・下町:浦島太郎
 つくりもんに使う野菜は、かつて地元ですべてをまかなっていた。しかし、現在は八百屋で買うなどして集めている。つくりもんは滋賀県の日牟禮八幡宮の左義長祭が有名であるが、左義長祭では野菜に色を付け飾り付ける。一方、一宮神社のつくりもんは野菜の色を生かした飾り付けをおこなっている。
 
6.調査の成果と今後の課題
 この祭では、ダシ・御神木・つくりもんの3つが重要であることが分かる。ダシは2階部分が回転する珍しい形であり、御神輿の代わりに御神霊を御神木に遷し、野菜の色をそのまま使用してつくりもんを作る。このような形というのは全国的に珍しく、数が少ないと考えられる。
今後は、他にも全国的に2階部分が回転するダシが存在していることから、そのダシとの比較検討や調査をおこないたい。
(文責:池谷浩一・新木直安)
 



このページに対するお問い合せ先: 研究開発推進機構事務課

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