「祭祀遺跡に見るモノと心」平成19年度フォーラム
2008年11月13日更新
1. 開催主旨
本研究の平成19年度の研究活動と成果の報告を行なう。それとともに各研究に関連する研究者を招聘し、意見の交換を行ない、今後の研究の進展を図る。
2. 日時
・ 「平成19年度研究報告」 平成20(2008)年2月29日(金) 13時~17時50分
・ 「研究発表・講演」 平成20(2008)年3月1日(土) 10時30分~15時35分
3. 場所
本学渋谷キャンパス120周年記念1号館1402教室
4. 発表者・コメンテーター等
【発表者(発表順)】
内川 隆志 (准教授)
中村 大 (客員研究員)
加藤 元康 (ポスドク研究員)
田中 大輔 (ポスドク研究員)
新原 佑典 (リサーチアシスタント)
阿部 昭典 (津南町教育委員会・調査員)
小林 青樹 (國學院栃木短期大学・准教授)
高 慶秀 (外国人研究員)
小川 直之 (文学部・教授)
小林 達雄 (文学部・教授)
杉山 林継 (センター長、教授)
【コメンテーター】 川口 潤 (青森県教育庁文化財保護課・文化財保護主幹)
栗木 崇 (熱海市教育委員会・主任学芸員)
錦田 剛志 (島根県立古代出雲歴史博物館・専門学芸員)
5. 概要
2月29日(金) 「平成19年度研究報告」
(1) 「プロジェクトと新資料館」 (内川隆志)
考古学資料館の沿革を紹介し、本年度から採択された「祭祀遺跡に見るモノと心」プロジェクトについて、國學院大學の考古学として祭祀遺跡を研究対象とすることの意義を示した。この研究を進めるにあたり、新たな方法論としてCCA(Cross Contextual Analaysis)やLSA(Landscape Analysis)といった分析法を用いて、祭祀考古学に見合った解釈を模索していくことを示した。また研究を推進するためのものとして、GIS(Geographic Information System)や電子顕微鏡などを導入したことを述べた。
(2) 「エージェンシーとランドスケープ:祭祀考古学の理論的研究」 (中村大、石井匠〈大学院文学研究科博士課程後期〉、手塚美穂〈作業協力者〉)
祭祀の目的、象徴性、および祭祀的景観の社会的意味を解釈するための新たな方法として、クロス・コンテクスチュアル分析法(CCA)が提案された。これは文化を構成する諸要素の連動性を明らかにしていくことで各要素の意味に対する解釈の妥当性を高める方法である。またこの方法の重要な理論的前提としてエージェンシー・モデルが提示された。エージェンシーとは社会的行動に参画するための意識的・無意識的な心理過程であり、それがもつ基本的性質としての開放系と相互作用が祭祀と社会の各要素を結び付けるというものである。さらに、事例分析として縄文時代後期の小牧野遺跡の配石遺構の分析結果が報告された。
(3) 「東北地方北部:平成19年度の活動報告および来年度の研究計画」 (加藤元康、塩谷風季〈大学院文学研究科博士課程前期〉)
人間と環境や生態との相互作用から発生する祭祀と生業をCCA的関係性を加味した形で提示し、祭祀と社会背景、及び祭祀と山など次年度以降の研究対象に対する計画を述べられた。また動物形土製品や狩猟文土器に表現された動物は当時の人々が持つ共通認識で特定の動物と認識され、当時の共通認識を理解するにはメルクマールの選定と抽出が必要であり、動物形土製品における動物の種類を認定する条件の設定も本プロジェクトにおける今後の研究課題であると述べた。
(4) 「伊豆:平成19年度の活動報告および来年度の研究計画」 (田中大輔、高慶秀、朝倉一貴〈作業協力者〉)
古墳時代の祭祀研究を中心に進めていくことについての次年度以降の計画について説明した。その上で、古墳時代における祭祀研究が畿内中心的な視点に偏りがちであり、また、地域個別論が多かった点など、従来の祭祀研究の問題点を指摘した。そして、伊豆という地域や古墳時代の祭祀を分析・考察するにあたり、神奈備型祭祀、磐座・磐境祭祀、土器集積遺構といった、汎列島的に確認できる事例の全国的な集成を行ない、その分布、時期的変遷、系譜などの問題を整理することが重要であると論じられた。
(5) 「出雲地域:平成19年度の活動報告および来年度の研究計画」 (新原佑典、加藤里美、土屋健作〈大学院文学研究科博士課程後期〉)
本年度の活動として、主に『出雲国風土記』の記載内容を参考とし、その中から「神社関連資料」「神奈備」「磐座」の資料を中心に研究を行なうための基礎資料収集と関連遺跡踏査を実施した。平成20年度以降の計画として神社境内地から発見された神社関連資料を調査し、これらは社殿創建を遡りうるものとして注目されるものであり、図化、写真撮影等による資料化を含めた調査を実施する。また神奈備と磐座については『風土記』に著される意宇郡の社や国庁等と、生産遺跡や官衙、祭祀に関する遺跡を併せて地理情報システムなどを使用して分析、検討を行なうことが述べられた。
(6) 「東北地方北部研究報告に対するコメント」 (川口潤)
祭祀と生業との関係については、採集されたサンプルから祭祀にどこまで迫れるのか再検討する余地があるのではないかと述べた。漁労民は「山アテ」、「当て山」などを行なっており、山への意識が高く、天候判断も山を見て行なうことがあり、このような点から山への信仰が行われたと考えられ、山に対する信仰は縄文時代早期ぐらいまで遡ることができると指摘した。また同様な類例は伊勢などにでもあり、縄文的知識が残ったものであると、縄文時代から現代まで共通する信仰の可能性を示唆した。
(7) 「伊豆研究報告に対するコメント」 (栗木崇)
伊豆と他地域との交通関係を考えるにあたり、菊川式土器、大廓式土器など関東、東北地域に拠点的に分布する東海系土器に注目する必要があることを指摘した。また、伊豆地域においては農耕祭祀という視点も大事であるが、海洋民の祭祀という視点も持ち合わせる必要があるとも指摘した。これに関連して、伊豆は海が主要な交通路であり、海から見た祭祀、例えば「山あて」など民俗的な事例も参照しながら伊豆の祭祀を考えてはどうかとの提案がなされた。
(8) 「出雲地域研究報告に対するコメント」 (錦田剛志)
出雲の祭祀に関して、模造品類が少ないことは従前より知られてきたことだが、三田谷1)遺跡等、共飲共食の儀礼が行われたと推定される遺跡が発見されており、これらにも注視する必要があろうと指摘がなされた。また、山に関して『出雲国風土記』には、神奈備よりも神話伝承記事の多い山が見られる。「古老の傳へに云へらく」と見えるように、『風土記』編纂の段階で既に伝承となっているものがあるため、『風土記』時代のものと考えられる遺跡でも注意する必要があり、さらに「イワクラ」「カンナビ」「依代」など、旧来の解釈論を用いるのはイメージが先行してしまうため、用語の整理を行なう必要があると述べた。
3月1日(土) 「研究発表・講演」
【研究発表】
(1) 「竪穴住居の空間分割と象徴性」 (阿部昭典)
竪穴住居における空間分割を、床面の構造・上屋構造・屋内施設(炉形態・配石など)の三点から捉え、当時における空間利用と、付随する象徴性について解析を試みた。また、竪穴住居の配置・方向自体も、広場を含めた集落全体の構成の中で制約を受けるものであり、それは当時の心的要因からくる結果であるとした。
(2) 「弥生青銅器祭祀の起源と遼寧青銅器文化」 (小林青樹)
遼寧式銅剣の編年および多鈕細文鏡の文様分析から、日本列島の弥生時代の青銅器祭祀の起源について論じた。日本列島の銅戈や多鈕細文鏡は、その起源が中国大陸および朝鮮半島にあることは確かであるが、今回検討した中国の遼西・遼東、朝鮮半島を経由した要素だけが起源ではない。銅戈の埋納などは日本列島の弥生祭祀の相当に独自の特色であり、銅鐸には縄文系の工字文が流水文となり取入れられている。これまでは主に中国大陸や朝鮮半島との関係で論じられてきた弥生青銅器祭祀がより重層的な視点で理解されるべきであるとの指摘がなされた。
(3) 「韓国の祭祀研究と考古学資料の現状」 (高慶秀)
韓国における祭祀研究の研究史を振り返るとともに、韓国の祭祀遺跡・遺物について、近年の資料の増加に伴う新たな成果を含め事例報告を行なった。また韓国の祭祀研究の課題として編年の問題などが挙げられ、東アジアの祭祀を比較研究することの重要性が述べられた。
【講演】
「民俗学から見る出雲の祭祀」 (小川直之)
出雲における伝承及び現在まで受け継がれる行事を報告し、神在月のお忌の期間中、海岸に打ち上げられた竜蛇(海蛇)を出雲大社又は佐太神社へ奉納すること等から、出雲祭祀と海(海産物)との関連性が指摘された。また出雲地域を中心に神送り・神迎えの伝承がある社を全国的な分布図を提示し、出雲大社と佐太神社が神在祭関係社との神々巡廻の伝承路での基軸を成していることが示された。
【特別講演】
「祭祀遺跡に見るモノと心」 (小林達雄)
マツリの起源および祭祀の制度化について論じた。社会制度の1つとして祭祀が確立するときに重要な役割を果たしたのが定住革命としての縄文文化の成立である。一定の場所に長く住み続けることにより、集団内であるいは地域内で祈りの社会化・制度化が進展する。また、定住生活が周囲の景観や太陽の運行との関係などにも文化的な意味を与えていく契機ともなるのである。さらに、祭祀の意味を考えるうえで継続性と場所性が重要な要素となる。群馬県押出遺跡では縄文後期・晩期の集石遺構の上層に弥生時代の遠賀川式土器の集積が確認されており、長期にわたる祭祀活動とそれに伴ないその場所の聖性が強化されていく様子が紹介された。
【総括】 (杉山林継)
縄文時代から現代までの祭りにおいて様々なこだわりがみられ、日本の祭りは食べ物、神饌への意識が高いことを特徴としている。このような特徴を「心」を中心にして考えることは難しいが、新たな課題を生む可能性があると述べた。さらに、資料の集成作業など細かな作業の重要性、また外部の方々から意見を頂きながら本プロジェクトを進展させていくことの必要性などが述べられた。
6. 成果と課題
今回のフォーラムでは両日の合計で約100名の参加があり、当初の目的である研究活動の周知を図ることができた。
また、フォーラムでは本プロジェクトに関する多数のコメントがあり、本研究に対する様々な意見を得ることで研究の課題を明確するという当初の目的は達成された。
今後、これらの課題を含めて、来年度の研究活動の改良を図る。
文責: 中村大・加藤元康・田中大輔・新原佑典・土屋健作・塩谷風季・朝倉一貴
このページに対するお問い合せ先: 研究開発推進機構事務課






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