お問い合わせアクセスマップキャンパス案内サイトマップ文字サイズ文字サイズ小中 大
國學院大學
伝統文化リサーチセンター

公開講座「現代社会に見るモノと心 -縄文文化からの現代的価値の創出-」

2011年11月24日更新

1. 開催目的
 考古学が扱うモノには大きく分けて2つの側面がある。歴史を物語る資料としての側面、もう一方は現在的なモノとしての価値的側面である。祭祀遺物を含めた信仰関係の遺物や遺跡は、今日的な文脈の中で再解釈されうる端的な例と言える。たとえば、島根県松江市八重垣神社鏡池遺跡や鏡の池占い、石棒と根精様や磐座などがあろう。とくに、縄文文化から創出されたモノは、日本列島に育まれた文化を語るモノとしての国際的な価値、たぐいまれなる造形美としての芸術的価値など様々な価値観の下に、多様な意味を生み出している。
 そこで、國學院大學研究開発推進機構と英国セインズベリー日本藝術研究所との研究交流の一環として、国際的な視野から縄文土偶を扱ってきたセインズベリー日本藝術研究所の近年の活動を通してみた縄文土偶の価値の再認識と、縄文土器にインスピレーションを感じ、新たな価値を与えた岡本太郎氏の思想を通して、現代社会に見るモノと心を考える公開講座を開催した。
 
 
2.開催日時
 平成22(2010)年12月18日(土) 13時~15時
 
 
3. 場所
 本学渋谷キャンパス120周年記念1号館 1101教室
 
 
4. 講師・司会
〈講師〉
松田 陽 (セインズベリー日本藝術研究所・研究員)
 「縄文土偶の英国での展示 ―新たな文脈と意味―」
石井 匠 (國學院大學伝統文化リサーチセンターポスドク研究員)
 「大阪万博と「太陽の塔」 ―現代の祭り・偶像・モニュメント―」
〈司会〉
 加藤 元康 (國學院大學伝統文化リサーチセンターポスドク研究員)
 
 
5. 概要
(1) 松田 陽 「縄文土偶の英国での展示 ―新たな文脈と意味―」
 パブリックアーケオロジーは、考古学と現代社会・一般市民との間の関係を考察し、実践を通して、その関係性をより良くしていこうとする試みである。一般市民が考古学資料を直接目にすることができるという博物館展示から、考古資料をどのように「展示するのか」に着目し、大英博物館の『土偶の力:先史日本の造形(The power of Dogu)』展と、英国セインズベリー視覚芸術センターで開催された『掘り出されたもの(unearthed):日本とバルカン地方の先史の造形』展が例示された。
 とくに、後者の展示について、「ヒトの形をした造形物が人類にとって持つ意味とは」という中心的テーマの下で設定された「人々はなぜヒト形をした造形物をつくろうと思ったのか」、「意図的に破壊されたようなものがあるのはなぜか」、「用途や社会・文化的意味は何か」、「人々の興味を生み出すのはなぜか」などの複数の「問い」の構成要素を説明し、日本の土偶・バルカン地方の土偶・現代の芸術作品などの展示資料の解説、「問い」を体現するためのワークショップや展示方法などについて述べられた。
 最後に、土偶に関する展示の目標として、縄文土偶を含めたヒトを模った造形物に関する様々な現象に対して、国際的な興味関心を人々から生み出すことであると示された。
 
(2) 石井 匠  「大阪万博と「太陽の塔」 ―現代の祭り・偶像・モニュメント―」
 まず、「伝統文化」への問いかけが行なわれ、岡本太郎氏の伝統観「伝統とは創造である」が示された。その創造された伝統が「太陽の塔」であり、「祭り」である大阪万博での塔の役割や、内部構造などについて詳述された。内部の設備は撤去されているものの、今なお、聖地に立つ神像として、歴史的モニュメントや過去の祭りの記憶装置として、様々な意味が付加され、残されていることに注目する。
 祭りは、神話と現実世界が融合し、人間と心霊が合一する神聖な儀式であり、現代都市では、お祭り騒ぎが恒常化しているという。また、現代社会では、人間と神霊を繋ぐ神話という構図が、芸能人やアニメのキャラクターが神霊に、そこから発せられるドラマや映画・アニメが神話に置換され、伝統的な聖地の現代社会における更新現象が生じているという。現代の道と道との結節点である「辻」には、古代~中世の祭りの場=市の場との関係を感受できると、その例を示した。
 現代社会には、「伝統」を継承した空間が都市の中に見受けられる。それは、保守的な「伝統文化」だけではなく、岡本太郎氏の伝統観と共通する「今」を起点とした創造される「伝統」というものが見えてくると述べられた。
 
6. 成果と課題
  本講座では、過去のモノの現在的価値を考える着眼点として、2つの視点から講演して頂いた。現代的・国際的な価値の発見を目指す英国での展示と、現在の私たちが伝統を継承し、創造しているのではないかという提言など、具体例を通して発表された。
 人文科学の復興が提唱されつつある状況において、伝統文化から学んだ知恵を、現代においてどのように実践するのかについては、理念だけではなく、実践的に行なう必要がある。その点に関して、2つの講演内容から学ぶべき点が多かったと思われる。
 今後は、本プロジェクトで研究活動を推進するとともに、その成果をどのように公表し、現代社会への貢献を果たすのかについて検討するべきであろう。その上で、研究公開を積み重ねる必要がある。
 
(文責: 加藤元康)
 



このページに対するお問い合せ先: 研究開発推進機構事務課

伝統文化リサーチセンター
概要
構成員紹介
事業紹介

機関ページへ
日本文化研究所
学術資料館(考古学資料館)
学術資料館(神道資料館)
校史・学術資産研究センター
研究開発推進センター
伝統文化リサーチセンター
博物館学教育研究情報センター